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ベトナム、ファンド証書の譲渡税を2年超保有で免除へ—投資信託市場活性化の起爆剤となるか

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ベトナムで2025年7月1日より、投資ファンドの証書(チュンチー・クイ)を2年超保有した投資家に対し、譲渡時の税金が免除される新制度がスタートした。加えて、配当にかかる税(利益配当税)も半額に軽減される。ベトナム政府が個人投資家の長期投資を促進し、まだ発展途上にある投資信託市場の拡大を狙った重要な政策転換である。

目次

新制度の概要—何が変わったのか

今回の税制優遇措置のポイントは大きく2つある。第一に、投資ファンドの証書(日本でいう投資信託の受益証券に相当)を2年を超えて保有した投資家が、当該証書を売却・譲渡する際に、譲渡益に対する課税が免除されるという点である。従来、ベトナムでは個人投資家が証券を譲渡した場合、売却価格の0.1%が源泉徴収される仕組みとなっていた。この税率自体は諸外国と比較して低水準ではあるが、それでも短期売買を繰り返す投資家にとっては無視できないコストであった。

第二に、ファンドから受け取る分配金(利益配当)に対する税率が従来の半分に引き下げられる。ベトナムでは個人投資家が受け取る配当・利息に対して通常5%の個人所得税が課されるが、2年超保有のファンド証書については、この税率が2.5%相当に軽減されることになる。

いずれも2025年7月1日を施行日としており、今後新たにファンド証書を購入する投資家だけでなく、既に保有している投資家にも適用される見通しである。

背景—ベトナム投資信託市場の現状と課題

ベトナムの投資信託(ファンド)市場は、株式市場全体の成長に比べると著しく未発達な状態にある。ホーチミン証券取引所(HOSE)やハノイ証券取引所(HNX)に上場する株式の時価総額は近年急拡大し、個人投資家の証券口座数も2024年末時点で約900万口座を突破したとされる。しかし、投資信託を通じた間接投資の比率は依然として極めて低い。

その要因として、ベトナムの個人投資家は「自ら個別株を売買する」志向が非常に強く、ファンドマネージャーに運用を委託する文化が根付いていないことが挙げられる。加えて、ファンド証書の譲渡や配当に対する税制面でのインセンティブが乏しかったことも、投資信託市場の成長を阻む一因であった。

ベトナム政府はかねてより証券市場の「質的向上」を政策目標に掲げており、個人投資家の短期売買偏重から長期・分散投資への転換を促す施策を模索してきた。今回の税制優遇はその具体策の一つであり、特に2年超という保有期間要件を設けることで、短期的な投機ではなく中長期的な資産形成を後押しする意図が明確に読み取れる。

ベトナム証券市場の構造改革との関連

今回の措置は単独の施策として見るべきではない。ベトナムは現在、証券市場の制度改革を急ピッチで進めている最中にある。2025年に入ってからだけでも、空売り規制の緩和、外国人投資家向けのプレファンディング(事前入金)要件の撤廃に向けた議論、そして証券取引システムの刷新(KRX新システムの本格稼働)など、市場インフラの近代化が矢継ぎ早に進められてきた。

こうした一連の改革の最大のゴールは、FTSE Russell(フッツィー・ラッセル)による新興市場(エマージング・マーケット)への格上げである。現在ベトナムはFTSEの分類で「フロンティア市場」に位置づけられているが、2026年9月のレビューで新興市場への昇格が決定される見込みとされている。格上げが実現すれば、新興市場指数に連動するパッシブファンド(ETFやインデックスファンド)から数十億ドル規模の資金流入が期待されており、ベトナム株式市場にとっては歴史的な転換点となる。

投資信託市場の育成は、こうした「市場の厚み」を増すための重要な要素である。機関投資家やファンドを通じた投資比率が高まることで、市場の価格形成がより効率的になり、ボラティリティ(価格変動性)の低減にもつながる。FTSEが格上げ判断において重視する市場の流動性や透明性の向上にも、間接的に寄与するものと考えられる。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場・関連銘柄への影響:今回の税制優遇により、最も直接的な恩恵を受けるのはベトナム国内の資産運用会社(ファンド運用会社)である。ドラゴンキャピタル(Dragon Capital)、VinaCapital(ビナキャピタル)、SSI資産運用(SSIAM)、TCBSファンドマネジメントなど、大手運用会社が運用するオープンエンド型ファンドやETFへの資金流入が加速する可能性がある。証券会社銘柄としてはSSI証券(SSI)、VNDirect(VND)、ホーチミン証券(HCM)など、ファンド販売チャネルを持つ大手証券各社にもポジティブな波及効果が期待できる。

日本企業・日本人投資家への影響:日本の個人投資家がベトナムのファンド証書を直接購入するケースはまだ限定的であるが、ベトナム市場全体の制度整備が進むことは、日本からの間接投資(日本国内で販売されるベトナム関連ファンドやETF)の投資環境改善にもつながる。また、ベトナムに進出している日系金融機関(野村証券、大和証券グループ、SBIグループなど)にとっては、現地でのファンド関連ビジネスの拡大機会となり得る。

FTSE格上げとの関連:前述のとおり、投資信託市場の成熟は市場全体の「機関投資家比率の向上」に直結し、FTSEが重視する市場の質的指標の改善に貢献する。2026年9月の格上げ判定に向けて、ベトナム政府が制度面からあらゆる手を打っている姿勢が改めて鮮明になった形である。

ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ:ベトナムは2025年のGDP成長率目標を8%以上に設定しており、製造業の輸出拡大やFDI(外国直接投資)の流入に加えて、国内資本市場の発展を経済成長の柱の一つに位置づけている。今回のファンド税制優遇は、国民の貯蓄を銀行預金から資本市場へ誘導する「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるものであり、日本がかつて推進した「貯蓄から投資へ」政策(NISA制度の導入など)と同様の方向性を持つ施策として注目に値する。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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