ベトナムでガソリン価格下落も飲食店の値上げ続く—原材料・人件費高止まりの実態

Nhiều hàng quán tiếp tục tăng giá
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ベトナムではガソリン・軽油の小売価格が大幅に下落しているにもかかわらず、街中の飲食店や各種サービス店が相次いで値上げに踏み切っている。原材料費や人件費が依然として高水準に張り付いていることが主因であり、ベトナムの消費者物価や内需動向を見る上で注目すべき構造的な問題が浮き彫りになっている。

目次

ガソリン価格は下がったのに、なぜ値上げが止まらないのか

ベトナム政府は2025年後半から2026年初頭にかけて、国際原油価格の下落を受けてガソリン・軽油の国内小売価格を段階的に引き下げてきた。とりわけ2026年4月に入ってからの下げ幅は顕著で、物流コストの低減が期待されていた。しかし、現実にはホーチミン市やハノイなどの大都市を中心に、飲食店・カフェ・屋台といった消費者に身近な業態で値上げが続いている。

その背景には、ガソリン代以外のコスト要因が複合的に絡んでいる。まず、食材をはじめとする原材料価格が高止まりしている点が挙げられる。ベトナムでは2024年から2025年にかけて豚肉、野菜、食用油、調味料などの仕入れ価格が大幅に上昇し、その後も下落の兆しが見えない。加えて、最低賃金の引き上げや労働市場のタイト化に伴い、人件費も上昇基調を維持している。ベトナム政府は2024年7月に地域別最低賃金を平均6%引き上げており、飲食業界のように労働集約型の業種では、この影響がダイレクトにコストに反映される。

さらに、テナント賃料の上昇も見逃せない。ホーチミン市の中心部やハノイ旧市街(ホアンキエム区周辺)では、コロナ後の回復に伴って商業用不動産の賃料が上昇しており、小規模な飲食店にとっては大きな負担となっている。こうした固定費の上昇がガソリン代の下落分を相殺し、結果として消費者への価格転嫁が進んでいるのである。

ベトナムの「値上げの粘着性」——一度上がった価格は下がりにくい

ベトナムの消費市場には、日本と同様に「価格の下方硬直性」が存在する。すなわち、コスト上昇を理由に値上げした店舗が、コストが下がっても元の価格に戻すことはほとんどない。特にベトナムの飲食業界では、メニュー表の刷新や価格変更のタイミングが不定期であり、一度引き上げた価格がそのまま定着しやすい構造がある。

ベトナムの消費者の間でも「ガソリンが下がっても、フォー(ベトナムの代表的な米麺料理)やカフェの値段は下がらない」という不満がSNS上で広がっている。実際、ホーチミン市内のフォー専門店では、2024年初頭に1杯あたり40,000〜50,000ドン程度だった価格が、2026年現在では55,000〜70,000ドンまで上昇しているケースが散見される。コーヒーチェーンでも同様の傾向が報告されており、消費者心理への影響は無視できない。

CPI(消費者物価指数)への影響

ベトナム統計総局(GSO)が発表するCPIの構成比において、「食品・飲食サービス」は最大のウエイトを占める項目である。ガソリン価格の下落はCPIの「交通」カテゴリーを押し下げる効果がある一方、飲食サービスの価格上昇はCPI全体を押し上げる方向に作用する。2026年第1四半期のCPI上昇率は前年同期比で3%台後半と、ベトナム国会が設定した目標上限(4〜4.5%)の範囲内にとどまっているものの、飲食関連のインフレ圧力は今後も注視が必要である。

ベトナム国家銀行(中央銀行、SBV)は金融政策運営においてCPIの動向を重要な指標としており、飲食サービスを含む生活関連物価の高止まりが長期化すれば、利下げ余地を狭める要因にもなり得る。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の「ガソリン価格下落でも飲食店の値上げが続く」というニュースは、一見するとマクロ的なインパクトが小さいように思えるが、ベトナム経済と投資を考える上で複数の重要な示唆を含んでいる。

1. 消費関連銘柄への影響:飲食関連のコスト上昇は、外食チェーンやF&B(食品・飲料)企業の利益率を圧迫する。ベトナム株式市場に上場するマサングループ(MSN、食品・小売大手)や、フォーロン・フードプロセシング(FPT系ではないが食品加工分野の企業群)など、消費財セクターの業績動向には注意が必要である。一方で、価格転嫁力の高いブランド企業は、むしろ利益率を維持・拡大できる可能性があり、銘柄選別が重要となる。

2. 日本企業への影響:ベトナムで飲食業を展開する日系企業にとっても、原材料費・人件費の上昇は直接的な経営課題である。丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスや、ベトナムで事業拡大を進める外食チェーンは、現地の価格転嫁戦略を慎重に進める必要がある。ベトナムの消費者は価格感度が高く、急激な値上げは客離れにつながるリスクがある。

3. インフレとFTSE格上げの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向けて、ベトナム経済のマクロ安定性は海外投資家の注目ポイントである。インフレが制御可能な範囲に収まっていることは格上げのプラス材料だが、生活関連物価の粘着的な上昇が消費者信頼感や社会的安定に影響すれば、間接的にリスク要因と見なされる可能性もある。

4. ベトナム経済の構造転換:より広い視点で見れば、ベトナムは「安い国」から「中所得国」への移行期にある。最低賃金の上昇、人件費の高騰、そして消費者物価の上昇は、経済成長の副産物でもある。投資家としては、単に「物価が上がった」と捉えるのではなく、ベトナムの購買力向上と消費市場拡大というポジティブな側面にも目を向けるべきである。


いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。

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出典: 元記事

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