こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
ハノイに13年住んでいると、この街の「匂い」の変化に気づきます。2010年代前半はバイクの排気ガスが当たり前で、ホアンキエム湖の周りを歩くと目が痛くなることも珍しくなかった。それがいつの頃からか、タイ湖周辺では電動バイクが増え、朝の空気が少しだけ違う質感になってきた気がしています。
気のせいではなかった、ということが今回の発表で証明されました。
ハノイ市は2026年7月1日から、ホアンキエム区の旧市街・湖周辺エリアで「低排出ガス区域」の試験運用を開始する方針を打ち出しました。そして2027年以降、その範囲は段階的に拡大され、2028〜2029年には環状1号線の内側エリア全体をカバーする計画です。
正直に言って、これは「ついに来た」という感覚です。
ガソリンバイク96%の街で何が起きるか
発表された計画の中で、私が最も注目したのは現在の車両構成の数字です。環状1号線の内側だけで、バイクが51万台以上存在し、そのうち96.1%がガソリン車。乗用車でも76%がガソリン車です。
この構成比を前提に考えると、今回の政策がどれほど大きな転換を迫るものかが分かります。
第1段階(2026年7〜12月)は、ホアンキエム区の中心部で週末夜間のみすべての車両通行を禁止し、それ以外の時間帯でも配車アプリ経由のガソリンバイクの「利用制限を推奨」する形です。今の段階では禁止ではなく「推奨」にとどまっています。
ところが2027年に入ると話が変わります。
第2段階では、ホアンキエム区とクアナム区全体に対象が広がり、「配車プラットフォームを通じたガソリンバイクの商業運行を禁止」と明記されています。同時に、排出ガス基準レベル4を満たさない自動車の走行も禁じられます。
GrabやBEなどのライドシェアドライバーたちにとって、これは実質的な営業停止を意味します。
Grab8万6千人への波紋
ここで出てくる数字があります。Grabだけでハノイに約8万6,000人のドライバーパートナーがいて、そのうち約6万5,900人が環状1号線内で営業しているという調査データです。
この6万5,900人が2027年以降に車両を切り替えなければ、対象エリアでの営業を継続できなくなります。電動バイクへの乗り換えコストは、品質の高い機種だと3,000〜4,000万VNDはかかります。日本円にして約18〜24万円です。日々の収入でどうにかなる金額ではなく、ローンを組む必要がある層がほとんどです。
ここに「VinFast」が入ってくる余地があります。ベトナム最大の電動バイクメーカーとして、補助金制度や分割払いプログラムを展開すれば、この政策転換を一気に追い風にできる立場にあります。実際、VinFastの電動二輪部門はここ数年で急速に市場シェアを伸ばしており、私は今後この銘柄の動向に注目し続けるつもりです。
「街の変化」は一夜にして起きない
少し脱線しますが、こういうニュースを読むたびに、私は2014年ごろのハノイを思い出します。当時はまだ旧市街に入ると外国人観光客と地元のバイクが混在して、観光地というよりも生活道路、という雰囲気でした。
それが今や、週末の夜間に旧市街から車が消えるのが「当たり前」になる時代が来ようとしている。
街というのは、法律が先か、文化が先か、どちらが変えるのかいつも議論になりますが、ハノイに関しては「法律が引っ張る」モデルが機能してきた歴史があります。ヘルメット義務化の際も、最初は誰も守らなかったのが、取り締まりが始まった瞬間に定着した。今回も同様の展開になるでしょう。
投資家目線で見るこの政策の射程
この政策が証券市場に与える影響を考えると、いくつかの論点が浮かびます。
まず直接的な恩恵を受ける可能性があるのは電動車両関連です。VinFastの電動バイク部門、EVインフラ関連(充電ステーション事業)、そして電池・部品の国内調達網を持つメーカーです。
次に、ライドシェア業界の再編です。Grab、Be、GoJekなどのプラットフォームは、ドライバーパートナーへのEV移行支援を事業戦略の中心に据えざるを得なくなります。補助プログラムを充実させられるプレーヤーが市場シェアを握る、という構図も考えられます。
さらに不動産・観光の観点からは、ホアンキエム湖周辺の環境改善が周辺物件の価値を押し上げる可能性があります。現地で見ていると、湖沿いの商業施設やカフェは「空気と景観の質」を売りにしていますから、排ガスが減ることはダイレクトに客単価や集客に影響します。
そういうことなんです。
この政策はEVと環境規制の話として報じられますが、その本質は「ハノイの都市ブランドが変わる」という話です。旧市街が歩行者と電動車優先の観光地に変貌すれば、周辺の土地・店舗・ホテルの評価軸も変わります。
現時点では計画段階ですし、政策の実施には「社会的合意の確保」や「公共交通インフラの整備」が前提条件として明記されています。順調にいくかどうかは、今後の動向を慎重に見守る必要があります。
いかがでしたでしょうか。今回のハノイ低排出ガス区域の計画について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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