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ベトナムの鉱業セクターに激震が走っている。建設・エネルギー大手PC1(Power Construction Joint Stock Company No.1)と化学大手DGC(Duc Giang Chemicals)の経営幹部が相次いで起訴され、両銘柄の株価はわずか1四半期で40%前後の急落を記録した。こうした中、Yuanta証券(台湾系の大手証券会社で、ベトナム市場にも拠点を持つ)が両銘柄に関する最新レポートを公表し、短期的な逆風と中長期的な構造的優位性について見解を示した。
何が起きたのか——鉱業セクター全体を覆う法的リスク
今回の問題の背景には、ベトナム政府が戦略的鉱物資源に対する監督を急速に強化していることがある。Yuantaの分析チームによれば、2025年に入り国内メディア報道や各種検査を通じてすでに警告シグナルは出ていたが、当時は投資家の間であまり注目されていなかった。
摘発された主な違反事項は以下の通りである。
- 実際の採掘量が許可された割当量を超過していた
- 鉱石の実際の品位(含有量)が、フィージビリティスタディ(実行可能性調査)の記載数値よりも高かった
- 許可された面積の範囲を超えて採掘活動を行っていた
いずれも国家資源に対する損害を伴う重大な違反であり、経営陣の刑事責任が問われる事態に発展した。Yuantaはこれを「個別企業の問題」というよりも、ベトナムが戦略資源の管理体制を抜本的に見直す過程で不可避的に生じた構造的な現象と位置づけている。
PC1——ニッケル採掘ライセンスは維持される公算
PC1が注目される理由の一つは、同社が子会社のタンファット鉱産(Khoáng sản Tấn Phát、PC1が57.27%の株式を保有)を通じてニッケル採掘事業を展開している点にある。ベトナムのニッケル資源は主にソンラ(Sơn La)省とカオバン(Cao Bằng)省の2つのクラスターに集中しており、世界的なサプライチェーン再編の中で戦略的重要性が増している。
ソンラ省では、オーストラリアのBlackstone Mineralsが2013年に128ヘクタール規模のプロジェクトの承認を得たが、2016年以降操業が停止されたままである。一方、タンファット鉱産は2023年に23ヘクタール規模の採掘ライセンスを取得し、有効期限は2029年までとなっている。
Yuantaは、PC1のニッケル採掘ライセンスが現段階で取り消される可能性は低いとの見方を示した。その根拠として、同工場がまだ商業規模での生産を開始していないこと、そしてベトナム政府自体がニッケル生産に関する国内の知見・経験の蓄積を重視しており、現時点で民間事業者を排除するインセンティブが乏しいことを挙げている。
DGC——短期的苦境も、長期的には規制強化が追い風に
DGC(ドゥックザン・ケミカルズ)は、ベトナムを代表する化学メーカーであり、リン酸や黄リンなど鉱物資源の加工・精製分野で強固な地位を築いてきた。今回の法的問題により株価は直近1四半期で37.67%下落し、46,000ドン/株の水準にある。
Yuantaは、DGCが直面する短期的な心理的圧力と株価下落は避けられないとしつつも、注目すべきは中長期の構造的優位性であると強調する。具体的には、DGCがコーポレートガバナンスの再構築に成功し、法的違反を是正して厳格なコンプライアンス体制を証明できれば、政府の法執行強化はむしろ同社にとってプラスに働くという論理である。なぜなら、規制強化によりコンプライアンスを遵守できない競合他社が市場から退出し、業界への参入障壁が高まるためである。
さらに、ベトナム政府が掲げる「鉱物資源の高付加価値加工」という政策方針は、まさにDGCのビジネスモデルと合致する。トー・ラム(Tô Lâm)書記長兼国家主席が「いかなる代償を払ってもレアアースの原鉱輸出はしない」と明言したことは、加工・精製能力を持つ企業にとって長期的な政策的後押しとなる。
ベトナム鉱業セクターの大局的な位置づけ
ベトナムは現在、グローバルな鉱物資源地図の中で戦略的パートナーとしての存在感を急速に高めている。中国への過度な依存からの脱却を図る日本、オーストラリア、米国などがベトナムとの鉱物資源協力に強い関心を示しており、レアアースやニッケルを中心に外交・通商の文脈でも注目度が高まっている。
ただし、Yuantaが指摘するように、ベトナムの鉱業は依然として原鉱輸出への依存度が高く、深層加工(高次精製)の能力は限定的である。この構造転換には相当の時間と投資が必要であり、「長い道のり」であることは間違いない。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の一連の動きは、ベトナム株式市場に投資する際の「ガバナンスリスク」と「政策リスク」を改めて浮き彫りにした。PC1は18,700ドン/株、DGCは46,000ドン/株と、いずれも直近高値から大幅に調整しており、バリュエーション面では割安感が出始めている。しかし、法的リスクの全容が確定していない現段階では、安易な「底値拾い」には慎重であるべきである。
一方で、2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げに向けて、ベトナム政府がコーポレートガバナンスや情報開示の透明性向上を加速させている点は、今回の鉱業セクターへの締め付けとも通底する動きである。短期的には株価の下押し要因となるが、中長期的には市場全体の信頼性向上につながり、海外からの資金流入を促す可能性がある。
日本企業にとっては、ベトナムのレアアース・ニッケルなど戦略鉱物へのアクセスが重要なテーマであり、規制環境の変化を注視する必要がある。ベトナム政府が民間企業の鉱業参入を厳格化する方向に動いている以上、日越間の政府レベルでの資源協力枠組みの重要性がさらに増すと考えられる。
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出典: 元記事












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