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米イラン緊張の緩和という好材料があったにもかかわらず、ベトナム株式市場のVN指数は週末の取引で1800ポイントを再び割り込み、1791.65ポイントで引けた。資金流入の弱さが鮮明となり、先週の反発局面が「ブルトラップ(強気の罠)」であった可能性が改めて意識される展開となっている。
VHM急落だけではない——市場全体で広がった売り圧力
VN指数の下落についてはVHM(ビンホームズ、ベトナム最大手不動産デベロッパー・ビングループ傘下)が4.01%下落し、指数を約5ポイント押し下げたことが目立つ。しかし本質的な問題はそこではない。場中の騰落比率(値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率)は、最も良い時点で3.1対1だったものが、引けにかけて0.65対1にまで悪化した。これは大型株だけでなく、幅広い銘柄で後場に売りが広がったことを示しており、市場全体の地合いの弱さを如実に物語っている。
「上がれば薄商い、下がれば商い増」——不健全なパターンの反復
ベトナム市場では現在、上昇する日は出来高が細り、下落する日は出来高が膨らむという不健全なパターンが繰り返されている。この日のホーチミン証券取引所(HSX)の売買代金は前日比57%増の約14兆6,000億ドン(板取引のみ、相対取引除く)だったが、これは前週の平均並みの水準に過ぎない。つまり大量の投げ売りが出たわけではなく、そもそも買い手が高値圏での購入を拒否している状態である。1800ポイントは心理的な節目に過ぎないが、資金がその水準を「買い場」として認識していないことが問題の核心である。
ブルトラップの後遺症——短期投資家の多くが含み損
VNAllshare指数の構成銘柄について、購入タイミング別の損益状況を見ると深刻な実態が浮かび上がる。T+2(2営業日前に購入)の時点で含み益がある銘柄は約31.5%、T+3では約47.6%だが、T+5(5営業日前に購入)ではわずか20%未満にまで低下する。先週の反発局面で飛びついた投資家の多くが含み損を抱えており、これがまさにブルトラップの後遺症である。さらに、利益が出ている銘柄の多くは1日の売買代金が数十億ドン程度の低流動性銘柄であり、機関投資家や大口資金にとっては実質的に手が出せない。低機会・高リスクという市場環境では、短期資金の活発化は期待できない。
「膠着状態」こそが心理的な罠——供給テストが試金石
現在の極端に低い出来高は、脆い均衡状態に過ぎないというのが市場関係者の見方である。週明け月曜日に見られたような急落による出来高急増こそが、市場の本当の実力を測る「供給テスト(テストクン)」となる。値を崩して売りがどれだけ出てくるかを確認するプロセスを経なければ、明確な方向性は見えてこない。現在の「なんとなく動かない」状態に安心してしまうことこそが、最大の心理的罠であるとベテラン投資家は警告している。
デリバティブ市場の動き——ベーシス反転が示すもの
この日のデリバティブ市場では、前夜にトランプ大統領がイラン空爆作戦を中止したことを好感し、先物(F1)のベーシス(先物と現物の価格差)は大半の時間帯でプラスを維持した。VN30指数の寄り前にはベーシスが約20ポイントまで拡大する場面もあった。しかし、VN30が1968ポイント付近に到達すると上値が重くなり、VHM、VIC(ビングループ)、STB(サコムバンク)といった大型株への売り圧力とロングカバー(買い戻し)が重なってベーシスは引けにかけてマイナスに転じた。VN30は1944.36ポイントで引け、翌営業日の上値抵抗線は1952、1959、1970、1984、1993、2006、2015ポイント、下値支持線は1940、1924、1908、1894、1884、1873ポイントが意識される。
投資家・ビジネス視点の考察
現在のベトナム市場が直面している課題は、外部環境の好材料(地政学リスクの後退、世界的な株高)にもかかわらず内部の資金循環が停滞している点にある。これは2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定を控え、市場改革(プレファンディング撤廃など)への期待と、足元の流動性不足という現実とのギャップが拡大していることを反映している。
日本の個人投資家にとっては、現在の膠着局面は「安易な押し目買い」が報われにくい環境であることを認識すべきである。VHMやVICといったビングループ関連銘柄、STBなどの銀行株は指数への影響度が大きく、これらの動向がVN指数全体の方向性を左右する。出来高を伴った明確な底打ちシグナルが確認されるまでは、慎重な姿勢が求められる。
日本企業のベトナム進出という観点では、株式市場の低迷が直接的な事業環境の悪化を意味するわけではないが、現地パートナー企業の資金調達環境やバリュエーションに影響を与える可能性がある点には留意が必要である。
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