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ベトナムはなぜレジ袋・使い捨てプラを禁止できないのか?税・手数料方式への転換を当局が提案

Vì sao Việt Nam chưa cấm được túi nilon, nhựa một lần?
📘 この記事は「ベトナム経済研究会」が提供するベトナム最新ニュース解説です。
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ベトナム環境局の代表者が、レジ袋(ビニール袋)や使い捨てプラスチック製品の使用制限政策が「実社会に浸透していない」ことを公式に認めた。そのうえで、全面禁止ではなく税や手数料を課す方式への転換を提案している。急速な経済成長の裏で深刻化するプラスチック汚染問題に対し、ベトナム当局がなぜ実効性のある規制を打ち出せないのか——その構造的な要因を読み解く。

目次

政策はあるが「絵に描いた餅」状態

ベトナムでは2020年以降、段階的にレジ袋や使い捨てプラスチックの使用を制限する方針が打ち出されてきた。2025年までにスーパーマーケットやショッピングモールでの使い捨てプラ製品の提供を停止し、2030年までに全国的な使用禁止を目指すというロードマップが存在する。しかし、環境局(Cục Môi trường)の担当者は今回、こうした政策が「cuộc sống(実生活)に入り込めていない」と率直に認めた。

ベトナムの街角を歩けば、この「乖離」は一目瞭然である。路上の屋台やウェットマーケット(伝統的な生鮮市場)では、薄いビニール袋が何重にも使われるのが日常だ。フォーやブンチャーといった汁物の持ち帰りにもビニール袋が欠かせない。消費者にとっても零細事業者にとっても、レジ袋は極めて安価で代替が難しい生活必需品となっている。

なぜ「禁止」が機能しないのか——構造的な3つの要因

第一に、インフォーマル経済の圧倒的な規模である。ベトナムでは個人商店や露店、路上販売といった非正規の小売形態が依然として流通の大きな部分を占める。こうした零細事業者に対して一律の禁止令を適用し、違反を監視・取り締まることは行政コストの面で極めて非現実的である。

第二に、代替品の価格問題がある。生分解性プラスチックや紙袋、布袋といった代替品は、従来のレジ袋に比べて数倍から十数倍のコストがかかる。所得水準がまだ発展途上にあるベトナムにおいて、消費者や小規模事業者にこの追加コストを一律に負担させることは、社会的な反発を招きかねない。

第三に、国内プラスチック産業の存在である。ベトナムにはプラスチック製品の製造・加工を行う中小企業が多数存在し、相当数の雇用を生み出している。全面禁止は産業基盤への直接的な打撃となるため、政治的にも慎重にならざるを得ない事情がある。

「禁止」から「課税・手数料」へ——現実路線への転換

こうした背景を踏まえ、環境局は今回、レジ袋や使い捨てプラスチック製品に対して税や手数料(phí)を課すアプローチを提案した。全面禁止という理想を掲げるよりも、経済的インセンティブによって消費量を漸進的に減らす方が実効性が高いとの判断である。

実際、この手法は国際的にも多くの成功事例がある。アイルランドが2002年に導入したレジ袋税(PlasTax)は、導入後わずか数か月でレジ袋の使用量を約90%削減した。日本でも2020年7月にレジ袋の有料化が義務づけられ、辞退率が大幅に上昇したことは記憶に新しい。ベトナムでも同様のメカニズムが機能する可能性は十分にある。

ただし、課題も残る。ベトナムではすでに2012年からレジ袋に対する環境保護税が存在しており、現行税率は1キログラムあたり50,000ドンとされている。しかし、徴収の実効性が低く、特にインフォーマルセクターへの浸透がほとんど進んでいないのが実態だ。新たな課税・手数料制度を導入するにあたっては、徴収体制の整備と監視メカニズムの構築が不可欠となる。

東南アジアにおけるプラスチック汚染の深刻さ

ベトナムは、海洋プラスチック汚染において世界でワースト上位に位置する国の一つである。世界自然保護基金(WWF)などの報告によれば、ベトナムは年間約180万トンのプラスチック廃棄物を排出し、そのかなりの部分が河川を通じて海洋に流出している。メコンデルタや紅河デルタ(ソンホンデルタ)の河口域では、プラスチックごみの堆積が漁業や生態系に深刻な影響を及ぼしている。

国際社会からの圧力も強まっている。国連環境計画(UNEP)主導で策定が進む「プラスチック汚染に関する国際条約」の交渉においても、ベトナムは積極的な対応を求められている。こうした外圧が、今回の政策転換の背景にあることは間違いない。

投資家・ビジネス視点の考察

関連銘柄への影響:レジ袋・使い捨てプラへの課税が本格化すれば、代替素材を手がける企業にとっては追い風となる。ベトナム株式市場に上場するプラスチック関連銘柄——たとえばビンアン・パッケージング(AAA)やタンフー・プラスチック(NTP)など——は、事業ポートフォリオの構成によってポジティブ・ネガティブ双方の影響を受け得る。環境配慮型製品への転換を進めている企業ほど、中長期的に有利なポジションを確保できるだろう。

日本企業への影響:ベトナムに進出している日本の食品・小売・製造企業にとっても、包装材料のコスト増や規制対応が経営課題となる可能性がある。一方で、日本企業が持つ環境対応技術やリサイクル技術へのベトナム市場からの需要が高まることも予想される。生分解性プラスチックやリサイクルシステムを手がける日本企業にとっては、ベトナム市場参入の好機ともなり得る。

ESG・FTSE格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げを控え、ベトナムは市場の透明性やガバナンスの向上だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)面での改善も国際投資家から注視されている。プラスチック規制の実効性向上は、ベトナム市場全体のESG評価を底上げする要素となり、格上げ後の海外資金流入の「質」を左右する一因にもなり得る。

経済全体のトレンド:ベトナムは「世界の工場」としての役割を拡大する一方で、環境規制の強化は製造コストの上昇要因ともなる。ただし、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)や各国のプラスチック規制の流れを考えれば、早期に環境対応を進めることは、輸出競争力の維持という観点からも合理的な選択である。ベトナム政府が「禁止」から「課税」へと現実路線に舵を切ったこと自体は、政策の成熟を示すものとして評価できる。


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出典: 元記事

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