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韓国最大の財閥サムスングループを支配する李(イ)一族の総資産が、わずか1年で2倍以上に膨れ上がり約455億ドルに達した。AI(人工知能)ブームによる半導体需要の急拡大がサムスン電子の株価を押し上げた結果である。李在鎔(イ・ジェヨン)会長はベトナムを含む各国への公式訪問にも積極的に復帰しており、同国に巨大な生産拠点を持つサムスンの動向はベトナム経済にも直結する重要ニュースである。
李一族の資産、アジア3位に急浮上
ブルームバーグ・ビリオネア・インデックスによると、2026年3月時点で李一族の総資産は約455億ドルに達した。1年前の約201億ドルから2倍以上の増加である。これにより李一族はアジアで3番目に裕福な一族へと躍進した。前年の10位から大幅なジャンプアップである。
李一族の個人資産についても、李在鎔氏の資産は269億ドルに達し、金融界の大物・趙正鎬(チョ・ジョンホ)氏を抜いて韓国の最富裕者の座に返り咲いた。
巨額相続税との5年間の戦い、ついに完結
2020年にサムスン帝国の礎を築いた李健熙(イ・ゴンヒ)会長が死去した際、李一族は世界でも最高水準とされる韓国の相続税に直面した。その額は12兆ウォン(約81億ドル)。一族はおよそ5年にわたり分割納付を続けてきたが、今月中に最終の支払いを完了する見通しである。
李在鎔氏は株式や他の資産を担保に借り入れを行い、持ち株の売却を最小限に抑える戦略をとった。一方、姉の李富真(イ・ブジン)氏、妹の李叙顕(イ・ソヒョン)氏、そして母の洪羅喜(ホン・ラヒ)氏は保有株の一部を売却して税金を賄った。資産運用会社フィボナッチ・アセット・マネジメント・グローバルのCEO、ユン・ジョンイン氏は「アジアの大手企業の支配株主は、短期的な流動性よりも議決権の維持を優先する傾向がある」とブルームバーグに語っている。
AI半導体の「スーパーサイクル」がサムスンを押し上げる
資産急増の最大の要因は、サムスン電子の株価の急騰である。同社の株価は昨年126%上昇し、過去20年間で最大の年間上昇率を記録した。サムスン電子は韓国の代表的株価指数KOSPIの約4分の1の比重を占めており、韓国市場全体の上昇を牽引した形である。
サムスン電子の共同CEO、全永鉉(チョン・ヨンヒョン)氏は先月の株主総会で、AI向けインフラ投資が半導体業界に「前例のないスーパーサイクル」をもたらしていると述べ、2026年もAI向けメモリチップの需要は力強く伸び続けるとの見通しを示した。
ブルームバーグの試算によると、サムスン電子を含むサムスングループ主要7社の総売上高は2025年に韓国GDPの19.3%に相当する規模に達した。10年前の15.1%から大幅に拡大しており、韓国経済におけるサムスンの存在感はますます巨大化している。
李在鎔氏の「復権」—ベトナム訪問も
2021年に朴槿恵(パク・クネ)元大統領への贈賄罪で実刑判決を受けた李在鎔氏は、2022年に大統領特赦を受けて正式にサムスンの経営権を掌握した。サムスンは祖父の李秉喆(イ・ビョンチョル)氏が1938年に創業した企業グループである。
贈賄事件で公の場への露出を控えていた李在鎔氏だが、最近は各国首脳との外交の場に積極的に姿を見せている。先週にはインドのニューデリーで韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領、インドのモディ首相とのセルフィー写真が話題となった。この1年間で、インド、ベトナム、中国、UAE(アラブ首長国連邦)、米国への公式訪問に同行している。
また、2025年10月には米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・ファンCEOとビールを飲みながらフライドチキンを食べる姿がSNSで大きな注目を集めた。世界有数のテック富豪同士のカジュアルな交流は、AI半導体分野でのサムスンとエヌビディアの協力関係を象徴するものとして受け止められている。
ベトナムとサムスンの深い関係
李在鎔氏の訪問先にベトナムが含まれている点は、日本のベトナム投資家にとって見逃せないポイントである。サムスンはベトナム最大の外国直接投資企業であり、北部のバクニン省・タイグエン省を中心に巨大なスマートフォン・電子部品の生産拠点を展開している。サムスン関連企業のベトナムにおける輸出額は同国の総輸出額の約2割を占めるとされ、ベトナム経済にとって極めて重要な存在である。
サムスン電子の業績拡大やAI半導体への投資加速は、ベトナム国内のサプライチェーン企業や関連部品メーカーにも波及効果をもたらす。サムスンがベトナムでの生産体制をさらに強化する場合、現地の工業団地関連銘柄やサプライヤー企業への恩恵が期待される。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のニュースから、いくつかの重要な示唆を読み取ることができる。
1. AI半導体サイクルの恩恵はベトナムにも波及する:サムスン電子がAI向けメモリチップの需要拡大で業績を伸ばせば、ベトナム国内の生産拠点への追加投資や雇用拡大につながる可能性がある。ベトナム株式市場においては、サムスンのサプライチェーンに組み込まれている地場企業や、北部の工業団地を運用する不動産企業(例:キンバック都市開発など)に注目が集まるだろう。
2. ベトナムの「チャイナ+ワン」戦略の追い風:米中対立の長期化を背景に、サムスンを含むグローバル企業がベトナムへの生産移管を加速させている。李在鎔氏がベトナムを公式訪問先に含めていることは、同社がベトナム拠点を戦略的に重視し続けていることの表れである。
3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:ベトナム株式市場は2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判定を控えている。サムスンのようなグローバル大企業がベトナム経済に深く根を下ろしていることは、ベトナムの産業基盤の厚みを示す材料となり、格上げに向けたポジティブな文脈として捉えられる。格上げが実現すれば、海外からの資金流入がベトナム株全体を底上げする可能性がある。
4. 日本企業への影響:サムスン向けに部材や製造装置を供給する日本企業にとっても、サムスンの設備投資拡大は追い風となる。また、ベトナムでサムスンと競合する日本の電子機器メーカーにとっては、サムスンの生産能力増強が競争環境を変える要因にもなり得る。
なお、長期的な課題として、韓国の高い相続税率が次世代の経営権承継にどう影響するかという問題は残る。李一族の支配構造が将来的に揺らぐことがあれば、サムスンの経営戦略やベトナム投資方針にも変化が生じる可能性があり、引き続き注視が必要である。
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出典: 元記事












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