ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
トランプ政権が、スウェーデンの電気自動車(EV)ブランド「ポールスター(Polestar)」に対し、来年以降の米国内での新車販売を禁止する方針を打ち出した。理由は、同社が中国との深い関係を持つことにある。米中対立が自動車産業にまで波及する中、ベトナムのEVメーカー・ビンファスト(VinFast)にとっては追い風となる可能性がある。
ポールスター禁止の背景—「スウェーデンブランド」に潜む中国資本
ポールスターは、もともとスウェーデンの高性能車ブランドとして知られ、ボルボ(Volvo)のスポーツ部門から派生した企業である。しかし、2010年にボルボが中国の吉利汽車(ジーリー・オート、Geely)に買収されて以降、ポールスターも中国資本の傘下に入った。現在、ポールスターの株式は吉利汽車グループが大部分を保有しており、一部車種は中国国内の工場で生産されている。
トランプ政権は、中国製コネクテッドカー(通信機能搭載車)やEVに対する安全保障上の懸念を繰り返し表明してきた。車載ソフトウェアや通信モジュールを通じて米国民のデータが中国に流出するリスク、さらにはサプライチェーンにおける中国依存を排除する狙いがある。ポールスターは登記上スウェーデン企業であるものの、実質的な資本関係と生産拠点の観点から「中国関連企業」とみなされ、今回の禁止措置の対象となった。
米国のEV市場における中国排除の加速
今回のポールスター禁止は、米国が進める中国製EV排除政策の延長線上にある。2024年以降、米国は中国製EVに対する関税を100%に引き上げたほか、EV購入補助金の対象から中国製バッテリーを搭載した車両を除外する規制を導入してきた。さらに、中国製の車載ソフトウェアやハードウェア(LiDARセンサーなど)を搭載した車両の輸入・販売を段階的に禁止する規則も施行されつつある。
ポールスターのケースが示すのは、たとえ「西側ブランド」を名乗っていても、中国資本や中国製造が絡む限り規制の網から逃れられないという、米国の強硬な姿勢である。この方針は、BYD(比亜迪)やNIO(蔚来)といった純粋な中国ブランドだけでなく、中国と資本関係を持つグローバルブランド全体に影響を及ぼす可能性がある。
ベトナムEV市場への影響—ビンファストにとっての好機
この動きは、ベトナム最大の民間企業グループであるビングループ(VinGroup)傘下のEVメーカー、ビンファスト(VinFast、ホーチミン市証券取引所非上場・NASDAQ上場、ティッカー:VFS)にとって、戦略的な追い風となり得る。
ビンファストは現在、米国ノースカロライナ州に工場を建設中であり、「中国製ではないEV」として米国市場での差別化を図っている。中国排除が進めば進むほど、「非中国系の新興EVメーカー」としてのビンファストのポジションは相対的に強化される。実際、ビンファストはベトナム国内でバッテリーセルからモーターまでの垂直統合型サプライチェーンを構築しており、中国依存度の低さを米国の政策立案者にアピールできる立場にある。
ただし、ビンファスト自身もバッテリー原材料や一部部品で中国からの調達があるとみられ、今後さらに規制が厳格化された場合には、サプライチェーンの見直しが必要となる可能性も否定できない。
日本企業・日本の投資家への示唆
日本の自動車メーカーにとっても、今回の事案は他人事ではない。トヨタ、ホンダ、日産といった日系メーカーは中国に大規模な生産拠点を持ち、一部モデルでは中国製部品への依存度が高い。米国市場向け車両における中国製コンポーネントの比率が問題視される日が来る可能性も、今回のポールスター禁止は示唆している。
また、ベトナムに進出している日系自動車部品メーカー(住友電工、デンソー、アイシンなど)にとっては、「チャイナ・プラスワン」としてのベトナムの重要性がさらに高まる契機となる。ベトナムで生産された部品が「非中国製」として米国市場向けサプライチェーンに組み込まれる需要は、今後増加すると予想される。
投資家視点での考察
ベトナム株式市場全体への直接的な影響は限定的であるが、以下の点に注目すべきである。
第一に、ビンファスト(VFS)の米国NASDAQ市場での株価動向である。中国系EVブランドが排除されるたびに、ビンファストへの期待値は上昇する可能性がある。ただし、同社はまだ大幅な赤字を計上しており、ファンダメンタルズの改善が伴わなければ持続的な株価上昇は見込みにくい。
第二に、2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判断との関連である。ベトナムが格上げを実現すれば、海外からの資金流入が増加し、ベトナム国内の自動車関連銘柄や製造業銘柄にも恩恵が及ぶ。米中デカップリングの流れの中で「非中国の新興市場」としてのベトナムの存在感が高まることは、FTSE格上げの追い風にもなり得る。
第三に、ベトナム国内のEV関連インフラ銘柄(充電設備、電力関連)やバッテリー素材関連企業への波及効果も中長期的には注視すべきである。
米中対立の激化は、ベトナムにとってリスクであると同時に、「漁夫の利」を得る最大の機会でもある。今回のポールスター禁止は、その構図を改めて鮮明にした事例と言えるだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント