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ベトナムで「グリーン製品(サンファムサイン)」への関心が高まる中、専門家は製品そのものだけでなく、包装材(パッケージ)のライフサイクル全体を持続可能にする必要性を訴えている。原材料や製造工程の環境配慮だけでは不十分であり、包装材の設計・使用・廃棄までを一貫して「グリーン」にしなければ真のサステナビリティは達成できないという指摘である。
「グリーン製品」の定義が拡大している
ベトナムではここ数年、消費者の環境意識が急速に高まっている。都市部のスーパーマーケットやコンビニエンスストアでは「環境にやさしい」「オーガニック」といったラベルが貼られた商品が増え、企業側もグリーンマーケティングを積極的に展開するようになった。しかし専門家によれば、多くの企業が「グリーン製品」を謳う際に注目しているのは、原材料の調達や製造プロセスにおけるCO2削減といった部分にとどまっており、製品を包む包装材のサステナビリティが見落とされがちだという。
包装材は製品のライフサイクルにおいて大きなウェイトを占める。製造段階で発生するエネルギー消費や温室効果ガスに加え、消費者の手に渡った後の廃棄・リサイクルの段階でも環境負荷が生じる。とりわけベトナムでは廃棄物の分別回収やリサイクルインフラが先進国に比べて未整備であり、プラスチック包装がそのまま埋立地や河川に流れ込むケースも少なくない。世界銀行の調査によれば、ベトナムは世界有数のプラスチック海洋汚染国のひとつとされており、この問題への対処は国際的にも注視されている。
包装材の「ライフサイクル」とは何か
専門家が強調するのは、包装材を「ゆりかごから墓場まで(Cradle to Grave)」ではなく、「ゆりかごからゆりかごへ(Cradle to Cradle)」の発想で設計すべきだという点である。具体的には、以下のような観点が求められる。
- 素材選定:再生可能素材やリサイクル素材の使用。バイオプラスチックや紙系素材への転換。
- 設計段階:過剰包装の排除、モノマテリアル(単一素材)化による分別の容易化。
- 流通・使用段階:軽量化による輸送時の燃料消費削減、消費者への分別方法の明示。
- 廃棄・回収段階:リサイクル可能な設計、拡大生産者責任(EPR)制度への対応。
ベトナム政府は2024年1月から拡大生産者責任(EPR)制度を本格施行しており、包装材を製造・輸入する企業に対してリサイクル費用の負担を義務付けている。この制度は段階的に対象品目や回収率目標が引き上げられる予定であり、今後ますます企業の包装材戦略に影響を与えることが確実視されている。
ベトナムの包装・容器業界の現状
ベトナムの包装産業は、食品・飲料市場の急成長と歩調を合わせて年率10〜15%のペースで拡大してきた。国内には大小さまざまな包装材メーカーが存在し、上場企業としてはSPT(サイゴンプラスチック包装)、BMP(ビンミン・プラスチック)、AAA(アンファット・バイオプラスチック)などが知られている。特にAAA(アンファット・バイオプラスチック)はバイオプラスチック分野で積極的な事業展開を行っており、グリーン包装へのシフトを先導する存在として注目されてきた。
一方、中小の包装材メーカーの多くは従来型のプラスチック製品に依存しており、環境対応への投資余力に乏しい。グリーン包装へのシフトにはコスト増が伴うため、最終製品メーカーとの価格交渉も大きな課題となっている。
国際基準との整合——輸出企業への影響
この問題はベトナム国内市場にとどまらず、輸出産業にも大きな影響を及ぼす。EU(欧州連合)は2025年から「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」の段階的適用を開始しており、EU市場に製品を輸出するベトナム企業は包装材のリサイクル性や再生素材の使用率に関する厳格な基準を満たす必要がある。日本でも「プラスチック資源循環促進法」が施行されており、ベトナムから日本市場に製品を輸出する企業にとっても包装材のサステナビリティは避けて通れないテーマである。
ベトナムの主力輸出品である水産加工品、農産物、衣料品、電子部品などは、いずれも包装材を大量に使用する。輸出先の環境規制に対応できなければ市場アクセスを失うリスクがあり、「グリーン包装」は単なるCSR活動ではなく、事業継続そのものに関わる経営課題となっている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の専門家による提言は、ベトナム株式市場においていくつかの注目すべきインプリケーションを持つ。
第一に、グリーン包装関連銘柄への注目度上昇である。EPR制度の強化やEU・日本などの輸出先規制の厳格化に伴い、バイオプラスチックやリサイクル素材を手がける企業は中長期的な成長ドライバーを得る可能性がある。AAA(アンファット・バイオプラスチック)のようなバイオプラスチック企業は、こうした潮流の恩恵を受けやすいポジションにあるが、足元の業績や財務体質を慎重に精査する必要がある。
第二に、日系企業への影響である。ベトナムに製造拠点を持つ日本の食品・消費財メーカーにとって、現地でのグリーン包装調達が新たな課題となる。ベトナム国内で環境対応型包装材を安定的に供給できるサプライヤーとの関係構築が、今後のオペレーション効率とコンプライアンスの両面で重要性を増す。
第三に、ESG評価とFTSE格上げとの関連性である。ベトナムは2026年9月にもFTSE新興市場指数への格上げが決定する見込みであり、これに伴い海外機関投資家の資金流入が期待されている。海外機関投資家はESG(環境・社会・ガバナンス)要因を投資判断に組み込む傾向が強く、上場企業がサプライチェーン全体で環境対応を進めているかどうかは、投資判断の材料となり得る。包装材のサステナビリティへの取り組みは、まさにこのESG評価を左右するファクターのひとつである。
グリーン製品を標榜しながら包装材の環境負荷を無視する——いわゆる「グリーンウォッシュ」のリスクは、消費者からの信頼失墜だけでなく、規制当局からの制裁や取引先の選別といった形で企業価値を直接毀損し得る。ベトナム市場で中長期的に投資ポートフォリオを構築する際には、対象企業の「包装材戦略」もチェックポイントのひとつに加えるべきであろう。
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