ベトナムの首都ハノイの旧市街(ホアンキエム区周辺)で、旧暦12月22日の早朝5時30分から、伝統行事に向けた買い物客で市場が賑わいを見せている。場所は、36通り(フォーコー=古い街並み)の一角に位置するハンベー通り(Hàng Bè)の民生市場だ。
「オンコン・オンタオ」とは何か
この日に向けて人々が準備を進めているのは、「テット・オンコン・オンタオ(Tết Ông Công Ông Táo)」と呼ばれるベトナム独自の伝統行事である。日本語に訳せば「かまど神の正月」とも言えるこの行事は、毎年旧暦12月23日に行われる。ベトナムの民間信仰では、各家庭の台所を守る「かまど神(タオクアン)」と「土地神(オンコン)」が、この日に天に昇り、玉皇大帝(天帝)にその家の1年間の出来事を報告すると信じられている。
そのため、前日の22日から人々は供物の準備に追われる。伝統的な供物には、紙で作った祭壇用の装飾品、線香、果物、そして神々が天に昇るための「乗り物」とされる鯉が欠かせない。生きた鯉を川や湖に放流する「放生(ほうじょう)」の儀式は、この行事の象徴的な光景として知られる。
ハノイ旧市街の活況
ハンベー通りは、ハノイ旧市街36通りの中でも特に食材や日用品を扱う商店が集中するエリアである。通り名の「ハンベー」は「筏(いかだ)」を意味し、かつて紅河(ソンホン川)から筏で運ばれてきた物資がここで売買されていた歴史に由来する。
報道によれば、早朝5時30分という時間帯にもかかわらず、市場には供物や祭祀用品を買い求める市民が押し寄せ、活気に満ちていた。多くの家庭が「早く供え物を済ませたい」「午前中には儀式を終えたい」と考えるため、前日の早朝から買い出しに動くのがベトナムの習慣となっている。
テト(旧正月)に向けた序章
オンコン・オンタオの行事は、約1週間後に控える「テト・グエンダン(テト=旧正月)」の実質的な幕開けを告げるものでもある。かまど神を送り出した後、各家庭は大掃除、飾り付け、そして帰省や贈答品の準備へと慌ただしく動き出す。ベトナムでは、この時期から旧正月明けまでが1年で最も消費が活発化する期間であり、小売業や飲食業にとっても書き入れ時となる。
日本との接点と考察
近年、日本に暮らすベトナム人は約50万人を超え、在留外国人として最大の割合を占める。そのため、日本国内でもオンコン・オンタオやテトを祝うベトナム人コミュニティの姿が見られるようになった。日本企業にとっても、ベトナム人従業員のこうした文化的背景を理解することは、円滑な職場環境づくりや現地ビジネス展開において重要な要素となりつつある。
ハノイ旧市街の早朝の賑わいは、ベトナムの人々が伝統と信仰を大切にしながら新年を迎える姿を象徴している。
出典: VnExpress












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