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ベトナム中部の主要都市ダナン市が、土地使用権証明書(いわゆる「レッドブック」)の署名・発行権限を市の土地登記事務所本部から各支局へ移管する試験運用を開始する。中間手続きの削減により、住民の書類処理期間を最大1.5営業日短縮する狙いである。ベトナムが推進する行政改革と2024年土地法施行の流れを象徴する動きとして注目される。
試験導入の概要
ダナン市人民委員会の指示に基づき、市の土地登記事務所は4つの支局で試験運用を実施する。対象となるのは、個人および地域住民共同体による変動登記(名義変更・権利変更等)に関する土地使用権証明書の署名・発行業務である。
試験対象の4支局は以下の通りである。
- 第I区域:ハイチャウ区・タインケー区(Hải Châu – Thanh Khê)——ダナン市の中心商業エリア
- 第II区域:ソンチャー区・グーハインソン区(Sơn Trà – Ngũ Hành Sơn)——沿岸リゾート開発が進む地域
- 第X区域:タンビン県(Thăng Bình)
- 第XVIII区域:クエソン県(Quế Sơn)
試験期間は現在から2026年7月15日までとされている。その後、2026年8月1日からは管轄地域内の全20支局へ一斉展開する計画である。
手続き期間の短縮効果
今回の権限移管に伴い、以下4つの行政手続きについて処理期間が1〜1.5営業日短縮される。
| 手続き内容 | 新たな処理期限 | 短縮日数 |
|---|---|---|
| 土地使用権証明書の交換発行 | 4営業日以内 | 1日短縮 |
| 紛失による証明書の再発行 | 8.5営業日以内 | 1.5日短縮 |
| 土地の分筆・合筆 | 11営業日以内 | 1日短縮 |
| 既発行証明書への資産登記・変更登記(外国人・外国法人の住宅所有期限延長を含む) | 7営業日以内 | 1日短縮 |
「6つの明確化」原則と行政改革の背景
ダナン市はこの改革にあたり、「6つの明確化(6 rõ)」の原則を掲げている。すなわち、①担当者の明確化、②業務の明確化、③期限の明確化、④責任の明確化、⑤権限の明確化、⑥結果の明確化——である。市人民委員会主席の強い指導のもと、「住民と企業を中心に据えたサービス型行政」の構築を目指す姿勢が鮮明である。
ダナン市は、土地管理を都市開発と投資誘致における戦略的最重要課題と位置づけている。2024年土地法の施行を受け、滞留プロジェクトの処理や土地資源の活用促進、実務上のボトルネック解消に向けた複数の施策を並行して推進中である。
ダナン市の位置づけ
ダナン市(人口約120万人)はベトナム中部最大の直轄市であり、ハノイ・ホーチミン市に次ぐ「第三の都市」として急速に発展してきた。IT産業の集積地としても知られ、日本企業を含む外資系企業の進出先として人気が高い。近年は沿岸部のリゾート開発や都市再開発が活発化しており、不動産関連の行政手続きの効率化は、投資環境の改善に直結する重要テーマである。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の施策は一見すると地方行政の内部改革に過ぎないが、ベトナムの投資環境を見る上でいくつかの重要な示唆を含んでいる。
第一に、2024年土地法の実効性である。ベトナムでは2024年8月に新土地法が施行されたが、法律の制定と現場での運用には常に乖離が生じてきた。ダナン市のように具体的な権限移管と数値目標(処理日数の短縮)を伴う施策が実行段階に入っていることは、法整備が実務レベルで浸透しつつある証左と言える。不動産関連銘柄、とりわけ中部ベトナムに開発案件を持つデベロッパーにとってはポジティブな材料である。
第二に、外国人の不動産所有に関する手続きが対象に含まれている点である。外国法人・外国人個人の住宅所有期限延長の登記手続きが明示的に短縮対象となっていることは、日系企業の駐在員や個人投資家にとっても実務的なメリットがある。ベトナムでは外国人の住宅所有が条件付きで認められているが、手続きの煩雑さが課題として指摘されてきた。
第三に、FTSE新興市場指数への格上げ(2025年9月のウォッチリスト入り、2026年9月の正式決定が見込まれる)との関連である。FTSEの評価基準には「市場の制度的枠組み」が含まれており、土地・不動産に関する行政手続きの透明化・効率化は、ベトナム市場全体のガバナンス評価を底上げする要素となり得る。直接的な影響は限定的だが、こうした地方レベルでの改革の積み重ねが、マクロな市場評価を形成していく点は見逃せない。
第四に、ダナン市が日本企業の進出先として重要性を増している点である。IT・BPO分野を中心に日系企業の拠点が増加しており、オフィスや工場用地の取得・賃借に伴う登記手続きの迅速化は、事業展開のスピードに直結する。ベトナム進出を検討する日本企業にとって、ダナン市の行政効率の改善は立地選定における加点要素となるだろう。
総じて、今回の施策は派手さはないものの、ベトナムが「制度の近代化」を着実に進めている一つの具体例として評価できる。不動産セクターのみならず、ベトナム市場全体の投資環境改善の文脈で注視すべき動きである。
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出典: 元記事












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