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ベトナム薬局チェーン戦国時代——ロンチャウが市場を席巻できた「本当の理由」

こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。

ハノイで暮らして13年になりますが、街の変化で最も実感するのが「薬局の変わりようだ」と思います。以前は薬の保管状態が怪しい個人薬局ばかりで、「本当にこの薬、大丈夫?」と心配しながら購入していたのですが、最近ではガラス張りの清潔なチェーン薬局があちこちに立ち並んでいます。実は、この「街の景色の変化」こそが、今回お話しするテーマの核心なんです。

ベトナムの医薬品小売市場が大きな転換点を迎えています。そのただ中で、FPTデジタルリテール株式会社(証券コード:FRT)傘下のロンチャウが驚くべき成長を遂げています。今回は、その背景と今後の展開について、ハノイ在住の視点を交えながら整理していきます。

目次

市場の「19%」という数字が意味すること

まず押さえておきたいのが、ベトナムの医薬品市場の現状です。2025年の市場規模はワクチンを除いて約214兆VND(日本円で約1兆2,840億円相当)に達すると予測されています。

ところが、現代的な小売チャネルが占める割合はわずか約19%にとどまっています。

この数字をどう読むか、ちょっと考えてみてください。残りの約81%は依然として個人経営の薬局や小規模店舗が担っているわけです。これは裏を返せば、近代的なチェーン薬局にとっての「未開拓領域」がまだ山ほど残っているということを意味します。日本のドラッグストア業界がほぼ寡占化されているのとは対照的で、ベトナム市場には「まだ走り続けられる余地」が十分にあるんです。

重要なのは、この市場構造の変化を後押しする「制度的な圧力」があることです。経営管理の透明性要件、医薬品のトレーサビリティ規制、税務申告の厳格化——こうした規制強化の波が、小規模薬局の淘汰を加速させています。規制が厳しくなるほど、体力のある大手チェーンが有利になる。これは市場統合が起きる際の典型的なパターンです。

ロンチャウの「5%→25%」という躍進の正体

ロンチャウの薬局チャネルにおける市場シェアは、2021年の約5%から2025年には約25%にまで拡大する見込みです。わずか4年で5倍というのは、ただ「頑張った」という話では説明がつきません。

この成長には2つの要因が重なっています。

1つ目は、市場がまだ細分化されていた「黄金期」に集中的に出店したことです。競合がまだ「街中の薬局」だった頃に、標準化された品質と透明な価格表示を武器に一気に拠点を広げました。先行者利益を最大限に活かした戦略と言えます。

2つ目は、消費者行動の変化を的確に捉えたことです。ベトナムの中間層が拡大するにつれ、「少し高くても信頼できる薬局で買いたい」という意識が広がっています。私自身、ハノイのタイ湖エリア周辺を歩いていても、若い世代がロンチャウの店舗に自然と吸い込まれていく光景をよく見かけます。「ブランドとしての薬局」という概念が、ベトナムで初めて根付いてきた感覚があります。

「赤字→黒字→利益率2.1%」の軌跡が示すもの

ここが個人的に最も注目しているポイントです。

ロンチャウは2021年には損益分岐点の水準にありました。それが2025年には純利益率が約2.1%に達する見込みとされています。

「2.1%ってずいぶん低いな」と思った方もいるかもしれません。でも、薬局・小売業の文脈で考えると、これはとても意義深い数字です。急速な店舗拡大を続けながら、賃料・人件費・在庫コストを吸収した上での黒字化なのですから。「大きくなりながら効率化も進んでいる」という証拠であり、スケールメリットが実際に機能し始めている兆候です。

そして次のステップとして注目されるのが、2026年の業績予測です。Vietcapによると、ロンチャウの2026年の売上高は前年比30%増の44兆4,570億VND(約2,667億円相当)に達すると予測されています。さらに少数株主持分控除後の純利益は1兆480億VND(約62.9億円相当)と、2025年比で47%増が見込まれています。

成長と利益率改善が同時進行しているわけで、これはビジネスモデルの「離陸」を示す典型的なサインです。

ワクチン事業という「次の柱」

もう一つ見逃せないのが、ロンチャウのワクチン接種サービスへの進出です。

現状では薬局が収益の主体であり、ワクチン事業はまだ補完的な位置づけですが、方向性は明確です。医薬品を売るだけの「薬局」から、予防接種から健康相談まで提供する「ヘルスケアの窓口」へ——この転換が実現すれば、顧客との接点は格段に増え、従来の薬局ビジネスとは異なる収益構造が生まれます。

2026年には約400店舗の新規出店が計画されているとも伝えられており、これは当初の予測を上回るペースです。店舗数の拡大とヘルスケアサービスの深化が組み合わさることで、ロンチャウの競争優位はさらに強固になっていく可能性があります。

ただし、ここは一点付け加えておきたいのですが、競争が終わったわけではありません。ファーマシティやアンカンといった他のチェーンも、モデルの最適化と効率化を進めています。市場統合が進む局面では、「店舗数」よりも「オペレーション力」が勝敗を分けることになるでしょう。

ハノイで実感する「薬局の進化」

少し脱線しますが、先日タイ湖近くのロンチャウに立ち寄った時のことです。店員が「この薬は空腹時に飲んでいいですか?」というこちらの質問に、すらすらと丁寧に答えてくれました。以前の個人薬局では、こういったやり取りはほぼ期待できませんでした。

「薬を買うだけの場所」から「健康について相談できる場所」へ。この変化は数字の上だけでなく、現地の日常生活の中にも確かに現れています。

そういうことなんです。ロンチャウの強さは、単に出店ペースが速いとか、資本力があるとかいった話だけでなく、消費者の「薬局に求めること」が変わるタイミングに、ちょうど乗っているということ。市場の変化と企業の成長方向がピタリと一致している状態——これが今のFRTの本質的な強みだと、ハノイの街を歩きながら実感しています。

投資判断はもちろんご自身の目でデータを確かめた上で、ご自身の責任でお願いします。ただ、ベトナムの医薬品小売市場の「81%の余白」と、ロンチャウが示す成長の軌跡は、ベトナム株に関心を持つ方にとって頭に入れておく価値のある情報だと思っています。

いかがでしたでしょうか。今回のFRT・ロンチャウの動向について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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本記事で提供される情報は、執筆者の個人的な分析と見解に基づくものであり、投資判断の最終的な決定は読者ご自身の責任において行ってください。ベトナム株式投資は価格変動が大きく、元本割れのリスクを伴います。

本記事の情報の正確性、完全性、最新性については最大限の注意を払っていますが、保証するものではありません。本記事の情報に基づいて行われた投資による損失や損害について、執筆者は一切の責任を負いません。

投資判断に際しては、金融商品取引業の登録を受けた専門家への相談を強く推奨いたします。本記事は法的、税務的、財務的なアドバイスを提供するものではありません。

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