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中東における50日超の軍事衝突がホルムズ海峡の通航リスクを一変させ、世界的なエネルギー危機が深刻化している。ベトナムも例外ではなく、中東産原油への依存度、CPI・インフレへの波及、石油精製企業の操業リスクなど多方面に影響が及んでいる。ベトナム経済誌VnEconomyが2025年4月20日発行の第16号で「ホルムズ・ショック:ベトナムのエネルギー安全保障という難題」を特集として取り上げた。
中東紛争とホルムズ海峡リスクの背景
ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅約33kmの海峡であり、世界の海上石油輸送量の約2割がここを通過する。50日以上続く中東の軍事衝突は、この要衝の安全な航行を脅かし、数十年来で最大級のエネルギー供給危機を引き起こしている。原油価格の急騰は世界中の経済に波及し、各国がエネルギー安全保障戦略の見直しを迫られている状況である。
ベトナムのエネルギー安全保障政策——二つの重要決議
ベトナムは以前からエネルギー安全保障を国家的課題として位置づけてきた。直近では、共産党政治局が二つの重要な決議を採択している。
一つ目は第55号決議(55-NQ/TW、2020年2月11日付)で、2030年までの国家エネルギー発展戦略の方向性と2045年までのビジョンを示したものである。二つ目は第70号決議(70-NQ/TW、2025年8月20日付)で、同じく2030年・2045年を見据えたエネルギー安全保障の確保に関する決議である。第70号決議は「国家エネルギー安全保障の確固たる確保、経済社会発展・国防安全保障のための十分かつ安定的で高品質・低排出のエネルギー供給、段階的なエネルギー転換による国際的コミットメントの達成」を2030年までの総合目標として掲げている。
これらは短期・中期・長期にわたるベトナムのエネルギー政策の根幹をなすものであるが、今回のホルムズ危機により、短期的な緊急対応がこれまで以上に重要性を増している。
ベトナム政府の迅速な対応
マクロレベルでは、党・政府は迅速に反応し、エネルギー安全保障政策の柔軟かつ即効性のある運用を指示した。まずは経済社会活動および国防安全保障の安定維持を最優先課題としている。
国際協力——AZEC首脳会議でのベトナム提案
国際協力もベトナムが選択した重要な方向性の一つである。2026年4月15日、日本の高市早苗首相の招待により開催された「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」拡大オンライン首脳会議「エネルギー自主」に、ベトナムのレ・ミン・フン(Lê Minh Hưng)首相が出席・演説した。フン首相はエネルギー問題の解決とサプライチェーンの維持に向け、以下の3つの協力方針を提案した。
- 各国間の政策協調の強化
- エネルギー供給源の多様化
- 貿易の円滑化およびサプライチェーンの安定・円滑化
日本が主導するAZECの枠組みでベトナムが積極的に発言したことは、日越エネルギー協力の深化を示す象徴的な動きである。
VnEconomy座談会——具体的対応策の議論
2026年4月17日、ベトナム経済誌VnEconomyは「ホルムズ・ショックへのベトナムの対応策」と題した座談会を開催した。主な議論のポイントは以下の通りである。
- 中東依存度の評価:ベトナムの中東産原油輸入への依存度を定量的に分析
- マクロ経済への影響:国際原油価格の上昇がベトナムのCPI(消費者物価指数)、インフレ率、製造コストに及ぼす影響
- 川下企業のリスク:石油精製・石油化学企業が原料供給途絶に直面した場合のリスク分析
- 具体的対策の提案:国内ガソリン・石油市場の構造調整(バイオ燃料E10の供給拡充を含む)、国家石油備蓄能力の構築・強化による短期・中期・長期の緊急対応力の向上
投資家・ビジネス視点の考察
今回のホルムズ危機は、ベトナム株式市場において複数のセクターに大きな影響を与える可能性がある。
エネルギー・石油関連株:ペトロベトナムグループ傘下のPVガス(GAS)、ペトロベトナム・ドリリング(PVD)、ビンソン精油(BSR)、ズンクアット精油を運営するBSRなど石油精製・探査関連銘柄は、原油価格高騰の恩恵と原料調達リスクの両面から注視が必要である。特にBSRは中東産原油への依存度が高い場合、供給途絶リスクが直接的な業績リスクとなる。
電力・再生可能エネルギー:化石燃料の供給不安が高まれば、太陽光・風力発電への政策的追い風が強まる。再エネ関連のBCG、PC1などへの中長期的な関心が高まる局面といえる。
CPI・インフレリスクとベトナム中央銀行の政策:原油高がCPIを押し上げれば、ベトナム国家銀行(SBV)の金融緩和余地が狭まり、銀行株や不動産株のバリュエーションにも影響し得る。
日本企業への示唆:ベトナムに製造拠点を持つ日本企業にとって、電力・燃料コストの上昇は直接的な収益圧迫要因となる。一方で、日本が主導するAZECの枠組みを通じたエネルギー協力の深化は、LNG・再エネ分野での日越ビジネス機会の拡大を意味する。JERAやENEOSなど日本のエネルギー企業にとって、ベトナム市場の戦略的重要性はさらに高まるだろう。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナム市場への海外資金流入期待が高まっている。しかし、エネルギー危機によるインフレ加速やVND(ベトナムドン)の減価圧力が生じれば、格上げ後の資金流入効果を相殺するリスクもある。マクロ安定の維持が格上げ効果を最大化するための前提条件であり、今回のエネルギー安全保障対策の成否は市場全体の行方を左右する重要な要素である。
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出典: 元記事












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