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ベトナム国内の金価格が1両(タエル=約37.5グラム)あたり1億5,380万ドンまで下落し、過去半年間で最も低い水準を記録した。国際金価格の下落幅を上回るペースで国内価格が調整され、内外価格差は1両あたり1,300万ドン未満にまで縮小している。
国内金価格の動向——1億5,400万ドンを割り込む
ベトナム国内の金価格は直近の取引で大幅に下落し、1両あたり1億5,380万ドンとなった。これは2025年末から2026年初頭にかけての高値圏から見ると、顕著な調整局面に入ったことを意味する。ベトナムでは金は伝統的に資産保全の手段として広く個人に保有されており、旧正月(テト)前後の需要期や、ドン安局面での「逃避先」として買われる傾向が強い。そのため、金価格の動きはベトナムの一般家庭の資産行動を映す鏡でもある。
今回の下落は、国際市場における金価格の軟化が主因である。米国の経済指標が堅調に推移し、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待が後退したことで、ドル建て金価格が下押し圧力を受けた。ベトナム国内市場ではこの国際価格の動きに加え、ベトナム国家銀行(中央銀行)が近年進めてきた金市場の安定化策が効果を発揮し、国内金価格は国際相場以上の下落幅を記録している。
内外価格差が1,300万ドン未満に縮小
ベトナムの金市場においては長年、国内価格と国際価格の間に大きな乖離が存在してきた。これは金の輸入が厳しく規制されており、国内供給が限られていることに起因する。ベトナムでは国家銀行が金地金の輸入を独占的に管理しており、SJC(サイゴンジュエリーカンパニー)ブランドの金が事実上の「公認地金」として流通している。この供給制約が、国内金価格を国際水準よりも大幅に押し上げる構造を生んできた。
ピーク時には内外価格差が1両あたり2,000万ドンを超える場面もあったが、今回の調整により同差は1,300万ドン未満にまで縮小した。これは、ベトナム国家銀行が2024年以降に実施してきた金の入札販売や、市中への供給拡大策が一定の成果を上げていることを示唆している。国家銀行は金市場の「正常化」を政策課題の一つに掲げており、内外価格差の縮小はその進捗を測る重要な指標となっている。
ベトナムにおける金市場の特殊性
日本の読者にとって理解しておくべき点は、ベトナムにおける金の位置づけが日本とは大きく異なることである。ベトナムでは不動産取引の一部が金建てで行われることがあり、結婚式や旧正月の贈答品としても金が重要な役割を果たす。銀行預金への信頼が完全には確立していなかった時代の名残もあり、「タンス預金」として金地金を保有する家庭は依然として多い。
政府は2012年以降、金市場の管理を強化し、金の両替業務やバー(地金)の自由な売買を制限してきた。この規制は通貨ドンの安定を目的としたものであるが、一方で供給制約による内外価格差の拡大という副作用も生んできた。現在の価格差縮小は、こうした構造的課題に対する当局の取り組みが前進していることの表れといえる。
投資家・ビジネス視点の考察
金価格の下落と内外価格差の縮小は、ベトナム経済・金融市場にとって複数の示唆を持つ。
株式市場への影響:金価格の下落は、個人投資家の資金が金から株式市場へシフトする可能性を高める。ベトナムでは個人投資家の比率が依然として高く、金と株式は「個人の資産配分」において競合関係にある。金が魅力を失えば、VN-Index(ホーチミン証券取引所の主要指数)への資金流入が期待できる局面となる。特にSJCブランドを扱う宝飾・貴金属関連企業の業績には短期的に逆風となる一方、証券セクターには追い風となり得る。
通貨ドンの安定との関連:内外金価格差の縮小は、ドンに対する信認が相対的に安定していることを間接的に示す。金への逃避需要が落ち着いているということは、為替市場においてもドン安圧力が限定的であることを意味する。これは日本企業を含む外資系企業にとって、ベトナム事業の収益見通しの安定につながるポジティブな材料である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げに向けて、当局は金融市場全体の透明性と安定性を高める必要がある。金市場の正常化もこの文脈で捉えることができ、内外価格差の縮小はベトナムの金融市場が「成熟」に向かいつつあることを国際投資家にアピールする材料となる。
日本企業への影響:金価格の動向は直接的な影響こそ限定的であるが、ベトナムのマクロ経済環境の安定を測る「温度計」として注視に値する。金市場の安定は、インフレ期待の落ち着きやベトナム国家銀行の政策運営に対する市場の信頼を反映しており、製造業やサービス業でベトナムに進出している日本企業にとっても、事業環境の安定性を裏付ける好材料である。
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