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ベトナムのオンラインファッション市場が二桁成長を持続——EC時代の勝者と残る課題を読む

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ベトナムのオンラインファッション(衣料品・靴)市場の売上高が二桁成長を続けている。EC(電子商取引)チャネルを活用して急成長を遂げるブランドが出現する一方、業界全体としてはオペレーションの最適化とコスト管理という構造的な課題に直面しており、勝ち残りの条件が鮮明になりつつある。

目次

オンラインファッションの成長が止まらない背景

ベトナムは人口約1億人、平均年齢が30歳前後と若い労働力を抱え、スマートフォン普及率は70%を超える。こうした人口構成とデジタルインフラの急速な整備が、EC市場全体を底上げしてきた。なかでもファッション分野は、ベトナムのECプラットフォーム上で最も取引ボリュームが大きいカテゴリーの一つであり、衣料品と靴の売上高は年率二桁の伸びを継続している。

この成長を支える要因は複合的である。まず、ショッピー(Shopee)、ラザダ(Lazada)、ティックトックショップ(TikTok Shop)といった大手プラットフォームが、ライブコマースやフラッシュセールなどの販促機能を積極的に強化し、消費者の購買体験を進化させている。特にTikTok Shopは短尺動画とライブ配信を組み合わせた「エンタメ型コマース」でZ世代を取り込み、ファッション領域で存在感を急速に高めている。

さらに、コロナ禍を契機にオンラインでの衣料品購入に対する心理的ハードルが大幅に下がったことも大きい。試着ができないという弱点は、無料返品ポリシーやサイズガイドの充実、レビュー・動画コンテンツの拡充によって徐々に克服されつつある。

EC活用で「ブレイクスルー」を果たすブランドたち

オンライン売上の急伸は、一部のベトナム国内ブランドにとって飛躍のチャンスとなっている。従来、ベトナムのファッション市場は実店舗網を持つ大手やグローバルファストファッション(ZARA、H&M、ユニクロなど)が優位に立っていたが、EC時代に入り、自社ブランドをSNSとオンラインモールで直接消費者に届けるD2C(Direct to Consumer)モデルが台頭した。店舗家賃や中間マージンを抑えられるため、比較的小規模な企業でもブランド認知と売上を同時に拡大しやすい環境が生まれている。

とりわけ、ライブコマースを巧みに活用するブランドは、1回の配信で数千点の受注を獲得するケースもあり、従来の実店舗では考えられなかったスピードで成長軌道に乗っている。ベトナムではインフルエンサーやKOL(Key Opinion Leader)を起用したマーケティングが極めて有効であり、ファッション分野ではこのトレンドが顕著である。

それでも残る「オペレーション最適化」と「コスト」の壁

しかし、業界全体を俯瞰すると、楽観一辺倒ではいられない。売上が伸びても利益が伴わないという構造的な課題が根深く残っている。

第一に、プラットフォーム手数料と広告費の上昇である。Shopee、Lazada、TikTok Shopなど主要ECモールでは、出店者から徴収する手数料率が年々引き上げられている。加えて、検索上位表示やライブ配信枠の確保にかかる広告コストも増大しており、売上総利益率(グロスマージン)を圧迫する要因となっている。

第二に、物流コストの問題がある。ベトナムは南北に約1,650キロメートルと細長い国土を持ち、ハノイ(北部)とホーチミン市(南部)という二大消費地が地理的に離れている。全国配送に対応するには複数の倉庫拠点が必要であり、在庫管理と配送効率の最適化は中小ブランドにとって大きな負担となる。さらに、ファッション商品は返品率が他カテゴリーと比較して高い傾向にあり、リバースロジスティクス(返品物流)のコストが利益を侵食する。

第三に、価格競争の激化がある。オンラインでは価格比較が容易であるため、消費者はより安い商品に流れやすい。特にSheinやTemuといった中国発の越境ECプラットフォームがベトナム市場にも浸透しつつあり、超低価格帯での競争が激しさを増している。ベトナム国内ブランドにとっては、単なる価格勝負ではなく、ブランド価値やデザイン性で差別化を図る戦略が不可欠となっている。

ベトナムのEC市場を取り巻くマクロ環境

ベトナム政府はデジタル経済の推進を国家戦略の柱に据えており、2025年までにGDP比20%のデジタル経済比率を目標としてきた。EC関連の法整備やデジタル決済インフラの拡充も進んでおり、モバイルウォレット(MoMo、ZaloPayなど)やQRコード決済の普及がオンラインショッピングの利便性をさらに高めている。

一方で、政府は越境ECに対する課税強化の方針も打ち出しており、低額輸入品への関税免除廃止や付加価値税(VAT)の適用拡大が検討されている。これが実施されれば、海外発の超低価格ファッション商品の流入にブレーキがかかり、ベトナム国内ブランドにとっては追い風となる可能性がある。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場への影響:オンラインファッション市場の拡大は、EC関連銘柄やデジタルマーケティング関連企業にとってポジティブな材料である。ベトナム証券取引所に上場する物流企業(ジェミナイ・エクスプレスやベトナムポストなど)、決済関連企業にも間接的な恩恵が期待される。ただし、ファッション専業のEC企業で大型上場銘柄は限られており、直接的な投資対象としては、むしろプラットフォーム側やインフラ提供企業に注目すべきである。

日本企業への示唆:ユニクロ(ファーストリテイリング)は2019年にベトナムに進出し、実店舗を拡大してきたが、オンラインチャネルの強化も進めている。ベトナム市場でのEC売上比率の上昇は、日本のアパレル企業がベトナム進出・拡大を検討する上で、店舗投資とオンライン投資のバランスを再考する重要な指標となる。また、日本のEC物流企業やSaaS型EC支援企業にとっては、ベトナムのファッションEC事業者向けにオペレーション効率化ソリューションを提供する商機が広がっている。

FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、ベトナム株式市場全体への海外資金流入を加速させる可能性がある。消費関連セクターは海外投資家が好む成長テーマの一つであり、EC市場の二桁成長はベトナムの「消費ストーリー」を裏付けるデータポイントとして、格上げ後の投資資金を呼び込む材料となり得る。

ベトナム経済全体における位置づけ:ベトナムは製造業の輸出基地としてのイメージが強いが、1億人の内需市場、とりわけデジタルネイティブ世代の消費行動の変化は、中長期的に国内消費セクターの成長を牽引する大きな構造変化である。オンラインファッション市場の拡大は、その変化の象徴的な事例であり、ベトナム経済が「世界の工場」から「成長する消費市場」へとステージを移行しつつあることを示している。


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出典: 元記事

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