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2026年4月16日、ベトナム政府のホー・クオック・ズン(Hồ Quốc Dũng)副首相がIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策に関する国家指導委員会の第34回会合を主宰した。2026年3月に実施された欧州委員会(EC)の第5回査察を経てもなお、ベトナム水産業に対する「イエローカード」は解除されていない。発動から8年以上が経過し、政府は規律強化と実行力の抜本的改善を各省庁・地方に求めている。
8年超の取り組みにもかかわらず解除に至らない現状
ベトナムの水産物に対するECのイエローカードは2017年10月に発動された。以来、ベトナム政府は法整備、監視体制の構築、漁船管理のデジタル化などを進めてきた。会合で報告に立った農業環境省のグエン・ホアン・ヒエップ(Nguyễn Hoàng Hiệp)次官によれば、現時点で以下の成果が確認されている。
- 全長6メートル以上の漁船80,350隻がシステムに登録済み(2026年4月14日時点)。うち76,700隻以上が有効な漁業許可証を保持。
- 国家漁業データベース「VNfishbase」、漁船監視システム、電子トレーサビリティシステム、行政違反処理データベースが整備され、中央から地方まで連携。国民データベースとも接続済み。
- 操業条件を満たす漁港86港、沖合漁船の受入条件を満たす漁港72港、水産物の原産地証明が可能な漁港51港が稼働。
- 電子航海日誌と電子トレーサビリティが導入され、EUおよびFAO(国連食糧農業機関)のシステムとの接続が可能な水準に到達。
- 外国海域での違法操業は大幅に減少し、第5回査察でもECはこの点での進展を認めた。
解除を阻む「実行力の壁」
しかし、農業環境省は複数の根本的な問題が未解決であると認めている。具体的には以下の通りである。
- 一部の地方では漁船への標識表示・登録番号記載・出入港管理が徹底されていない。
- 漁港での水揚げ量の監視が不十分。
- コンテナ船で輸入される水産原料の管理・トレーサビリティが企業間でばらつきがある。
- 違反処理の進捗が遅く、ECが求めるデータ更新も不十分。
ヒエップ次官はその原因として、地方の法執行能力の限界、指導部の決断力不足、漁港インフラ・監視技術・管理人材の不足、そして漁民に対する代替生計手段の欠如を挙げた。
副首相が求める「海から岸まで」の管理強化
ズン副首相は会合の結論として、「同じ問題が繰り返し指摘されている。法令は整っており、問題は実行にある」と厳しく指摘した。主な指示事項は以下の通りである。
- 農業環境省:省庁横断の常設タスクフォースの早期設立を申請し、地方への直接検査・督促を実施。政令第38/2024/NĐ-CP号に代わる新政令を策定し、ECの要求に沿って罰則を大幅に引き上げる方向で整備。
- 国防省:海上での監視を強化し、外国海域への違法操業を根絶。国境警備隊は出港段階から管理を徹底し、啓発活動と早期の違反防止を実施。
- 公安省:違法操業の仲介・斡旋ネットワークの捜査・厳正処罰を継続。
- 財務省:水産物の輸出入手続きを見直し、ECの勧告に基づく違反の明確化およびIUU対策への予算確保を提案。
- 沿岸21省・市:航行監視装置(VMS)の設置、出入港管理、トレーサビリティ、違反処罰を完遂。漁港に省庁横断の監視チーム設置を検討。
- 各機関のトップの責任を明確化し、政府官房が進捗を取りまとめて報告する体制を構築。
投資家・ビジネス視点の考察
IUUイエローカードの長期化はベトナム水産業界にとって重大なリスクである。EUはベトナムにとって主要な水産物輸出市場であり、イエローカードが「レッドカード」に格上げされれば、EU向け水産物輸出が全面禁止となる。上場水産企業であるヴィンホアン(Vĩnh Hoàn、VHC)やミンフー(Minh Phú、MPC)など、EU向け売上比率の高い企業への直接的な打撃は計り知れない。
一方で、ベトナム政府が罰則強化や省庁横断タスクフォースの設置など、従来よりも踏み込んだ対策を打ち出している点は前向きに評価できる。ECが第5回査察で違法操業の減少を認めたことも、解除に向けた地合いが徐々に整いつつあることを示唆する。
2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連では、水産セクターへの影響は限定的であるものの、ベトナムの「国際基準への適合能力」を測る一つの試金石として海外投資家の目に映る可能性がある。IUU問題の解決は、ベトナムが国際的なルールに基づくガバナンスを実行できる国であるというシグナルとなり、広義の投資環境評価にプラスに働く。
日系企業にとっては、ベトナムからの水産原料調達においてトレーサビリティの信頼性が課題となる。電子トレーサビリティシステムの整備進展は、サプライチェーンの透明性確保という観点で歓迎すべき動きである。今後の新政令による罰則強化の具体的内容と、地方での実効性に注目が集まる。
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出典: 元記事












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