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ベトナム企業の3分の1がAIを戦略優先と認識も「実践レベル」はわずか3%—深まるデジタル格差の実態

'Doanh nghiệp ưu tiên AI nhưng chưa ứng dụng sâu'
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
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ベトナムの企業の約3分の1がAI(人工知能)を経営上の戦略的優先事項と位置づけている一方、自社がAIを「主体的に使いこなせるレベルにある」と評価した企業はわずか3%にとどまることが明らかになった。大半の企業はメール作成やデータ整理といった基礎的なタスクにAIを活用するにとどまり、業務プロセスの根本的な変革や意思決定の高度化にまで踏み込めていない現状が浮き彫りとなった。ベトナムが掲げるデジタル経済先進国への道のりは、企業の「意識」と「実行力」の間に広がる深い溝をどう埋めるかにかかっている。

目次

調査が示すベトナム企業のAI活用の実態

今回報じられた調査結果によれば、ベトナム国内の企業のおよそ33%がAIを戦略的優先課題と認識している。これは、数年前と比べればAIに対する経営層の関心が大幅に高まったことを示す数字である。ベトナム政府が2020年に「2030年までの国家AI戦略」を策定し、行政・医療・農業・製造業など幅広い分野でAI導入を推進してきた政策効果も、企業の意識変化に寄与していると考えられる。

しかし実態は厳しい。AIを自社の中核業務に本格統合し、独自のモデル開発やデータドリブン経営に踏み出せている企業は全体のわずか3%に過ぎない。残りの大多数は、チャットボットによる顧客対応の自動化、社内文書の要約、簡単なデータ分析など「基本的なタスク」へのAI活用にとどまっている状況である。

「意識」と「実装」のギャップが生まれる構造的要因

なぜベトナム企業はAIの重要性を認識しながらも、深い活用に移行できないのか。背景にはいくつかの構造的な要因が存在する。

第一に、人材不足の問題がある。ベトナムはIT人材の供給国として東南アジアで存在感を高めてきたが、AI・機械学習の専門スキルを持つ高度人材は依然として限られている。ハノイ工科大学やホーチミン市工科大学などの理工系トップ校でもAI分野の教育体制が充実してきたのはここ数年のことであり、産業界が求める実践的な人材が十分に育つにはまだ時間を要する。

第二に、データ基盤の未整備である。AIの本格活用には、構造化された大量のデータと、それを安全に管理・処理するインフラが不可欠だ。しかしベトナムの中小企業を中心に、業務のデジタル化自体がまだ途上にある企業は少なくない。紙ベースの管理からようやくクラウド移行を始めた段階の企業にとって、AI導入はハードルが高いのが実情である。

第三に、投資資金とROI(投資対効果)の不透明さがある。AIプロジェクトは初期投資が大きく、成果が出るまでの期間も読みにくい。資金力のある大手企業やテック企業であればPoC(概念実証)を繰り返す余裕があるが、ベトナム経済の屋台骨を支える中小企業にとっては容易ではない。

先行するベトナムの大手テック企業とスタートアップ

一方で、3%の「AI活用先進層」に属する企業の動きは注目に値する。ベトナムのテクノロジー大手であるFPTコーポレーション(FPT Corporation、ホーチミン証券取引所上場・ティッカー:FPT)は、生成AIやクラウドAIサービスの開発に積極的に投資し、日本を含むグローバル市場でAI関連の受託開発案件を急速に拡大している。FPTは2024年以降、独自の大規模言語モデル(LLM)の開発やNVIDIAとの戦略的パートナーシップを発表するなど、ベトナム企業のAI活用を牽引する存在となっている。

また、軍隊系の通信大手であるヴィッテル(Viettel Group)もAI研究所を設置し、通信ネットワークの最適化や音声認識技術の開発でベトナム語対応のAIソリューションを展開している。このほか、ハノイやホーチミン市を拠点とするAIスタートアップも年々増加しており、画像認識、自然言語処理、医療AIなどの分野で新興企業が台頭しつつある。

政府のデジタル戦略とAI普及促進策

ベトナム政府は2025年を「デジタル転換の加速年」と位置づけ、AI導入を含むデジタル経済の推進を重要政策として掲げてきた。ファム・ミン・チン(Phạm Minh Chính)首相はたびたび、AIを国家競争力の根幹と位置づける発言を行っている。情報通信省はAI関連のガイドライン整備やサンドボックス制度の検討を進めており、企業がAIを試験的に導入しやすい環境づくりにも取り組んでいる。

2026年に入ってからも、政府はデジタル人材の育成プログラムの拡充や、中小企業向けのデジタル化支援基金の拡大を打ち出しており、今回の調査が示す「意識と実行のギャップ」を縮小するための政策的な後押しは続いている。しかし、政策が現場レベルに浸透し実際の企業行動を変えるまでにはタイムラグがあるのが現実である。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の調査結果は、ベトナムのAI市場が「初期普及段階」にあることを改めて確認させるものである。投資家にとっては、以下の複数の視点から注目すべきポイントがある。

1. AI関連銘柄への中長期的な追い風:ベトナム企業の33%がAIを戦略的優先事項としている以上、今後AI導入を支援するITサービス企業やクラウド事業者への需要拡大は確実視される。上場企業ではFPT(ティッカー:FPT)が最も直接的な恩恵を受ける銘柄であり、同社のAI関連売上の成長率は引き続き注視すべき指標である。CMC Corporation(CMG)やTMA Solutionsなどの中堅IT企業にも波及効果が期待される。

2. 日本企業への示唆:ベトナムに製造拠点や開発拠点を持つ日本企業にとって、現地パートナーのAI成熟度が低いことは短期的にはリスク要因となる。一方で、AI導入コンサルティングやDX支援を手がける日本企業にとっては、ベトナム市場が大きなビジネスチャンスとなり得る。実際、日本のSIer(システムインテグレーター)各社がベトナムでのAI共同開発案件を拡大している動きも見られる。

3. FTSE新興市場指数の格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE(フィッツィー)新興市場指数へのベトナムの格上げは、海外からの資金流入を大幅に増加させるとみられている。この文脈において、ベトナムのデジタル経済・AI活用の進展度合いは、海外の機関投資家がベトナム市場の「成長ストーリー」を評価する際の重要な判断材料となる。今回の調査が示す課題は中長期的なものだが、逆に言えば改善余地が大きいということでもあり、格上げ後に流入する資金の一部がテック・AI関連銘柄に向かう可能性は十分にある。

4. ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ:ベトナムはGDP成長率7〜8%を目指す高成長経済であり、労働集約型から知識集約型への産業構造転換が喫緊の課題となっている。AI活用の深化は、この転換を加速させる鍵であり、今回の「3%」という数字は現状の厳しさを映し出すと同時に、今後の成長ポテンシャルの大きさを示すものでもある。製造業の自動化、農業のスマート化、金融サービスのパーソナライゼーションなど、AI導入が進む分野は多岐にわたり、中長期の投資テーマとしてベトナムのAI関連セクターは引き続き注目に値する。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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