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ドイツ連邦議会のボド・ラメロウ副議長が6月17日、ハノイのバクマイ病院を訪問し、ベトナムとドイツの間で介護・看護人材の育成協力を本格化させる方針を表明した。両国が直面する高齢化という共通課題を背景に、資格の相互認証や高齢者ケア分野での人材交流が具体的に動き出そうとしている。
ラメロウ副議長「ベトナムの看護師の質は多くの国が羨むレベル」
ラメロウ副議長は6月15日から21日までの日程でベトナムを公式訪問中であり、バクマイ病院(ハノイ市内に位置するベトナム最大級の総合病院)への訪問は、ベルリンでの会談からわずか1週間後の再会となった。副議長は「ベトナムの看護師の質は多くの国が羨むレベルだ」と述べ、ベトナムで訓練を受けた医療人材は米国、カナダ、オーストラリアなど先進国でも十分に通用する能力を持っていると高く評価した。
一方で、ベトナムの医療人材がドイツで就労する際には依然として法的障壁が存在することも率直に認めた。特に、ベトナムで正規の教育課程を修了した看護師がドイツで再度試験を受けなければならないという規定が大きなハードルとなっている。ラメロウ副議長は「ベトナムの優れた教育プログラムとドイツの資格・職業証明制度を組み合わせ、ベトナムで訓練を受けた人材がドイツで資格を認められる仕組みを構築することが目標だ」と強調した。
バクマイ高等医療専門学校でドイツ基準の介護課程を新設へ
具体的な協力の方向性として、バクマイ病院付属の高等医療専門学校(Trường Cao đẳng Y tế Bạch Mai)において、ドイツの基準に準拠した高齢者介護の看護課程を新設する構想が示された。この課程を修了した学生には、ベトナムの学位とドイツで通用する職業資格証明が同時に付与される「デュアル・ディグリー」型の仕組みが検討されている。
ドイツは急速な高齢化に伴い、高齢者介護施設や長期ケア施設での人材不足が深刻化している。多くの養護老人ホームがベトナムから専門性の高い人材を採用したいと考えており、今回の協力構想はそうした実需に直結するものである。ラメロウ副議長は「ドイツは技術・設備・介護モデルに強みがあり、ベトナムは若く活力ある質の高い人材を持っている。双方にとって利益のある協力だ」と述べ、「機械がどれほど進歩しても、最終的に決定的なのは人間だ。技術は献身的で、十分に訓練され、能力のある人材がいて初めて効果を発揮する」と語った。
バクマイ病院が提案する5つの協力構想
バクマイ病院のダオ・スアン・コー院長(PGS.TS=准教授・博士)は、「我々の責任は今日の国民の健康を守るだけでなく、ベトナム医学の未来を現代的かつ人間的で、国際的に統合された方向に構築することにある」と述べた上で、以下の重点協力構想を提案した。
- 戦略的協力プログラムの設立:バクマイ病院とドイツ看護協会、ドイツの病院・教育機関・養護老人ホームとの間で、看護・高齢者ケアに関する包括的な戦略協力を構築する。
- 看護師の渡独研修制度:バクマイ病院で既に行医資格を持つ看護師を選抜し、2〜3年間ドイツで研修・就労させた後、帰国して介護モデルの移転、再教育、専門的な看護サービスの発展に従事させる。
- ドイツ式高齢者ケアセンターの設立:バクマイ病院内にドイツモデルに基づく高齢者ケア・長期ケアセンターの設立を研究する。
- シミュレーションセンターの建設:バクマイ高等医療専門学校に「ベトナム・ドイツ高齢者看護シミュレーションセンター」を建設する。
- 先端医療分野での研究協力:遺伝子技術、幹細胞、分子生物学、ロボット手術、多臓器移植、救急蘇生・中毒治療、循環器、がん治療など高度専門医療分野での共同研究・技術移転を推進する。
ベトナムの高齢化—数字が示す深刻な人材不足
コー院長が指摘するように、ベトナム自身も急速な高齢化局面に突入している。人口予測によれば、ベトナムの高齢者人口は2024年時点の約1,420万人から、2030年には約1,800万人に増加する見通しである。平均寿命は74.7歳に達する一方、健康寿命は約65.4歳にとどまり、高齢者の約70%が2つ以上の疾患を抱えている。
しかし、これに対応する人材基盤は著しく脆弱である。全国に約13万5,000人の高齢者ヘルスケアボランティアが存在するが、その大半は人口分野の協力員であり、専門的な訓練を受けていない。老年医学に関する研修・訓練を受けた医療従事者はわずか約7,849人にとどまる。人口局のレ・タイン・ズン局長によれば、老年科の医師・看護師・医療スタッフの数は需要に対して明らかに不足しており、注目すべきことに、ベトナムにはいまだ正規の「高齢者ケアワーカー」の職種コードが存在せず、中等・高等・大学レベルでの正式な養成課程も設けられていない。これは、長期ケア需要が急増する中で極めて大きな空白である。
国連人口基金(UNFPA)ベトナム代表のダン・フエン氏も、ケア人材は段階的かつ専門的に体系化された教育を受けるべきであり、在宅・地域・専門施設の各モデルに対応できるよう実践重視の標準化された訓練が必要だと提言している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の越独協力構想は、ベトナムの医療・介護セクターにとって複数の含意を持つ。
医療・介護関連銘柄への影響:ベトナム株式市場では、医療・ヘルスケア関連銘柄(例:医薬品大手のハウザン製薬=DHG、医療機器のジェメディック=JVC など)が高齢化テーマで注目されやすい。今回のようなドイツとの制度的連携が具体化すれば、高齢者ケア関連の新たなビジネスモデルが生まれ、関連企業の中長期的な成長期待を下支えする可能性がある。
日本企業への示唆:日本もベトナムからの介護人材受け入れでEPA(経済連携協定)に基づく枠組みを運用しているが、資格認証のハードルの高さは共通の課題である。ドイツが「デュアル・ディグリー」方式で資格相互認証を先行して実現すれば、日本の制度設計にも影響を与える可能性がある。ベトナムに進出している日系介護事業者(リエイ、ニチイ学館など)にとっても、人材確保競争が激化する点に留意が必要である。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、主に証券市場インフラの改革が焦点だが、ベトナムが国際的な制度間連携(今回の資格相互認証など)を積極的に推進している姿勢は、制度の透明性・国際整合性という観点で間接的にポジティブに働く。
マクロ的位置づけ:ベトナムは「人口ボーナス期」の終盤にあり、2035年頃には「高齢社会」(高齢化率14%超)に移行すると予測されている。今のうちに介護人材の育成・制度整備を進めることは、将来の社会保障費膨張を抑制し、持続的な経済成長を維持するための重要な布石である。ドイツという高齢化先進国との連携は、ベトナムが「老いる前に備える」戦略の一環として極めて合理的な選択と言える。
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