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ベトナム青果輸出が年23%成長も構造的課題が浮上——市場多角化と加工比率が鍵

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ベトナムの青果(野菜・果物)輸出が2023年から2025年にかけて年平均23〜24%という驚異的な成長を記録している。しかし、この成長を長期的に維持するには、小規模・零細農家による標準化不足と、深加工比率の低さという二つの構造的ボトルネックの解消が急務である。ホーチミン市で開催されたセミナーでの業界関係者の発言を基に、ベトナム青果輸出の現状と課題を詳しく解説する。

目次

急成長する青果輸出——56億ドルから85.6億ドルへ

ベトナム商工省外国市場開発局と国連工業開発機関(UNIDO)が共催した農産物輸出セミナーにおいて、ベトナム青果協会のグエン・ヴァン・ムオイ副事務局長が示したデータによると、ベトナムの青果輸出額は2023年の56億ドルから2024年には71.5億ドル、2025年には85.6億ドルへと急拡大した。年平均成長率は23〜24%に達する。

特筆すべきは貿易黒字への貢献度である。2025年、青果部門だけで55億ドル超の貿易黒字を計上し、ベトナム全体の貿易黒字200億ドル超のうち約4分の1を占めた。2026年1〜5月も輸出27億ドル超、輸入約13億ドルと堅調な推移を見せている。

中国依存率64〜65%——市場構造の実態

輸出先の構成を見ると、中国が圧倒的な存在感を示し、全体の64〜65%を占める。これはベトナムと中国が陸路で国境を接する地理的優位性に起因する。保存期間の短い生鮮青果にとって、輸送速度が品質と価格を直接左右するためである。

続く米国は8.6%、韓国5.3%、日本3.4%、マレーシア・オランダが各約2.88%、ドイツが1.7%超となっている。マレーシアは近年急速に伸びている市場として注目される。

ムオイ副事務局長は、中国への高依存を必ずしも弱点とは捉えていない。「北京市場を訪れると、ベトナム産果物としてバナナとドリアン以外はほとんど知られていない。最大市場の中で商品ラインナップを多様化する余地は極めて大きい」と指摘した。つまり、新市場の開拓と同等以上に、既存最大市場での品目拡大が重要だという認識である。

インド市場への慎重な見方——「人口が多い=売れる」ではない

ベトナム産ドリアンのインド向け輸出許可が間近とされ、期待が高まっているが、ムオイ副事務局長は慎重な姿勢を崩さない。「人口が多いからといって大量に買ってもらえるわけではない。消費文化を理解しなければならない。インドでは加工品や冷凍品の可能性はあるが、生鮮果物の輸出は容易ではない。タイが先行して参入したが、期待通りの結果は出ていない」と警鐘を鳴らした。

同氏は中国におけるコーヒー市場の成功例を引き合いに出した。もともと茶文化が圧倒的に強い中国で、チュングエン(Trung Nguyên)やヴィナカフェ(Vinacafe)といったベトナムのコーヒーブランドが体系的なマーケティング戦略により消費習慣そのものを変えた事例である。インドにドリアンを売り込む際にも、同様に「需要を創出する」アプローチが不可欠だと強調した。

ボトルネック①:小規模・零細生産と標準化の欠如

第一の構造的課題は、生産現場の零細性と品質基準の不統一である。現在、ベトナム全国の農業生産面積のうちVietGAP(ベトナム適正農業規範)認証を取得しているのは5%未満にとどまる。95%以上の生産が標準化されたプロセスなしに行われており、農家ごとに栽培方法が異なるため、輸出ロットごとの品質の均一性を確保することが極めて困難な状況にある。

2026年初頭には、実際にドリアンやジャックフルーツで品質事故が発生しており、これは構造的問題が表面化した具体例といえる。「市場を開くには5〜7年の交渉が必要だが、開いた市場を維持することの方がはるかに難しい」とムオイ氏は強調する。

解決策として挙げられたのが、農家の協同組合・連携グループへの参加促進による生産規模の拡大と品質管理の一元化である。また、輸出先市場が義務付ける栽培地コード(mã số vùng trồng)やトレーサビリティ(生産履歴追跡)の取得についても課題がある。現状では、本来は農家と行政が担うべき栽培地コードの申請手続きが、輸出企業に転嫁されている。「企業の仕事は市場と顧客を開拓すること。農家の代わりに栽培地コードを取得することではない」とムオイ氏は責任分担の歪みを率直に批判し、国が農家を直接支援する体制の構築を求めた。

ボトルネック②:深加工比率の低さ——台湾80%に対しベトナム17〜18%

第二の課題は加工度の低さである。2025年、加工品は輸出額の約23%にあたる約20億ドルを占めたが、国内の青果生産量全体に対する深加工比率は17〜18%に過ぎない。台湾(80%)との差は歴然としている。

ムオイ氏は、深加工が付加価値向上の手段であるだけでなく、季節変動への対応策としても不可欠だと分析する。ベトナムの青果は4月から9月に収穫が集中し、生鮮のまま短期間で消化しきれない。加工こそが「豊作貧乏」を回避する最も効果的な需給調整メカニズムであり、インドのように生鮮よりも加工・冷凍品の方が見込みのある市場を開拓する道でもある。

2026年1〜5月の加工分野の成長率は約25%と、2020年の23%を上回るペースにあるが、「先行する国々との差を縮めるには、企業レベルだけでなく政策レベルで加工技術への体系的投資が必要だ」と同氏は訴えた。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム青果輸出セクターの成長は、同国の農業関連銘柄にとって中長期的な追い風となる。ホーチミン証券取引所に上場する食品加工・農業関連企業にとって、深加工比率の引き上げは収益構造の転換を意味し、設備投資の拡大や外資との技術提携が進む可能性がある。

日本企業にとっても示唆は大きい。冷凍・加工技術、品質管理ノウハウ、コールドチェーン(低温物流)インフラはまさに日本が強みを持つ分野であり、ベトナムの加工比率向上ニーズとの親和性は高い。実際、日本の商社や食品メーカーの中にはベトナムでの農産物加工拠点設立を検討する動きもある。

2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外からベトナム市場への資金流入が加速する。その際、年間85億ドル超を稼ぎ貿易黒字に大きく寄与する青果セクターは、ベトナム経済のファンダメンタルズの強さを示す象徴的な存在として、投資家の注目を集めるだろう。ただし、中国市場への高依存は地政学リスクと表裏一体であり、市場多角化の進捗度合いが中長期の投資判断において重要な変数となる点には留意が必要である。


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出典: 元記事

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