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ベトナムが電力計画を緊急見直し──EVと高速鉄道が変える電力需要の構造

こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。

ベトナム政府がエネルギー政策で動いています。産業貿易省(商工省)が、改訂版「電力開発計画VIII」の見直し・更新プロセスを支援するため、全国の各省・市人民委員会に対して緊急文書を発行しました。その内容が、単なる電力インフラの話にとどまらず、ベトナムという国が今後10年でどんな姿に変わろうとしているかを如実に示していたので、今日はここを深掘りしてみたいと思います。

目次

「電力開発計画VIII」とは何か

ベトナムには「電力開発計画(PDPと略されることが多い)」というマスタープランがあります。国全体の発電所・送電網の整備方針を定めるもので、2021年から2030年を対象期間とし、さらに2050年までの展望も含む長期計画です。

この計画は一度策定したら終わりではなく、経済情勢や技術革新に応じて定期的に見直されます。今回、産業貿易省が「緊急文書」を発行して各地方に情報提供を求めた背景には、計画策定当初には想定していなかった「新しい電力需要」が急速に膨らんできたという事情があります。

では、その「新しい需要」とは具体的に何か。発行された文書の内容を見ると、4つのキーワードが浮かび上がってきます。

電気自動車(EV)の充電ステーション、地下鉄路線、高速鉄道、そしてTODモデル(Transit-Oriented Development、交通結節点を核とした都市開発)です。

これだけを並べると、「ああ、インフラの話ね」で終わってしまいそうなんですが、実はこれ、ベトナムの電力需要の構造そのものが変わりはじめているサインなんです。そういうことなんです。

ハノイで感じた「EVの波」

少し脱線させてください。

ハノイに暮らして13年になりますが、ここ2〜3年で街の雰囲気が明らかに変わってきました。以前は「バイク王国」の代名詞だったハノイの道路に、VinFastのEVバイクとEV乗用車が急増しています。タイ湖(Tay Ho)周辺を走っていても、緑色のVinFastプレートを見ない日はない、というくらいです。

面白いのは、VinFastのEV充電ステーションが至るところに設置されていること。ショッピングモール、アパートの地下駐車場、ガソリンスタンドの一角。数年前には「ベトナムでEVなんて普及するの?」と言われていたのが嘘のように、インフラが先行して整備されています。

今回の産業貿易省の動きは、まさにこの現場の変化を「国家の電力計画」に反映させる作業なんです。EVが普及すれば充電インフラが増える、充電インフラが増えれば電力需要が増える、その需要増をどう賄うかを今から設計しておく必要がある。当たり前のことですが、これを省レベルでの統計収集から始めているというのが今回のポイントです。

北部電力不足への対応が急務

今回の文書で注目すべきもう一点は、「北部地域における迅速な実施が見込まれるプロジェクトを優先的に検討する」という記述です。

クアン・チ省以北の各省については、2024年電力法と政令56/2025/ND-CPに基づいた基準の徹底見直しも求められており、特に2027年〜2028年の期間内に運用開始できるプロジェクトへの注力が明示されています。

これはベトナム北部、特にハノイを中心とした製造業集積エリアでの電力需要が逼迫しつつある現実を反映しています。台湾・韓国・日本のメーカーが半導体や電子部品の工場を北部に集中させている中で、安定した電力供給は外資誘致の大前提になっています。

電力が足りなければ工場は動かない。それほど単純な話なのに、計画と現実がズレてしまったときの対応に時間がかかるのが国家インフラの難しさです。今回の緊急文書は、そのズレを補正するための動きと見ていいでしょう。

データセンター需要も視野に

今回の文書には「データセンターのリスト(電力需要、所在地、運用スケジュール、電力供給計画を含む)の作成」という記述もあります。

AI需要の拡大に伴い、データセンターはグローバルで急増しています。ベトナムも例外ではなく、外資系クラウドプロバイダーの進出やベトナム国内IT企業の設備投資が続いています。データセンターは24時間365日稼働するため、電力消費量は一般の工場と比較にならないほど大きい。これを国の電力計画に組み込んでいないと、数年後に深刻な供給不足が起きる可能性があります。

産業貿易省がこれを「地方への調査項目」に含めたということは、ベトナム政府がデータセンターを将来の主要電力消費者として正式に位置づけ始めたということです。

石炭火力発電所の扱い

少し注意が必要な点もあります。今回の文書では「石炭火力発電所の増設が提案される場合、地方自治体は用地配分、燃料供給、技術、排ガス処理、CO2貯留の実現可能性を明確に報告する必要がある」と記されています。

再生可能エネルギーへの移行を進める一方で、電力需要の急増に対応するためのベースロード電源として石炭が完全には排除されていない現実があります。この点は、ESG投資の観点からベトナムを評価する際に意識しておく必要があります。

石炭を増やすのか、再生可能エネルギーを加速させるのか、あるいはその両方なのか。今後の追加発表に注目したいところです。

ベトナム株投資への示唆

今回のニュースを投資の観点から整理すると、いくつかの動向が見えてきます。

まず電力インフラ整備の加速という文脈では、送電網や変電所の整備に携わるベトナムの建設・エンジニアリング系企業の受注機会が増える可能性があります。

次にEV関連では、充電インフラの拡充という方向性はVinFast(電気自動車)やVinGroupの関連事業にとってポジティブな政策環境です。

高速鉄道については、現在議論が進んでいる南北高速鉄道プロジェクトとの連動も考えられ、沿線不動産やインフラ企業への影響が今後出てくるかもしれません。

データセンター関連では、電力確保がクリアできれば、クラウド・IT系企業の投資環境が整ってくる方向です。

ただし、これらはあくまで政策の方向性から読み取れる「可能性」であり、実際の投資判断は個別企業の財務状況や市場環境を踏まえてご自身でご検討ください。

そういうことなんです。ベトナムのエネルギー政策は、単に「電気を増やす話」ではなく、EVから高速鉄道、データセンターまで——産業構造の変化を国家レベルで設計し直す壮大なプロジェクトなんです。ハノイで毎日それを肌で感じながら、この国の変化を追いかけています。

いかがでしたでしょうか。今回のベトナム電力開発計画の見直しについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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