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ベトナム・ホーチミン市の戸建て住宅が値下がり傾向—流動性低下で売却困難、不動産市場の行方を読む

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ベトナム最大の経済都市ホーチミン市(旧サイゴン、人口約1,000万人超)で、戸建て住宅および街区型住宅(ニャーフォー)の価格が下落傾向にある。市場全体の流動性(取引の活発さ)が弱まり、買い手が慎重姿勢を崩さないなか、売り手が値下げに踏み切らざるを得ない状況が続いている。ベトナムの不動産市場はかつてない調整局面に入っており、投資家やこれからベトナム進出を検討する日本企業にとっても見逃せない動きである。

目次

ホーチミン市の戸建て・街区型住宅で値下げの動き

ホーチミン市の不動産市場では、マンション(チュンクー)に比べて戸建て住宅(ニャーリエン)や路面に面した街区型住宅(ニャーフォー)の取引が特に停滞している。ベトナムの不動産ポータルサイトや仲介業者の情報によると、これらのセグメントでは売り出し価格を引き下げる物件が増加しているという。

背景には、2022年後半から続いた不動産市場の信用引き締め、社債市場の混乱、そして土地利用権に関する法制度の不透明感がある。ベトナム政府は2024年に改正土地法・改正住宅法・改正不動産事業法のいわゆる「不動産三法」を施行し、制度面での整備を進めたが、市場心理の回復にはまだ時間がかかっている状況である。

なぜ戸建て・街区型住宅が特に苦戦するのか

ベトナムの不動産市場において、戸建て住宅や街区型住宅は伝統的に「資産保全」の手段として富裕層や中間層に人気が高かった。しかし現在、いくつかの構造的な要因がこのセグメントの低迷を招いている。

第一に、単価の高さである。ホーチミン市中心部やその周辺エリアでは、戸建て住宅の価格は数十億ドンから数百億ドンに達することも珍しくない。マンションと比較して1件あたりの投資額が大きく、融資環境が厳しいなかで買い手のハードルが一段と高くなっている。

第二に、流動性の問題がある。マンションはデベロッパーが大規模に販売するため価格の透明性が比較的高く、購入・転売のサイクルも早い。一方、戸建て住宅は個別性が強く、立地・間取り・法的書類の状況など物件ごとの条件が異なるため、買い手と売り手のマッチングに時間がかかる。市場全体が冷え込んでいるときほど、この流動性の差が顕著に表れる。

第三に、人口動態と住居選好の変化がある。ホーチミン市では若年層を中心にマンション志向が強まっており、セキュリティやアメニティ(プール、ジム、商業施設など)が充実した集合住宅への需要が相対的に高まっている。戸建て住宅の需要層は限定的になりつつあるという指摘もある。

市場全体の動向と政府の対応

ホーチミン市に限らず、ベトナム全体の不動産市場は2023年以降、調整局面が続いてきた。ベトナム国家銀行(中央銀行)は政策金利を段階的に引き下げて金融緩和を進め、政府も公共投資の加速や行政手続きの簡素化を通じて市場のテコ入れを図っている。

特にホーチミン市では、トゥードゥック市(旧2区・9区・トゥードゥック区が統合された新都市エリア)の開発や、メトロ1号線(ベンタイン〜スオイティエン間、2024年末に開業)の沿線開発が進むなど、中長期的にはポジティブな材料もある。しかし、短期的には在庫の消化に時間がかかっており、売り手にとって厳しい「買い手市場」が続いている。

また、ベトナムでは不動産取引に関する税制改革の議論も進んでおり、個人の不動産譲渡所得に対する課税強化の可能性が報じられている。こうした政策リスクも、買い手の様子見姿勢を強める一因となっている。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場への影響:不動産セクターの低迷は、ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する不動産関連銘柄に直接的な影響を及ぼす。特に、住宅開発を主力とするデベロッパー各社(ビングループ傘下のビンホームズ〈VHM〉、ノバランド〈NVL〉、フートゥアン〈PTL〉など)の業績や株価にとっては、販売低迷が長引くほどマイナス材料となる。一方で、在庫処分のための値下げは短期的に販売数量の回復につながる可能性もあり、底入れの兆しを見極める局面でもある。

日本企業への示唆:ホーチミン市の不動産価格調整は、日本企業にとってオフィス賃料や駐在員の住居コスト低下というメリットをもたらす可能性がある。また、日系不動産デベロッパー(住友林業、大和ハウス工業、野村不動産など)がベトナムで展開する住宅・商業開発プロジェクトについても、市況の悪化がプロジェクトの進捗やパートナーとの交渉に影響する可能性がある。投資用不動産の取得を検討する層にとっては、価格調整局面が参入のチャンスともなり得る。

FTSE新興市場指数格上げとの関連:2025年9月にFTSEラッセルがベトナムをフロンティア市場からセカンダリー新興市場へ格上げするかどうかの判断が下される見込みであり、これが実現すれば海外からの資金流入が大幅に増加すると期待されている。不動産市場の安定は、株式市場全体のセンチメントやマクロ経済の安定性を示す指標の一つであり、格上げ判断にも間接的に影響し得る。逆に言えば、不動産市場の底入れと回復は、格上げ後の投資先としてベトナム不動産関連銘柄が注目を集める契機となるだろう。

中長期の展望:ベトナムの都市化率は現在約40%弱で、ASEAN諸国のなかでもまだ上昇余地が大きい。ホーチミン市圏の人口は今後も増加が見込まれ、住宅需要の底堅さは中長期的に維持されるとみられる。現在の価格調整は、2021年〜2022年前半にかけての過熱相場の反動という側面が強く、健全な調整プロセスの一部と捉えることもできる。投資家にとっては、短期的な値下がりに一喜一憂するのではなく、ベトナムの人口動態・経済成長率(GDP成長率6〜7%台)・インフラ整備の進展といったファンダメンタルズを注視しながら、中長期の視点で判断することが肝要である。


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出典: 元記事

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