こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
ベトナムの資本市場がまた大きな変化の時を迎えています。IPO総額が2026年から2028年の3年間で400億ドルを超えるという予測が、証券会社から出てきました。数字だけ見ると「ほんとか?」と思うかもしれませんが、今回の法制度の変化を理解すると、この予測がそれほど夢物語でもないことがわかってきます。
ベトナムのIPO市場に何が起きているのか
ナショナル・セキュリティーズ(NSI)が発表した最新の市場展望によると、2026年のIPO市場は引き続き活況を維持するという見通しです。その根拠となっているのが、政令155/2020/ND-CPと政令245/2025/ND-CPという2つの規制の整備です。
これら新たな規制が資本市場にとって重要なのは、企業統治・情報透明性・投資家保護の基準を引き上げると同時に、企業側の資金調達機会を広げるという「両面の効果」を持っている点です。規制というと制約のイメージがありますが、今回のケースは「使いやすいルールブックを整えた」という表現が近い。
中でも注目したいのが、上場手続きの大幅な効率化です。これまでIPOの登録と上場手続きは別々のプロセスで進める必要がありましたが、規制当局がこの同時実施を認めたことで、上場完了までの期間が従来の約90日から30日程度へと短縮されました。3分の1以下というのはインパクトが大きい。企業が「上場したい」と思ったときに、以前より素早く市場にアクセスできる環境が整いつつあるわけです。
外資規制の緩和という見えにくい変化
もう一つ、あまり大きく取り上げられていませんが重要なポイントがあります。これまで制限されていなかった分野における外資所有比率の制限が一部緩和されるということです。
ハノイで13年暮らしていると実感することですが、ベトナムの外国人投資家にとって長年の悩みの種だったのが、この外資規制でした。特定のセクターで株式保有に上限が設けられており、「いい企業を見つけても買えない」という状況が頻繁に発生していました。この制限の緩和が進めば、海外からの機関投資家資金が入りやすくなり、市場全体の流動性が底上げされる可能性があります。
9月21日のFTSE新興国市場への昇格実施を見据えると、この外資規制緩和の流れは非常に重要な意味を持ちます。パッシブ資金が流入する際に「買いたいのに上限に引っかかる」という状況を少しでも減らしておく必要があるからです。法制度の整備とFTSE昇格は、バラバラな動きではなく、連動した資本市場の近代化プロセスとして捉えると理解が深まります。
2026〜2028年で400億ドルというIPO予測の意味
NSIが示した「3年間で400億ドル超のIPO総額」という予測について、少し掘り下げておきます。
これを現実的に支える候補として、注目されているのがいくつかの大型案件です。MWGグループの傘下企業であるĐiện Máy Xanh(ディエンマイサイン)のIPO、Jollibee傘下のHighlands Coffeeの上場、そしてBach Hoa Xanh(バッホアサイン)の2028年上場計画などが候補として挙げられています。加えて、国有企業の民営化(エクイタイゼーション)が加速するという政策方針も、IPO供給を増やす要因として働きます。
2026年1月に発布された決議79-NQ/TWは国有企業の主導的役割を再確認しつつも、民営化プロセスの推進と業務効率の向上を明確に求めています。国有企業が株式市場に参加してくる流れが続くとすれば、機関・個人を問わず投資家にとっては「選択肢が増える」という直接的なメリットにつながります。
デジタル資産市場への言及:2030年に1000億ドル超という見立て
今回のNSI発表で個人的に興味深かったのは、デジタル資産セクターへの言及です。NSIは、ベトナムのデジタル変革の潮流と法的枠組みの整備が進めば、デジタル資産市場が2030年までに1,000億ドルを超える規模に達する可能性があると評価しています。
このあたりはまだ「将来の可能性」の段階ですが、法制度の整備という観点でIPOとデジタル資産を同じ文脈で語っているのは、資本市場全体のデジタル化という方向性を示しているように思います。KRX新取引システムへの移行と合わせて、ベトナムの証券インフラが急速に近代化されていく流れの中にある一つのピースとして捉えておく価値はあるでしょう。
資本市場の深さが変わっていく
正直なところ、ベトナム株投資を始めた当初と比べると、市場の質は明らかに変わってきています。情報開示の水準も上がり、外国人投資家が参加しやすい制度的な土台が少しずつ整備されてきました。IPOを通じて質の高い企業が新たに上場し、流動性が高まり、投資家層が厚くなる。この好循環が回り始めれば、ベトナム株式市場全体の評価が世界の機関投資家の目にどう映るかも変わってくるはずです。
FTSEの昇格も法制度の整備も、バラバラな出来事ではありません。これは「富の南下」という大きな潮流の中で、ベトナム資本市場が次のステージに上がっていく過程の一場面です。
そういうことなんです。
いかがでしたでしょうか。今回のベトナムIPO市場の見通しについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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