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米国や欧州への輸出実績を持つベトナムの地方特産品が、肝心の国内近代小売(スーパーマーケットやコンビニなど)への参入に依然として苦戦している。海外の厳格な品質基準をクリアしながら、なぜ自国の棚を確保できないのか——その構造的な問題が改めて浮き彫りになっている。
海外では売れるのに国内スーパーに並ばない「逆転現象」
ベトナムは農業大国であり、コーヒー、カシューナッツ、コショウ、水産物、果物など多くの農産品で世界有数の輸出量を誇る。近年はOCOP(One Commune One Product=「一村一品」運動)プログラムの推進により、各地方の特産品がブランド化・商品化される動きが加速してきた。実際、米国やEUの食品安全基準をクリアし、海外の小売チェーンに並ぶ商品も少なくない。
ところが、こうした特産品の多くは、国内のイオンモール、ウィンマート(WinMart、旧ビンマート)、コープマート(Co.opmart)、バッハホアサイン(Bach Hoa Xanh、モバイルワールド傘下の食品スーパー)といった近代的な小売チェーンの棚に並べることができていない。伝統的な市場や路上の露店、あるいはオンライン直販に頼らざるを得ない生産者が大半を占めるのが実情である。
参入を阻む「3つの壁」
特産品が近代流通に入れない背景には、複数の構造的な要因がある。
第一に、パッケージングとブランディングの問題である。スーパーマーケットの棚に並ぶには、バーコード、成分表示、栄養成分表、賞味期限、トレーサビリティ情報など、厳格な包装・表示基準を満たす必要がある。多くの零細生産者にとって、こうした包装設備への投資や認証取得のコストは大きな負担となる。海外向け輸出は商社やバイヤーが仲介して基準対応を代行するケースが多いが、国内市場では生産者自身が対応しなければならないことが多い。
第二に、安定供給とロジスティクスの課題がある。近代小売チェーンは、年間を通じた安定的な供給量と品質の均一性を求める。しかし、ベトナムの地方特産品は季節性が高く、個人農家や小規模な協同組合が生産していることが多いため、量・質ともに安定供給が難しい。コールドチェーン(低温物流網)の未整備も、生鮮品や加工食品の流通を困難にしている要因の一つである。
第三に、小売チェーン側の参入障壁が高い。大手スーパーでは、棚の確保に「入場料」(リスティングフィー)や販促費の負担を求められることがある。さらに、支払いサイト(入金までの期間)が長く、零細事業者のキャッシュフローを圧迫する。大手メーカーとの価格競争にさらされることも、小規模な特産品ブランドには不利に働く。
OCOP運動の成果と限界
ベトナム政府は2018年からOCOPプログラムを本格化させ、地方の特産品に星評価(1〜5つ星)を付与して品質の可視化を進めてきた。2025年末時点で全国のOCOP認定商品は1万点を超え、各省の展示会やECプラットフォームでの販売も拡大している。しかし、OCOP認定を受けたからといって自動的にスーパーの棚が確保されるわけではない。認定はあくまで品質の「入口」であり、近代流通への参入には包装、物流、営業力という別次元のハードルが残る。
日本の「一村一品運動」は大分県の平松守彦元知事が1979年に提唱し、アジア各国に広がったモデルである。ベトナムのOCOPもこの流れを汲んでいるが、日本では「道の駅」やふるさと納税といった独自の流通チャネルが地方特産品の販路を支えた。ベトナムでは、こうした「中間的な流通プラットフォーム」がまだ十分に育っていない点が、課題をより深刻にしている。
ECプラットフォームは救世主になるか
一方で、Shopee(ショッピー)、Lazada(ラザダ)、TikTok Shopといったeコマースプラットフォームは、特産品生産者にとって新たな販路として急速に存在感を増している。ライブコマースを活用して生産者が直接消費者に語りかけるスタイルは、ベトナムの若年層を中心に支持を集めている。ただし、EC経由の販売では、配送コストの負担や返品リスク、プラットフォーム手数料が利益を圧迫するという別の課題もある。スーパーの棚に並ぶことで得られる「ブランドの信頼性」はECだけでは代替しきれないのが現状である。
投資家・ビジネス視点の考察
この問題は、ベトナムの小売セクターと農業・食品加工セクター双方に影響を及ぼすテーマである。いくつかの視点から考察したい。
小売銘柄への示唆:ウィンマートを傘下に持つマサングループ(Masan Group、ホーチミン証券取引所:MSN)や、モバイルワールド(MWG)傘下のバッハホアサインは、品揃えの差別化戦略として地方特産品の取り込みを模索している。特にマサンは「消費者プラットフォーム」構想を掲げており、PB(プライベートブランド)商品だけでなく、地方の優良特産品をキュレーションして棚に並べることで来店動機を高める余地がある。こうした取り組みが実現すれば、同社の既存店売上高(SSS)改善に寄与し得る。
日本企業への影響:イオンベトナム(イオングループのベトナム法人)は、ベトナム国内でイオンモールやイオンスーパーを展開しており、地方特産品の調達・販売に関するノウハウを活かせるポジションにある。日本式の品質管理や産直モデルをベトナムの特産品サプライチェーンに適用するビジネスチャンスは大きい。また、コールドチェーンや食品包装の分野で日本企業の技術力が活きる市場でもある。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、消費関連セクターへの海外資金流入を促進する可能性がある。格上げが実現すれば、小売・食品セクターの上場企業に対する機関投資家の関心が高まり、特産品の流通改革に取り組む企業が注目される展開も考えられる。
マクロトレンドとの位置づけ:ベトナムの都市部では中間層の拡大に伴い、近代小売の浸透率が年々上昇している。しかし、全国ベースではいまだに伝統的市場のシェアが大きく、近代小売比率は約30%前後にとどまるとされる。この「近代化の過渡期」において、地方特産品と近代流通をいかに結びつけるかは、ベトナムの内需拡大の質を左右する重要なテーマである。政府が流通インフラ整備やOCOPプログラムの高度化に本腰を入れれば、農業・食品セクター全体の底上げにつながるだろう。
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出典: 元記事(VnExpress)












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