ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム建設省は2026年に27プロジェクトの完工と5プロジェクトの新規着工を計画しているが、用地収用の遅れ、建設資材不足、燃料価格の高騰という三重苦により、主要交通インフラ5件が期限内に完成しない恐れが出てきた。公共投資の執行率はベトナムのGDP成長を左右する最重要指標の一つであり、投資家にとっても見逃せない動きである。
建設省の2026年計画と現状
2026年6月9日午後に開催された建設省の5月業務報告・6月重点任務会議において、経済・建設投資管理局のレ・クエット・ティエン局長が現状を報告した。
新規着工5件のうち、既に着手されたのはニンクオン橋(Cầu Ninh Cường)とホアズエット〜タインルエン区間改修(Hòa Duyệt – Thanh Luyện)の2件のみ。残る3件は年後半に着工予定で、クーモン・トンネル(Hầm Cù Mông、ベトナム中南部の交通の要衝)完成工事が2026年7月、南部水路・物流回廊開発プロジェクトとメコンデルタの国道53号・62号・ナムソンハウ線の3路線アップグレードが第4四半期の着工を見込んでいる。
完工目標27件については、ビエンホア〜ブンタウ高速道路(Biên Hòa – Vũng Tàu)のサブプロジェクト2とカオバン市バイパス道路(Tuyến tránh TP Cao Bằng)の2件が完了済みである。しかし残る25件のうち9件が進捗要件を満たしておらず、特に5件は計画通りの完工が危ぶまれている。
遅延が深刻な5大プロジェクトの詳細
①国道14B号線アップグレード──出来高約42.6%、計画比約21.7%の遅延。全プロジェクト中で最大の遅れ幅を記録している。国道14B号線はダナン市(ベトナム中部の主要経済都市)と中部高原地帯を結ぶ幹線であり、物流への影響は大きい。
②カムロー〜ラーソン高速道路拡幅(Cam Lộ – La Sơn)──出来高約20.4%、計画比約15.6%遅延。同区間は南北高速道路の一部を構成し、ベトナムの大動脈整備において戦略的に重要な位置づけにある。
③国道46号線ヴィン市〜ナムダン区間(TP Vinh – Nam Đàn)拡幅──出来高約41.6%、計画比約12%遅延。ゲアン省(ベトナム中北部の大省)の中核都市ヴィンと周辺地域を結ぶ路線である。
④ホーチミン・ルート ラックソイ〜ベンニャット・ゴークアオ〜ヴィントゥアン区間(Rạch Sỏi – Bến Nhất, Gò Quao – Vĩnh Thuận)──出来高約62.9%、計画比約7.5%遅延。メコンデルタ地域の南北連結を担う重要路線だ。
⑤国道2号線ヴィンイエン〜ヴィエットチー区間(Vĩnh Yên – Việt Trì)アップグレード──最も懸念される案件とされる。2025年3月に着工したにもかかわらず、用地引き渡しがわずか約43%にとどまり、出来高はわずか約6.5%。ティエン局長は、用地収用の問題に加え、事業主体が地方政府との調整に積極的でなく、施工業者への指揮も不十分であると指摘した。ヴィンイエンとヴィエットチーはいずれもハノイ北西部に位置する都市で、首都圏の広域交通ネットワーク強化の観点から注目度が高い。
遅延の構造的要因
ティエン局長は、遅延の主因として以下の3点を挙げた。
第一に、用地収用(giải phóng mặt bằng)の長期化。ベトナムでは土地使用権が複雑に絡み合い、補償交渉が難航するケースが恒常的に発生している。2024年に施行された改正土地法がこの問題を緩和することが期待されていたが、実務レベルでは依然として地方ごとの運用にばらつきがある。
第二に、建設資材の供給不足。特に砂や砂利などの天然骨材はメコンデルタ地域で深刻な不足状態にあり、環境規制の強化で河川からの採取が制限されていることが背景にある。
第三に、燃料価格の急騰。国際原油価格の変動に加え、国内の燃料税制も影響し、施工業者が採算割れを起こしてペースを落とさざるを得ない状況が生じている。
建設省は対策として、事業主体およびプロジェクト管理委員会に対し、週次での進捗点検の実施、地方政府との連携による用地・資材問題の早期解決、施工業者への人員・設備集中投入の指示徹底を求めた。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム政府は2026年のGDP成長率目標を8%超に設定しており、公共投資の迅速な執行はその達成に不可欠な要素である。交通インフラの遅延は、建設セクターの売上認識の後ずれに直結するため、ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する大手建設株──たとえばCoteccons(CTD)、Hoa Binh Construction(HBC)、Vinaconex(VCG)などの業績見通しに影響を及ぼす可能性がある。
一方で、遅延の「巻き返し」局面では公共投資の集中執行が起こりやすく、下半期にかけてセメント・鉄鋼・建機リースなど関連セクターへの資金流入が加速するシナリオも考えられる。Hoa Phat Group(HPG、ベトナム最大の鉄鋼メーカー)やVicem(ベトナムセメント総公社傘下各社)の出荷量動向は引き続き注視すべきである。
また、2026年9月にはFTSE新興市場指数へのベトナム格上げ可否の決定が見込まれている。格上げ判断においてはマクロ経済のファンダメンタルズが重視されるが、インフラ整備の進捗は外国投資家がベトナムの中長期的な成長力を評価する際の重要な判断材料となる。プロジェクト遅延が常態化すれば、「計画と実行のギャップ」というベトナム特有のリスク認識を強める要因にもなりかねない。
日本企業にとっては、メコンデルタの物流回廊開発や南部水路プロジェクトの動向が特に関連性が高い。同地域にはJICA(国際協力機構)の支援案件も複数存在し、日系物流企業や製造拠点を持つ企業のサプライチェーン効率化に直結するためだ。遅延が長期化すれば、輸送コストの高止まりという形でベトナム進出日系企業の収益を圧迫するリスクがある。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント