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ベトナム証券会社の融資収入が過去最高1兆1,200億ドン超—銀行顔負けの貸出拡大が意味するもの

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ベトナムの証券会社各社が、融資(マージンローン)事業で過去最高の収益を叩き出している。2025年第1四半期の融資関連収入は合計で1兆1,200億ドンを超え、銀行ではない証券会社が「貸金業」で記録的な数字を更新し続けている実態が浮き彫りとなった。ベトナム株式市場の活況と個人投資家の急増を背景に、証券会社のビジネスモデルそのものが変質しつつある。

目次

証券会社が「銀行顔負け」の貸出拡大を続ける背景

ベトナムでは、証券会社が個人投資家向けに信用取引(マージン取引)のための資金を貸し出す仕組みが定着している。日本でも証券会社が信用取引を提供しているが、ベトナムの場合はその規模の拡大ペースが極めて速い。特に近年、VN-Index(ベトナムの代表的な株価指数)が上昇トレンドに入るたびに、個人投資家がレバレッジをかけて株式を購入する傾向が強まり、証券会社の貸出残高は増加の一途をたどっている。

銀行業の免許を持たない証券会社が、なぜここまで融資事業を拡大できるのか。ベトナムの現行規制では、証券会社は自己資本の一定比率まで信用取引向けの融資を行うことが認められている。各社は増資や社債発行を通じて自己資本を積み増し、融資枠の上限を引き上げてきた。結果として、大手証券会社の融資残高は数兆ドン規模に達しており、中小銀行の貸出規模に匹敵するケースも珍しくない。

第1四半期に1兆1,200億ドン超の収入を記録

2025年第1四半期、ベトナムの証券会社全体の融資関連収入(主にマージンローンの金利収入)は1兆1,200億ドンを超えた。これは四半期ベースで過去最高の水準である。融資残高そのものが拡大しているだけでなく、金利水準も証券会社にとって有利な環境が続いていることが背景にある。

ベトナムの証券業界では、マージンローンの金利は年率9〜14%程度に設定されるケースが多い。銀行からの借入コストや社債の調達コストとの利ざやが大きいため、融資事業は証券会社にとって最も利益率の高い収益源の一つとなっている。実際、大手証券会社の中には、ブローカレッジ(売買手数料)収入よりも融資収入の方が大きいところも出てきている。

主要証券会社の動向

ベトナムの証券業界は上位数社に集中する構造となっている。SSI証券(SSI、ホーチミン市に本社を置くベトナム最大級の証券会社)、VNDirect証券(VND)、ホーチミン市証券(HCM、HSC)、VPバンク証券(VPBankS)、テクコムセキュリティーズ(TCBSー テクコムバンク傘下)などの大手各社がマージンローン残高の拡大を競っている。

特に銀行系証券会社は、親会社である銀行から低コストで資金を調達できるため、競争上優位に立ちやすい。VPバンク証券やテクコムセキュリティーズなどは、銀行グループの資金力を背景に急速に融資残高を伸ばしており、独立系証券会社との間で競争環境が変化しつつある。

個人投資家の急増と市場構造の変化

ベトナムの証券口座数は2024年末時点で約900万口座を超え、人口1億人の約9%に達した。COVID-19パンデミック以降に急増した個人投資家層は、株式市場の主要プレーヤーとなっている。ベトナム株式市場では取引高の約85〜90%を個人投資家が占めるとされ、機関投資家中心の先進国市場とは大きく異なる構造にある。

こうした個人投資家の多くがマージン取引を積極的に活用しているため、証券会社の融資需要は構造的に高い状態が続いている。一方で、市場が急落した場合にはマージンコール(追証)が連鎖的に発生し、売りが売りを呼ぶリスクも内包している。2022年の市場急落時には、マージンコールの連鎖がVN-Indexの下落を加速させた教訓がある。

投資家・ビジネス視点の考察

証券会社の融資収入が過去最高を記録したという事実は、複数の観点から読み解くことができる。

①市場のセンチメント指標として:マージン残高の拡大は、個人投資家が強気姿勢を維持していることを示す。VN-Indexが上昇基調にある局面では好循環となるが、過度なレバレッジの蓄積は将来の調整リスクを高める点にも注意が必要である。

②証券セクターの投資妙味:融資収入は安定的かつ利益率の高い収益源であり、証券株のバリュエーションを支える重要な要素である。SSI、VND、HCMなどの上場証券会社は、融資残高の増減が業績に直結するため、四半期ごとのマージン残高データは投資判断の重要指標となる。

③FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が本格化する。これに伴い市場の取引高が拡大し、証券会社の手数料収入だけでなく融資需要もさらに増加する可能性がある。格上げ期待を背景に証券セクターへの先回り投資を検討する向きも増えている。

④日本企業・投資家への示唆:大和証券グループがSSI証券に出資しているほか、SBIホールディングスやみずほ証券もベトナムの証券業界に関与している。ベトナム証券会社の収益拡大は、日本の金融グループにとっても出資先の企業価値向上という形で恩恵をもたらす。また、ベトナム株への直接投資を行う日本の個人投資家にとっても、マージン残高の推移は市場の過熱感を測る重要な指標として注視すべきである。

⑤リスク要因:証券会社の融資拡大は、規制当局であるベトナム国家証券委員会(SSC)の監視対象でもある。融資残高が急膨張すれば、規制強化や自己資本比率要件の引き上げが行われる可能性があり、その場合は証券各社の成長ペースが鈍化するリスクがある。


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出典: 元記事

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