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ベトナムの大手商業銀行であるエクシムバンク(Eximbank、ホーチミン証券取引所上場・ティッカー:EIB)で、取締役会(HĐQT)の会長を含む4名の取締役が一斉に辞任するという異例の事態が発生した。ベトナム銀行セクターの中でも長年にわたりガバナンス問題が指摘されてきた同行にとって、今回の大量辞任は経営の安定性に対する市場の懸念を一段と高める可能性がある。
辞任した4名の取締役
今回辞任を申し出たのは、以下の4名である。
- ファム・ティ・フエン・チャン(Phạm Thị Huyền Trang)氏 ── 取締役会会長(Chủ tịch HĐQT)
- ファム・トゥアン・アイン(Phạm Tuấn Anh)氏 ── 取締役
- グエン・チー・チュン(Nguyễn Trí Trung)氏 ── 取締役
- グエン・チョン・ヒエン(Nguyễn Trọng Hiền)氏 ── 取締役
会長を含む4名が同時に辞任届を提出するというのは、ベトナムの上場銀行においても極めて異例の事態である。エクシムバンクの取締役会は通常7〜9名程度で構成されており、今回の辞任により取締役会の過半数近くが空席となる可能性がある。
エクシムバンクの「お家騒動」——長年続くガバナンス問題
エクシムバンクは1989年に設立されたベトナムの老舗商業銀行であり、正式名称は「ベトナム輸出入商業銀行(Ngân hàng Thương mại Cổ phần Xuất Nhập Khẩu Việt Nam)」である。貿易金融に強みを持ち、かつてはベトナムの民間銀行の中でトップクラスの規模を誇っていた。
しかし、同行は2010年代半ばから複数の株主グループ間での経営権争いが表面化し、ベトナム金融業界で最も「お家騒動」が激しい銀行として知られるようになった。年次株主総会が紛糾して取締役選任が否決される、会長が短期間で交代を繰り返す、臨時株主総会が何度も召集されるといった混乱が続いてきた。
具体的には、過去10年間で取締役会会長が少なくとも5回以上交代しており、各株主グループが主導権を握ろうとするたびに経営陣の刷新が繰り返されてきた。ファム・ティ・フエン・チャン氏が会長に就任したのも比較的最近のことであり、今回の辞任は再び新たな勢力構図の変化を示唆するものとみられる。
背景にある株主間対立の構図
エクシムバンクの株主構成は分散的であり、単独で圧倒的な議決権を持つ大株主が存在しにくい構造となっている。このため、複数の株主連合がそれぞれ取締役候補を擁立し、株主総会のたびに委任状争奪戦(プロキシーファイト)が展開されるという状況が常態化してきた。
ベトナムの銀行業界では、中央銀行(ベトナム国家銀行・SBV)が各銀行の大株主の持株比率に上限を設けており、個人株主は5%、法人株主は15%、関連者を含めても20%までという規制がある。この規制がかえって株主構成の分散化を招き、エクシムバンクのような経営権争いが生じやすい土壌をつくっているという指摘もある。
今回の4名同時辞任が、特定の株主グループの意向によるものなのか、あるいは個人的な理由によるものなのかは現時点では明らかにされていない。しかし、会長を含む複数名が足並みを揃えて辞任するという経緯から、何らかの組織的な動きが背景にあると考えるのが自然である。
エクシムバンクの業績と市場でのポジション
エクシムバンクは、VietcomBank(VCB)やVietinBank(CTG)、BIDV(BID)といった国有系大手銀行、あるいはTechcombank(TCB)やMB Bank(MBB)といった成長著しい民間銀行と比較すると、近年は業績面で見劣りする状況が続いていた。ガバナンスの混乱が経営戦略の一貫性を損ない、融資拡大や手数料収入の伸びで競合行に後れを取ってきたとの見方が市場では根強い。
一方で、エクシムバンクの株価は「経営権争いの決着」への期待から投機的な買いが入りやすい銘柄としても知られており、ガバナンス問題がかえって株価のボラティリティ(変動性)を高める要因となってきた。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の取締役4名同時辞任は、エクシムバンク(EIB)の株価に短期的な影響を与える可能性がある。ガバナンスの不安定化は通常ネガティブ材料として受け止められるが、エクシムバンクの場合は「新たな大株主による経営刷新への期待」がポジティブに作用するケースもあり得る。過去にも経営陣の交代局面で株価が大きく動いた実績がある。
ベトナム株式市場全体の観点では、2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定を控え、市場のガバナンス水準が国際的に注目されている。エクシムバンクのような上場銀行での経営混乱は、ベトナム市場全体のガバナンス評価にマイナスの印象を与えかねない。特に海外機関投資家は、コーポレートガバナンスの安定性を重視するため、こうした事例が繰り返されることはFTSE格上げに向けた市場の信頼性構築において課題となり得る。
日本企業やベトナム進出企業にとっては、エクシムバンクを取引銀行として利用している場合、経営体制の変動に伴うサービス方針の変更などに留意する必要がある。また、ベトナムの銀行セクターへの投資を検討する日本人投資家にとっては、EIBは高リスク・高リターン型の銘柄として位置づけられ、ガバナンスリスクを十分に織り込んだうえでの投資判断が求められる。
いずれにせよ、今後の臨時株主総会での新取締役選任や、新たな経営陣の顔ぶれが明らかになるまでは不透明感が続くとみられ、続報に注目したい。
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出典: 元記事












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