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【ベトナム初】サムスンが再エネ直接購入契約を締結——電力市場改革が投資環境を変える

こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。

2026年6月1日、ベトナムのエネルギー市場でひとつの歴史が刻まれました。

サムスン電子ベトナム・タイグエン社(SEVT)が、ベトナム初のDPPA(直接電力購入契約)制度活用企業として正式に認定されたのです。そして電力を供給するタイニン省のドゥックフエ2太陽光発電所も、国家送電網を通じた競争卸売電力市場への初参加ユニットとなりました。2つの「ベトナム初」が同じ日に生まれた、そういう日でした。

DPPAというのは、平たく言えば「再生可能エネルギー発電所と大口企業が、電力会社を介さずに直接電力取引できる仕組み」です。日本でもグリーン電力調達の文脈で似た議論はありますが、ベトナムでは2025年3月の政令第57/2025/ND-CP号によって正式に制度が整い、今回初めて実際の取引が動いたことになります。

SEVTが確保できる電力量は年間約70GWh。これは約1万7000世帯への供給に相当する規模です。同時に年間約4万6000トンのCO₂排出削減が見込まれています。数字だけ見ても、これがサムスン一社の工場向けの話だということに少し驚かされます。ベトナム北部タイグエン省のSEVT工場がいかに巨大な電力消費体であるかを改めて実感する数字です。

ここで少し脱線させてください。私がハノイに来た13年前、ベトナムの電力事情は正直なところ「計画停電との付き合い方」を現地スタッフに教えてもらうことから始まるようなレベルでした。ハノイの夏場はエアコンが一斉に動く時期に電圧が不安定になることも珍しくなく、精密機器を扱う外資系工場にとっては電力の安定供給は死活問題だったはずです。それが今や、国家送電網を通じた競争電力市場が整備され、再エネ直接契約の第1号取引が生まれる国になった。この変化のスピードには、やはり感慨があります。

話を戻すと、今回のDPPA第1号がサムスンであったことには、純粋な偶然以上の意味があると私は思っています。サムスンはベトナム最大のFDI企業であり、ベトナムの輸出総額の2割超を単独で稼ぐ存在です。その企業がグリーン電力調達の仕組みを真っ先に使ったということは、DPPA制度に対する「お墨付き」を与えた意味合いがあります。後に続くIntel、LG、フォックスコン、そして日系メーカー各社も、今頃担当者が社内稟議を走らせているのではないかと想像します。

投資家の視点から見ると、この動きはいくつかの方向に波及します。再エネ発電事業者にとってはDPPA案件の獲得が大口・長期収益の柱になりえます。電力インフラの整備・運用に関わる企業群も間接的な恩恵を受けるでしょう。そして何より、外資製造業のベトナム残留・追加投資の意思決定において「グリーン電力を使えるか」という問いが今後ますます重要な要素になっていく、そういう流れです。欧州のサプライチェーン規制(CSRD)やScope 3排出量の開示義務化が進む中、工場から排出されるCO₂の削減は製造業にとって経営上の課題です。ベトナムがその課題に応えられる国になりつつある、ということをこのニュースは示しています。

そういうことなんです。

今回のDPPA第1号取引は単なる「エネルギー政策のニュース」ではなく、ベトナムが外資製造業の長期的な投資先として選ばれ続けるための条件整備が着実に進んでいることの証左です。製造業が集積し、電力市場が整備され、グリーン電力調達の仕組みが動き出す。このひとつひとつの積み上げが、ベトナム株式市場を動かす長期的な力になっていきます。

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※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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