ベトナム・ニソンLNG発電所(5.7兆ドン規模)が3度目の入札不成立——投資家不在の背景と今後の展望

Tiếp tục hủy thầu dự án LNG Nghi Sơn 58.000 tỷ đồng do không có nhà đầu tư tham gia
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ベトナム中北部タインホア省のニソン経済区で計画されているLNG火力発電プロジェクト(総投資額5兆7,524億ドン)が、3度にわたる国際入札をすべて不成立で終えた。2026年4月20日の締切時点で応札者はゼロ。日本のJERA(東京電力と中部電力の合弁)やタイのGulf Energy、韓国のSK Innovationといった大手が一時関心を示しながらも撤退した背景には、プロジェクト規模の問題、LNG価格の高騰、そしてベトナム特有の制度的課題が複合的に絡んでいる。

目次

3度の入札、3度の失敗——経緯を振り返る

ニソン経済区管理委員会は2026年2月9日に3回目の入札公告を発出し、当初の締切を同年4月10日に設定した。しかし、ベトナム電力グループ(EVN)からの要請により電力購入契約(PPA)のひな型を修正する必要が生じ、3月23日に締切を4月20日14時まで延長。それでも、システム上に登録した投資家は一社もなかった。

注目すべきは、2回目の入札(2025年4月)では5つの企業・コンソーシアムがショートリストに残っていた点である。具体的には、JERA(日本)、Gulf Energy(タイ)、SK Innovation(韓国)、そしてベトナム国内勢としてPV Power、TT・アインファット連合が名を連ねていた。各社は地方当局との予備交渉に入ったものの、2025年7月の正式応札期限までに誰一人として書類を提出せず、タインホア省は入札取消しを余儀なくされた。

プロジェクトの全容

本プロジェクトは、国際公開入札方式(一段階・一封筒方式)で実施されており、入札保証金は2,876億2,000万ドンに設定されている。計画されている施設の規模は以下の通りである。

  • ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)方式のLNG火力発電所:出力1,500MW
  • LNG専用受入バース(港湾)
  • 約1kmの防波堤
  • LNG貯蔵タンク:容量23万立方メートル
  • 再ガス化設備:年間処理能力120万トン

2030年までの商業運転開始を目指しており、改定版第8次電力開発計画(PDP8)においてタインホア省に割り当てられた3つのLNG重点プロジェクトの一つである。同省全体のLNG発電計画は合計約4,500MWに達する。

投資家が二の足を踏む理由

①規模の問題——1,500MWでは小さすぎる

現在の国際的なLNG発電投資のトレンドとして、コスト最適化の観点から3,000MW以上の大規模案件が選好される傾向が強い。1,500MWという規模では、港湾・貯蔵・再ガス化といったインフラ投資を回収するには効率が悪いと判断される。このため、韓国のPOSCO Internationalは2025年7月9日、ベトナム商工省に対し、隣接するゲアン省のクインラップLNGプロジェクトとニソンLNGを統合開発する方式を提案した。LNG貯蔵タンク、専用港、送電設備を共有することでコスト削減と工期短縮が可能になるという論理である。SK Innovation ESも同様の統合開発案をゲアン省・タインホア省の双方に打診している。

②地政学リスクとLNG価格高騰

中東・ペルシャ湾岸地域の地政学的緊張が長期化し、主要海上輸送ルートの不安定化によりグローバルLNGサプライチェーンが断続的に混乱している。これに伴うLNG価格の高止まりは、燃料費を主要コストとするLNG発電事業の採算性を直撃する。特にベトナムのようにPPAの条件整備がまだ発展途上にある市場では、燃料価格変動リスクを投資家が負いきれないと判断されやすい。

③制度・法的枠組みの未成熟

ベトナムではLNG発電に関する電力購入契約(PPA)のスキーム、価格メカニズム、リスク分担の枠組みがいまだ整備途上にある。EVNが入札期間中にPPAひな型の修正を求めたこと自体が、制度の流動性を象徴している。

タインホア省の対応と「統合開発」への距離

タインホア省ニソン経済区管理委員会の副委員長チャン・チー・タイン氏は、メディアの取材に対し次のように説明している。「隣のゲアン省がクインラップLNGで指名入札方式を選択したのとは異なり、タインホア省は多数の国内外投資家が長期にわたり関心を示してきた経緯を踏まえ、公開入札方式を堅持している。透明性を確保し、真に実力のある投資家を選定するためだ」。

また、同氏はタインホア省が商工省の指導に従い、各LNG発電所にそれぞれ専用港を設ける方針を維持していることを強調した。これは、POSCO InternationalやSK Innovationが提案したインフラ共有型の統合開発とは相容れない立場であり、投資家誘致の障壁の一つとなっている。

一方、タインホア省は2026年3月末に省人民委員会常務副主席マイ・スアン・リエム氏をトップとするLNG発電プロジェクト支援作業部会を設置。さらに4月17日にはロシアのノバテク(Novatek)社幹部と面談し、LNG分野への投資検討を要請するなど、新たな投資家開拓にも動いている。

投資家・ビジネス視点の考察

本件は、ベトナムのエネルギー転換戦略が抱える構造的課題を浮き彫りにしている。PDP8で計画された大規模LNG発電プロジェクト群の遅延は、ベトナムの中長期的な電力供給の安定性に直結する問題であり、製造業を中心にベトナムに進出している日本企業にとっても無関係ではない。

関連銘柄への影響:ベトナム株式市場では、PV Power(POW)やPetroVietnam Gas(GAS)といったエネルギー関連銘柄がLNG発電計画と密接に関わっている。入札不成立の継続はこれら銘柄の中期成長シナリオに不透明感を加える要因となる。一方、再生可能エネルギー関連銘柄にとっては、LNG発電の遅延が相対的な追い風となる可能性もある。

日本企業への示唆:JERAが2回目の入札でショートリストに入りながら撤退した事実は、日本のエネルギー企業にとってもベトナムLNG市場の投資環境がまだ十分に整っていないことを示唆している。PPAの条件、燃料価格転嫁メカニズム、規制の予見可能性といった課題が解決されない限り、大規模な資本投下は難しいと判断されているのが実態である。

FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に判定が見込まれるFTSE新興市場への格上げに向け、ベトナムは資本市場の透明性・制度整備を加速させている。エネルギーインフラの入札プロセスにおける透明性の確保は、広い意味で国全体のガバナンス評価にも影響しうる。タインホア省が公開入札にこだわる姿勢自体は評価できるが、結果として投資家が集まらなければ制度設計の実効性が問われることになる。

観測筋の多くは、1,500MW単独・専用港方式という現行条件のままでは4回目の入札でも成果は厳しいとみている。湾岸地域の緊張緩和とLNG価格の安定化が見通せない中、統合開発の容認や規模拡大、あるいはPPA条件の抜本的改善といった柔軟な戦略転換が、この5兆7,524億ドン規模のメガプロジェクトの命運を握る鍵となるだろう。


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出典: 元記事

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