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金価格高騰で高級腕時計を溶かして金を取り出す動き広がる——ベトナムにも波及する世界的トレンド

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金価格の歴史的な高騰を受け、高級腕時計を溶かして内部の金を取り出すという、一見すると信じがたい行為が世界的に広がっている。多くの高級時計モデルにおいて、含有される金の価値が時計そのものの中古販売価格を上回るという「逆転現象」が起きているためだ。この動きはベトナムの金市場にも大きな示唆を与えるものである。

目次

高級時計の「金含有価値」が中古価格を超える逆転現象

金の国際価格は2024年以降、断続的に最高値を更新し続けてきた。2025年から2026年にかけてもその上昇基調は衰えず、1トロイオンスあたりの価格は歴史的水準に達している。こうした環境下で、ロレックス(Rolex)やパテック・フィリップ(Patek Philippe)、オーデマ・ピゲ(Audemars Piguet)といったスイスの名門ブランドが製造する金無垢ケースの高級時計が、新たな「金の供給源」として注目を集め始めた。

高級時計の多くは18金(750/1000の純度)のケースを採用しており、1本あたり数十グラムから、モデルによっては100グラムを超える金が使用されている。金価格が比較的低かった時代には、時計としてのブランド価値や工芸的価値が金の素材価値を大きく上回っていたが、金価格の急騰により、中古市場で値崩れした一部モデルでは、金の含有量から算出される「溶解価値(メルトバリュー)」が中古販売価格を上回るケースが続出しているのである。

なぜ高級時計の中古価格は下落しているのか

この逆転現象の背景には、高級時計の中古市場における価格調整がある。2020年から2022年にかけて、コロナ禍の巣ごもり需要や投機的資金の流入により、ロレックスをはじめとする高級時計の中古価格はバブル的に高騰した。しかし2023年以降、そのバブルは崩壊し、多くのモデルが定価割れ、さらには大幅な値下がりに見舞われた。

特に金無垢モデルはステンレススチールモデルに比べて流通量が限られる一方、購入層も限定されるため、中古市場での流動性が低い。需要が減退すると価格が大きく下落しやすい構造がある。こうした中古価格の下落と金価格の高騰が同時進行した結果、「時計を売るより溶かして金を取り出した方が得」という状況が生まれたのである。

実際に溶かす業者と手法

報道によれば、欧米を中心に貴金属精錬業者が高級時計の買取と溶解を積極的に行っている。時計のケースやブレスレットを高温で溶解し、金を精錬して地金として再販売するという流れである。時計愛好家やコレクターにとっては「文化的な損失」「工芸品の破壊」として批判の声も上がっているが、経済合理性の観点からは、中古市場で買い手がつかない金無垢時計を溶解するインセンティブは極めて強い。

ベトナムにおいても金への関心は極めて高い。ベトナムは世界有数の金消費国であり、国民の間で金を資産保全手段として保有する文化が根強く残っている。ベトナム国内の金価格は国際価格に連動しつつも、国内需給や規制の影響でプレミアムが乗ることが多く、SJC金地金(ベトナム国営のサイゴンジュエリー社が製造する公認金地金)の価格は国際価格を大きく上回る水準で推移してきた。

ベトナムの金市場との関連性

ベトナム政府は近年、金市場の安定化を図るため、SJC金地金の独占的地位の見直しや、金の輸入規制の緩和を段階的に進めている。2024年にはベトナム国家銀行(中央銀行)が金地金の入札を再開し、国内価格と国際価格の乖離縮小に動いた経緯がある。それでもなお、ベトナム国内の金価格は国際水準より高い傾向が続いており、金に対する国民の旺盛な需要を反映している。

こうした環境下で、高級時計を溶かして金を取り出すという行為がベトナム国内でも経済的に成立しうる素地は十分にある。ベトナムでは近年、富裕層の拡大に伴い高級時計市場も成長してきたが、中古市場はまだ未成熟であり、適正な価格で売却するルートが限られている。金含有価値が中古売却価格を上回るケースがあれば、溶解による金回収が合理的な選択肢となりうる。

投資家・ビジネス視点の考察

このニュースは、金価格の高騰が従来の金融市場や商品市場を超えて、高級消費財の市場構造にまで影響を及ぼしていることを如実に示している。投資家にとっては、以下の点が注目に値する。

1. 金関連銘柄への追い風:ベトナム株式市場(ホーチミン証券取引所)において、金・宝飾品関連企業であるPNJ(フーニュアンジュエリー、ティッカー:PNJ)は金価格上昇の恩恵を受けやすい代表的な銘柄である。金の素材価値が上昇する局面では、PNJの売上高・利益率の改善が期待される。ただし、金価格のボラティリティが高まると消費者の購買行動が変化するリスクもあり、単純な追い風とは言い切れない。

2. 高級品市場の構造変化:高級時計の溶解が広がれば、スイス時計産業全体のブランド価値に影響を与える可能性がある。ベトナムの富裕層向けリテール事業を展開する企業にとっても、高級品の資産価値に対する消費者の見方が変化するリスク要因となりうる。

3. ベトナムの金政策との関連:ベトナム政府が金市場の自由化・透明化を進める中で、金の供給源が多様化する流れはポジティブに働く可能性がある。国内金価格のプレミアム縮小は、マクロ経済の安定やドン相場の安定にも寄与しうる。

4. FTSE新興市場指数への格上げとの間接的関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、海外資金の大量流入を通じてベトナム株式市場全体を押し上げる可能性がある。金市場の安定化や規制緩和は、ベトナムの金融市場全体の成熟度を示す一つの指標であり、FTSE格上げの判断材料としてもプラスに作用するだろう。

金価格の高騰がもたらす波及効果は、今後もさまざまな分野で顕在化していくと見られる。ベトナム経済・投資に関心を持つ読者にとっても、金市場の動向は為替(ドン相場)や金融政策、消費動向に直結するテーマであり、引き続き注視が必要である。


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出典: 元記事(VnExpress)

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