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ビジネス・スウェーデン(Business Sweden)とスウェーデン大使館が2026年6月11日に公表した「ビジネス環境調査2026」で、スウェーデン企業がベトナム市場への長期的なコミットメントを改めて鮮明にした。2025年にはスウェーデン企業の81%が増収を記録し、2026年も50%が追加投資を計画しているという。55年超の外交関係を基盤に、北欧マネーがベトナムに向かう構図が一段と強まっている。
ベトナムのマクロ経済が投資家の確信を支える
スウェーデン企業の楽観を支える最大の要因は、ベトナムのマクロ経済パフォーマンスである。2024年のGDP成長率は7.09%と国際機関の予測を上回り、2025年にはさらに8.02%へと加速した。世界的に景気減速リスクが意識されるなかで、ベトナムは「世界で最も成長が速い経済圏」の一角を維持し続けている。
この高成長が企業業績に直結している。2025年にはスウェーデン企業の81%が売上増を達成。2026年についても61%の企業が業界全体の売上成長を見込んでおり、北欧投資家のセンチメントは極めて安定的である。
2020年以降に参入した企業が約半数──新たな投資の波
注目すべきは、現在ベトナムでサプライチェーンに参画しているスウェーデン企業の約半数が、2020年以降に進出した「新規組」であるという事実だ。米中対立やコロナ禍を契機としたサプライチェーン再編の流れのなかで、ベトナムが「チャイナ・プラスワン」の有力な受け皿として選ばれてきたことを如実に示している。
2026年には50%の企業がベトナムでの投資拡大を計画している。2025年の59%からはやや低下したものの、世界的な資金引き締め環境を考慮すれば、依然として高い水準である。スウェーデン大使のヨハン・ンディシ(Johan Ndisi)氏は「ベトナムは東南アジアで最もダイナミックな経済の一つに成長した」と述べ、スウェーデン企業が資本だけでなく、持続可能なソリューションやイノベーションの知見をもたらしていると強調した。
「スウェーデン・ブランド」の威力──81%が事業上の優位性を実感
調査では81%の企業が「スウェーデンという国家ブランドがベトナムでのビジネスにプラスに作用している」と回答した。高品質、持続可能性、イノベーションといったスウェーデンに対するポジティブなイメージが、現地パートナーとの信頼構築に大きく貢献しているという。進出分野もヘルスケア、インフラ、デジタル化、グリーン転換など、ベトナム政府の開発優先分野と正確に合致している点が特徴的である。
具体的な事例として、自動車安全部品大手のオートリブ(Autoliv、スウェーデン本社)がバクニン省(ハノイ近郊の北部工業地帯)に新工場を竣工させたことが紹介されている。バクニン省はサムスンをはじめとする電子機器メーカーの集積地であり、サプライチェーンの厚みが増すことで、同省の投資魅力はさらに高まるとみられる。
ビジネス環境の評価は急改善──だが行政手続きに課題残る
2026年の調査で最も目を引くのは、ベトナムのビジネス環境を「良い」または「非常に良い」と評価した企業の割合が67%に達し、2025年の46%から大幅に上昇した点である。国内サプライヤーの品質向上、信頼性の高い流通網、社会の安全性の高さが評価されている。
一方で、通関手続き、許認可プロセス、法規制の複雑さは依然として主要な障壁として挙げられている。2025年時点でも40%の企業が通関手続きを「大きな障壁」と認識しており、行政簡素化はベトナムが質の高い外資を引きつけ続けるうえで「生命線」とも言える改革課題である。ビジネス・スウェーデンのベトナム代表マーカス・ペーション(Marcus Persson)氏も「法制度環境のさらなる改善がベトナムの投資先としての地位を一層強固にする」と指摘した。
グリーン転換が新たな事業機会に
ベトナム政府が2050年ネットゼロを掲げるなか、環境要因が消費・調達の意思決定に影響を与えていると回答した企業は59%に上った。スウェーデン企業は再生可能エネルギーや持続可能な産業ソリューションの提供を通じ、ベトナムのグリーン転換を後押しする姿勢を鮮明にしている。同時に、法的枠組みの整備やインフラの近代化が進めば、転換のスピードはさらに加速するとの期待も示されている。
なお、本調査はベトナム市場の主要セクターで事業を展開する33社のスウェーデン企業を対象に実施されたものである。
投資家・ビジネス視点の考察
本調査結果は、ベトナム株式市場にとって複数の示唆を含む。第一に、GDP成長率8.02%という数字は、上場企業全体の利益成長の追い風となる。特に工業団地開発(キンバック・シティ〈KBC〉、ベカメックス〈BCM〉など)やインフラ関連銘柄にとって、北欧を含む外資の投資拡大はポジティブな材料である。
第二に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連性である。スウェーデン企業が挙げた課題──行政手続きの複雑さ、法的透明性の不足──はまさにFTSEがベトナムに求めている改善項目と重なる。これらが改善されれば格上げの実現可能性が高まり、大規模なパッシブ資金の流入が期待できる。
第三に、日本企業への示唆である。スウェーデン企業がグリーン転換やデジタル化で先行的に市場を開拓しているように、日本企業にとっても脱炭素技術やスマートシティ関連で参入余地は大きい。特にバクニン省やビンズオン省などの工業集積地では、日系・北欧系のサプライチェーンが交錯しつつあり、協業の機会が生まれやすい環境にある。
ベトナムが「世界の工場」から「質の高い成長を目指す新興経済大国」へ転換しつつあるなか、スウェーデン企業の長期コミットメントは、その方向性に対する国際的な信認の表れと言える。投資家としては、こうした外資動向をマクロ環境の「体温計」として継続的にウォッチしておきたい。
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