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【2026年7月施行】ベトナム建設工事の強制保険が契約額以上に義務化—建設・保険業界への影響

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ベトナム政府は、2026年7月1日より建設工事における強制保険の付保額について、工事完成時の全額価値以上かつ建設契約の総額(調整・追加分を含む)を下回ってはならないとする新規定を施行する。建設業界の保険制度を抜本的に強化するこの措置は、急拡大するベトナムのインフラ・不動産開発において、リスク管理の質を大きく引き上げるものとなる。

目次

新規定の具体的な内容

今回の規定では、建設期間中の工事に対する強制保険(bảo hiểm bắt buộc)の付保金額について、以下の2つの条件を同時に満たすことが求められる。

  • 保険金額は、工事が完成した際の「全額価値」(giá trị đầy đủ)と同額以上であること
  • 保険金額は、建設契約の総額を下回ってはならないこと。ここでいう契約総額には、工事途中での設計変更や追加工事による増額分(phần điều chỉnh, bổ sung)も含まれる

従来、ベトナムの建設現場では、コスト削減を目的に保険の付保額を実際の工事価値より低く設定する「過少付保」が横行していた。万一の事故や自然災害で工事が損壊した場合、保険金だけでは復旧費用を賄えず、発注者・施工者双方が大きな損失を被るケースが後を絶たなかった。新規定はこうした構造的な問題に正面からメスを入れるものである。

背景:ベトナム建設市場の急拡大とリスクの増大

ベトナムでは近年、南北高速道路をはじめとする大型インフラプロジェクトや、ホーチミン市・ハノイ市での都市鉄道(メトロ)建設、工業団地の新規開発が相次いでいる。2025年のGDP成長率目標を8%以上に設定する政府は、公共投資の加速を最優先課題に掲げており、建設セクターへの資金流入は今後さらに拡大する見通しである。

一方で、建設現場での事故や品質問題も深刻化している。台風や洪水といった自然災害リスクに加え、工期短縮のプレッシャーから安全管理が軽視される傾向も指摘されてきた。政府としては、保険制度の厳格化を通じて建設業界全体のガバナンス強化を図る狙いがある。

施行までのスケジュールと対象範囲

施行日は2026年7月1日である。強制保険の対象となるのは、法律で定められた一定規模以上の建設工事であり、公共工事のみならず民間の大型開発プロジェクトも広く含まれる。施工者(ゼネコン)だけでなく、発注者(インベスター)側にも適切な保険手配を確認する義務が課される見込みである。

なお、契約途中での設計変更や追加工事が発生した場合には、その都度、保険金額の見直し・増額が必要となる。これにより、工事の進捗に合わせた動的なリスク管理が求められることになる。

投資家・ビジネス視点の考察

本規定は複数の観点からベトナム市場に影響を及ぼすと考えられる。

保険業界へのポジティブインパクト:強制保険の付保額引き上げは、保険料収入の増加に直結する。ベトナムの損害保険大手であるバオベト・ホールディングス(BVH、ホーチミン証券取引所上場)やPVI(ペトロベトナム保険、ハノイ証券取引所上場)、バオミン保険(BMI)などは恩恵を受ける可能性が高い。ベトナムの損害保険市場は対GDP比でまだ浸透率が低く、制度的な後押しは中長期的な成長ドライバーとなり得る。

建設業界のコスト増:一方、建設会社にとっては保険コストの上昇要因となる。コテコン(CTD、ベトナム最大手ゼネコン)やホアビン建設(HBC)などの上場ゼネコンは、利益率への影響を注視する必要がある。ただし、適正な保険付保により不測の損失リスクが軽減されるため、長期的には財務の安定性向上につながるとの見方もある。

日系企業への影響:ベトナムに進出している日系ゼネコンや不動産デベロッパーにとっても無関係ではない。日本企業は一般的にリスク管理意識が高いため、新規定への対応自体は大きな負担にならないと見られるが、現地パートナーやサブコントラクターの保険手配状況を改めて確認する必要が生じる。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナム政府は市場の透明性・制度整備を急いでいる。建設保険制度の厳格化もこうした制度改革の一環として捉えることができ、国際的な投資家からの信認向上に寄与する要素である。

総じて、今回の規定はベトナム建設市場の「質の向上」を促す重要な一歩である。急速な経済成長の裏で後回しにされがちだったリスク管理の制度化が進むことは、ベトナム市場全体の成熟度を高めるものとして、中長期の投資家にとってはポジティブに評価できるだろう。


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出典: 元記事

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