こんにちは、ベトナム経済&株式投資ニュース解説のベトテク太郎です。
ベトジェット航空が、またやってくれました。
今月、ベトジェット航空とタイ政府の東部経済回廊局(EECO)が、タイのウタパオ国際空港に航空機整備センター(MRO:Maintenance, Repair & Overhaul)を共同で建設するという協力協定を締結しました。
正直、このニュースを読んだとき、「あ、これはただの路線拡大ニュースじゃないな」と思いました。ハノイ在住13年、毎年のようにベトジェットのローカル路線を使ってきた身からすると、この動きの意味するところがちょっと違って見えるんです。

ウタパオという選択の意味
ウタパオ国際空港という名前、日本ではあまり馴染みがないかもしれません。バンコクからは南東に約100kmほど、リゾート地パタヤの近くにある空港です。
ただ、今のタイ政府にとって、このウタパオは単なる「パタヤ旅行のついで」の空港ではありません。タイ政府が推進する東部経済回廊(EEC)構想の核心に位置する空港で、いわゆる「エアロトロポリス」、つまり空港を中心に物流・エンジニアリング・ハイテクサービスが集積する未来型空港都市として整備が進んでいます。
ここにMROセンターを建てる、ということは何を意味するか。
航空機の整備・修理・オーバーホールというのは、航空会社の運営コストの中でも特に大きな部分を占めます。現在、多くのアジアの航空会社は整備をシンガポールやマレーシア、あるいは中国の施設に外注しています。自社でMRO拠点を持つことは、コスト削減だけでなく、「整備のために機体を他国に出す時間的ロス」を解消し、稼働率を高めることにも直結するんです。
ベトジェット・タイランドという存在感
少し補足しておくと、ベトジェット航空はベトナム国内だけの航空会社ではありません。タイに子会社のベトジェット・タイランドを持ち、現在22機の航空機を運航しています。さらに、最新世代のボーイング737-8型機50機をタイ法人に譲渡する契約も締結済みです。
ベトナムとタイの間では、これまでに5,000万人の乗客を輸送してきた実績があります。数字として聞くとピンとこないかもしれませんが、ベトナムの人口が約1億人ですから、国民の半数に相当する人数が両国間を移動してきた計算になります。
約1,500人のタイ人従業員を抱えるこのタイ子会社は、タイ側にとっても雇用や産業育成に意味のある存在として認知されています。だからこそ、EECOという政府機関が正式な協力協定の相手として名乗りを上げた。ここに、この提携の重さがあると思っています。

「航空エコシステム」という言葉の射程
今回の協定発表で、ベトジェット・タイランドのCEO、ウォラナテ・ラプラバン氏は「国際的な航空エコシステムを構築する」という表現を使っています。
エコシステムという言葉、最近はIT業界でよく使われますが、航空業界でこの言葉が出てくるのはそれなりに意味深です。単に飛行機を飛ばすだけでなく、整備・技術移転・人材育成・インフラ整備を一体で構築していく、という宣言に近い。
ここで少し視野を広げてみると、東南アジアの航空整備市場は今後10年間で急拡大すると見られています。域内の中産階級拡大と旅行需要の増加に加え、各国が自国のMRO能力を持つことへの国家的なニーズも高まっています。シンガポールのST EngineeringやマレーシアのMAS Aerotechがこの分野で先行していますが、ベトジェットがタイ政府と組んでウタパオに参入することで、この競争に第三の軸が生まれるかもしれません。
投資家として気になること
ベトジェット航空(VJC)はHOSE(ホーチミン証券取引所)に上場しているベトナム株の代表銘柄の一つです。
今回のMROプロジェクトが収益に直結するのは、まだ先の話です。施設の建設・稼働にはそれなりの時間とコストがかかりますし、技術移転や人材育成も一朝一夕ではいかない。短期的な業績インパクトを期待するのは難しいでしょう。
ただ、中長期で見たとき、自社MRO拠点を持つことによる整備コストの内製化、そしてサードパーティへの整備サービス提供による新たな収益源の可能性は、かなり興味深い変化です。「路線を飛ばして席を売る航空会社」から「航空インフラを運営するプラットフォーマー」への脱皮を図っている、と読むこともできます。
財務指標や具体的な投資判断については、あくまでご自身の分析と責任においてご検討ください。私個人としては、この動きをVJCの長期的な企業価値の変化として、引き続き観察しています。
ハノイから見えるベトジェットの変貌
余談ですが、私がハノイに来た13年前、ベトジェットは「ビキニキャンペーン」で話題をさらった新参LCCでした。正直、最初はちょっとチープな印象があったんです(すみません)。でも今や、国際的な航空グループとしてタイ政府と政策協定を結ぶ規模になっている。
ビジネスの成長というのは、見ている人間の先入観をいつも気持ちよく裏切ってくれます。そういうことなんです。
いかがでしたでしょうか。今回のベトジェット航空のMROプロジェクトについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
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本記事で提供される情報は、執筆者の個人的な分析と見解に基づくものであり、投資判断の最終的な決定は読者ご自身の責任において行ってください。ベトナム株式投資は価格変動が大きく、元本割れのリスクを伴います。
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