【2026年最新版】ベトナムの人件費は日本の何分の1?推移・職種別・社会保険まで一次資料で徹底比較

こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。

「ベトナムは人件費が安い」という話は昔からよく聞きますが、2026年に入った今でも、その認識は本当に正しいのでしょうか。ざっくり「日本より安い」で止まっている人が多いと思いますが、どれくらい安いのか、どんな職種でも安いのか、将来も安いままなのか、という問いに答えられる人はそう多くないはずです。

私はハノイに13年住んでいます。この街で日々、ベトナム人スタッフの給与交渉を見てきました。正直に言うと、「ベトナムの人件費は安い」というイメージは、すでに半分は過去のものです。一方で「まだ大きな差がある」のも事実です。今回はJETRO・ベトナム統計総局・PwC・ITviecなどの一次資料を使って、この問いに正面から答えます。

(※この記事は投資の推奨を目的としたものではありません。情報提供として整理しています。)

目次

結論から言うと:差は「9倍」だが職種によっては「3倍」

まず全体像から整理します。2026年第1四半期のベトナム労働者の平均月額賃金はベトナム統計総局(GSO)のデータで約901万VND、日本円換算でおよそ4万2,000〜4万5,000円です。一方、日本の製造業月額賃金(2026年2月)は約345,695円。単純計算で7〜9倍の差があります。

ただし、これはあくまで「全職種平均」の話です。後述するとおり、IT上位職や管理職になると差は急速に縮まります。「ベトナム人件費は安い」は今も正しいですが、「全ての職種で圧倒的に安い」は2026年には通用しない認識です。

※ 以下、金額はVND(ベトナムドン)で表記し、円換算は1VND=0.006円(参考レート)を使用します。


ベトナム最低賃金の推移(2018〜2026年)

ベトナムの最低賃金は地域によって4段階で設定されています。最も高い地域1(ハノイ・ホーチミン市の都市部)の推移をみると次のとおりです。

2018年は398万VND(約2万4,000円)、2020年は442万VNDで、コロナの影響で2021年は据え置き。2022年7月に468万VNDへ引き上げ、2023年は横ばい、2024年7月に496万VNDへ上昇、そして2026年1月からは政令293号により531万VND(約31,800円)となりました。2018年から2026年の8年間で、地域1の最低賃金は約33%上昇しています。

地域4(農村部)は2026年1月時点で370万VNDです。ハノイ・ホーチミンとの差は1.4倍強ありますが、農村部近郊でも外資系工場の集積が進むにつれて、地方の賃金水準も底上げされています。

下記の地域別最低賃金推移のグラフを参照してください。

重要なのは引き上げのペースです。JETROの2024年調査によると、ベトナム製造業の賃上げ率は2024年実績で5.5%、2025年見通しも5.2%と、中国(3.6%)やタイ(3.3%)を大きく上回っています。「水準は低いが上昇テンポは速い」、これがベトナムの現状です。


アジア主要国との製造業人件費比較

JETROが2024年に実施した日系製造業の調査で、各国の製造ワーカー月額基本給平均(USD)が明らかになっています。

ベトナムは302ドルで、中国654ドル、タイ437ドル、インドネシア384ドルと比べると、まだ明確に低い水準です。エンジニアクラスを見ても、ベトナム598ドルに対して中国1,020ドル、タイ917ドルで、ベトナムの優位性は技術職でも維持されています。

ただし、賃上げ率では逆転しています。同じJETRO調査でベトナムの賃上げ率5.5%は、中国3.6%、タイ3.4%、インドネシア4.3%より高く、「今は安いが、他国より速く高くなっている」という実態が数字で見えます。

年間換算でベトナムのワーカー年額は5,052ドル、中国12,068ドルと2倍以上の差がありますから、製造拠点としての優位性はまだ十分に残っています。この差が埋まるには、今のペースでも15〜20年かかります。


職種別・役職別の給与相場(2024年)

「人件費が安いのは製造ライン工だけ」というのが、正直なところです。職種が上がるほど、日本との差は縮まります。

製造部門の役職別月収レンジ(外資系・2024年)をみると、生産マネージャーがホーチミン市で5,500万〜1億VND(約33万〜60万円)、生産スーパーバイザーが2,500万〜3,800万VND(約15万〜23万円)です。工場管理責任者クラスは8,000万〜1億4,000万VND(約48万〜84万円)になることもあります。

一般職・事務系では、プロジェクト管理担当のインターミディエイトクラスが2,541万VND(約15万3,000円)前後、エグゼクティブアシスタントのシニアクラスが5,082万VND(約30万5,000円)程度です。


IT・ソフトウェア開発の給与相場(2024〜2025年)

ITviecが2024年9月〜10月に2,324人を対象に実施した調査によると、ベトナムのITエンジニアの給与中央値は次のとおりです。

バックエンドエンジニア(経験6年)が中央値3,560万VND(約21万3,000円)、フロントエンドが3,050万VND(約18万3,000円)、DevOpsエンジニアが4,360万VND(約26万2,000円)、Data Engineerが4,410万VND(約26万5,000円)、Tech Leadが5,800万VND(約34万8,000円)、Solution Architectが7,395万VND(約44万4,000円)、CTOクラスは9,600万VND(約57万6,000円)となっています。

日本のソフトウェアエンジニアの平均年収は500万〜800万円程度ですから、月換算で40万〜67万円です。バックエンド・フロントエンドクラスでは日本と比べて2〜3倍の差があり、CTOレベルになるとほぼ同等に近づいてきます。「IT人材は安く使える」という前提は、もはやシニア層には成立しないと考えたほうがよいです。

私がハノイで現地のIT企業の人たちと話していて実感するのは、優秀なシニアエンジニアの争奪戦がすさまじいということです。日系・韓国系・欧米系が同じ人材を取り合っている。「バングラデシュよりはまだ高いが、ベトナムのIT人材はもう安売りしていない」という雰囲気が定着しつつあります。


雇用主が実際に負担する「総人件費」の計算

給与の数字だけで人件費を語っては不十分です。ベトナムでは雇用主が負担する法定費用が、実質的なコストを大きく押し上げます。

PwCの2024年版資料によると、ベトナム人従業員を雇用した場合の雇用主側の法定負担率は次のとおりです。

社会保険(退職・傷病・出産等)が17.5%、健康保険が3.0%、失業保険が1.0%で、法定合計は21.5%です。これに加えて労働組合基金(会社負担)が2.0%となり、合計23.5%前後が給与に上乗せされるコストになります。

従業員側は社会保険8.0%、健康保険1.5%、失業保険1.0%の計10.5%が給与から天引きされます。

つまり、月額1,000万VND(約6万円)のスタッフを1人雇う場合、会社が実際に負担するのは法定コスト込みで約1,235万VND(約7万4,000円)です。給与だけで進出コストを試算すると、後から大きく外れることになります。

なお外国人従業員の場合は失業保険が対象外となるため、雇用主負担は20.5%(労組基金除く)です。


2026〜2030年の見通し:今後もベトナムは安いままか

世界銀行はベトナムの経済成長率を2026年6.3%、2027年7.6%と見込んでいます。成長が続けば物価が上がり、賃金も上がります。ILOの国別プログラムでも非公式雇用のフォーマル化が推進されており、社会保険加入の拡大が法定コストのさらなる上昇につながる可能性があります。

シナリオを整理すると、単純製造は引き続き低コスト優位が残ります。中国代替の製造拠点としてのポジションは2030年まで有効でしょう。一方で熟練工・品質担当・工場管理職は採用難易度が高まっており、賃金プレミアムが拡大しています。IT・ソフトウェア職はシニア層でアジア最速の上昇が続いており、2028年頃にはタイ・マレーシアに並ぶ水準の職種も出てくる可能性があります。

ハノイに13年いて思うのは、ベトナム人の「もっと高い給与を求める意識」の変化です。転職は当然の選択肢として定着し、「給与に不満なら動く」という人が若い世代を中心に多数派になっています。ICONICの2025年調査では、転職理由の63%、転職先を選ぶ理由の73%が「給与」と答えています。これは日本的な終身雇用観とは根本的に異なる市場です。

つまり「賃上げしないと辞める」という前提で人件費計画を立てる必要があります。毎年5〜7%の自然増を織り込んだ5年計画が最低ラインです。


まとめ:「安い」から「割安感が残る」への移行期にある

2026年時点でのベトナムの人件費を一言でまとめると、「単純製造は割安感が残るが、技能職・管理職・ITは日本との差が急速に縮まっており、総人件費ベースで試算しないと誤算が生まれる」です。

日本との差は全体平均で9倍前後残っています。製造ワーカーはJETROデータで302ドル対日本の約2,500〜3,000ドル相当で8〜10倍の差。ただしITアーキテクト・CTO層では57万円対日本の70万〜100万円程度まで近づいています。最低賃金は年率5〜7%で上昇を続けており、社会保険等の法定コストも合わせると実質総人件費は額面の1.2〜1.3倍以上で計算する必要があります。

「富の南下」という視点で見るなら、ベトナムの賃金上昇は悪いニュースではありません。賃金が上がるということは、購買力が上がり、消費市場が育つということです。中間層が拡大するベトナムは製造拠点であると同時に、これから育つ消費市場としての魅力も高まっています。「人件費が上がっても、ベトナムへの投資価値は下がらない」というのが私の見立てです。

いかがでしたでしょうか。今回のベトナム人件費の最新データについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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本記事で提供される情報は、執筆者の個人的な分析と見解に基づくものであり、投資判断の最終的な決定は読者ご自身の責任において行ってください。ベトナム株式投資は価格変動が大きく、元本割れのリスクを伴います。

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