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ベトナム保健省が、麻薬性医薬品・向精神薬・前駆物質・放射性医薬品など「特別管理対象」の医薬品および原料に関する包括的な新通達を公布した。2026年7月16日に施行されるこの通達(Thông tư 18/2026/TT-BYT)は、改正薬事法および政令163/2025/NĐ-CPの詳細規定を定めたもので、流通過程での紛失・横流し防止と、トレーサビリティの抜本的強化を柱としている。
新通達の背景と位置づけ
ベトナムでは近年、経済成長に伴い医薬品市場が急拡大する一方、麻薬性医薬品や向精神薬の不正流出が社会問題化していた。従来は管理基準が各省・各医療機関でばらつきがあり、統一的な法的枠組みの整備が急務とされていた。今回の通達は、改正薬事法(Luật Dược sửa đổi)の施行に合わせ、初めて管理プロセスを全面的に標準化・統一化したものであり、保健省はこれを「重要な一歩」と位置づけている。
主な規定内容
1. 各段階の責任の明確化
通達の最大の特徴は、特別管理対象医薬品の取り扱いにおける各段階の責任を明確に規定した点である。医療施設では、麻薬性医薬品・向精神薬・前駆物質およびそれらの原料は、専用の倉庫または施錠可能な専用保管庫に保管し、他の医薬品と混在させてはならない。専用倉庫・保管庫がない場合は、明確な標識を備えた独立区画を設けることが義務づけられる。
2. 調剤・使用プロセスの厳格化
麻薬性医薬品・向精神薬・前駆物質の払い出し・使用は厳格な手順に従う必要がある。各診療科・外来部門は、医薬品受領伝票を作成し、入出庫・在庫の追跡記録を行い、未使用分の返却も規定に沿って実施しなければならない。
3. 管理担当者の資格要件
特別管理対象医薬品の管理者には、薬学分野の中級専門資格以上の保有、または書面による正式な任命が求められる。放射性医薬品については、放射線安全に関する専門教育の修了が追加要件となる。
4. 小売薬局への要求
小売薬局(nhà thuốc)は、入出庫・在庫管理台帳、処方箋の保管、医薬品返却記録、顧客情報追跡台帳を完備しなければならない。保健省はこれにより、麻薬性・向精神薬の市場流通における追跡可能性を飛躍的に高める狙いがあるとしている。
5. 電子記録の容認
注目すべきは、データの機密性・完全性・保存性に関する要件を満たすことを条件に、紙の帳簿に代えて電子記録の使用が認められた点である。電子データは送受信・保存の過程で保護され、必要時に追跡・検索可能でなければならない。医薬品事業者および非営利の医薬品関連活動を行う機関も、紙または電子での記録保存が可能だが、保存期間を通じたデータの管理・検索・復元能力の確保が求められる。
6. 放射性医薬品の供給規定
放射性医薬品の製造・調剤が認められた医療機関は、自施設の需要を超えて生産した場合、他の医療機関に供給することが可能となった。ただし、供給・受領双方の機関が品質・安全性・有効性について責任を負い、年次報告義務も課される。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の通達は、ベトナム医薬品市場の制度的成熟度を一段引き上げるものであり、複数の観点から投資家やビジネス関係者に影響を及ぼす。
医薬品流通・小売セクターへの影響:FPTリテール傘下のロンチャウ薬局チェーン(Long Châu)やファノ薬局(Pharmacity)など、大手チェーンにとっては、既にシステム化された在庫・顧客管理体制が競争優位となる。一方、零細薬局はコンプライアンスコスト増により淘汰圧力が高まる可能性がある。上場企業ではFPTリテール(FRT)やファーエクイティ(Phar Equity)関連銘柄が注目される。
電子化・DX関連:電子記録が公式に容認されたことで、医薬品管理システムやトレーサビリティソリューションを提供するIT企業への需要拡大が見込まれる。FPT(FPT)やCMC(CMG)といったベトナム大手IT企業、さらには日系のシステムインテグレーターにとっても商機となり得る。
日本企業への示唆:ベトナムに進出している日系製薬企業や医療機器メーカーは、新たな管理要件への対応が必要となる。特に麻薬性・向精神薬を取り扱う場合、現地パートナーの管理体制の確認と、電子記録システムの整備が急務である。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナムは各分野で制度の透明性・近代化を推進している。医薬品分野における今回の規制強化も、市場全体のガバナンス向上の一環として国際的な投資家から好意的に受け止められる可能性がある。
市場全体への影響:直接的な株価インパクトは限定的だが、中長期的にはベトナム医薬品市場の信頼性向上を通じて、セクター全体のバリュエーション底上げに寄与すると考えられる。
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