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ベトナム北部の主要港湾都市ハイフォン(Hải Phòng)が、2030年までにデジタル経済のGRDP(地域内総生産)に占める比率を35%超に引き上げるという野心的な目標を打ち出した。11年連続で2桁成長を維持する同市は、2025年7月にハイズオン省と合併し、経済規模で全国3位の巨大都市へと変貌を遂げている。科学技術・イノベーション・DXを成長エンジンに据える同市の戦略は、ベトナム経済の次のステージを占う試金石となる。
国家科学セミナーでハイフォン党書記が方針を表明
この目標は、2026年5月26日にハイフォンで開催された国家科学セミナー「科学・技術・イノベーション・DXに基づく国家発展モデルの刷新」の場で、ハイフォン市党委員会書記のレー・ゴック・チャウ(Lê Ngọc Châu)氏が明らかにしたものである。同氏は党中央委員でもあり、合併後の新ハイフォンの舵取りを担うキーパーソンだ。
セミナーは、党中央政策・戦略委員会、ハイフォン市党委員会・人民評議会・人民委員会、ホーチミン国家政治学院、および中央理論評議会が共催。ベトナム共産党機関誌「タップチー・コンサン(Tạp chí Cộng sản)」やベトナム経済学会なども専門面で協力しており、国家レベルの政策議論の場として位置づけられている。
合併で「全国3位の経済規模」に——新ハイフォンの基礎データ
チャウ書記によれば、ハイフォンは2025年7月1日にハイズオン省(Hải Dương、ハノイの東約60kmに位置する工業省)と合併し、新たな発展段階に入った。合併後の基礎データは以下の通りである。
- 面積:約3,200km²
- 人口:460万人超
- 経済規模:約300億ドル(全国3位)
2025年のGRDP成長率は11.81%を記録し、全国2位かつ中央直轄市グループではトップであった。これにより、ハイフォンは11年連続で2桁のGRDP成長を維持した唯一の地方自治体という記録を更新している。
2026年も好調を維持——第1四半期の主要指標
2026年に入っても勢いは衰えていない。第1四半期のGRDP成長率は11.21%で全国3位、中央直轄6市の中では首位を維持した。主要指標を整理すると以下の通りである。
- 国家予算収入(1〜4月):7兆8,000億ドン超(年間予算の40.3%を達成)
- FDI誘致額(1〜4月):約13億ドル(前年同期比76.8%増)
- 輸出総額(1〜4月):約183億ドル(同26.2%増)
- 港湾貨物取扱量(1〜4月):約5,900万トン(同11.6%増)
経済構造も着実に転換が進んでおり、工業・建設およびサービス業がGRDPの約90%を占めるまでになっている。
DX・イノベーション指標でも全国トップクラス
ハイフォンは経済成長だけでなく、行政改革やDX推進でも際立った実績を残している。主な順位は以下の通りだ。
- 省レベルDX指数(DTI):全国3位
- 地方イノベーション指数(PII):全国4位
- 行政改革指数(PAR INDEX):全国1位(2026年5月11日、内務省発表)
- 住民満足度指数(SIPAS):全国1位(同上)
市の人民評議会と人民委員会は、国会決議226号(ハイフォン特別発展メカニズムの試行に関する決議)に基づき、科学技術・イノベーション分野で6つの決議と4つの決定を発出しており、制度面での整備も進んでいる。
2026〜2030年の成長戦略——年平均13〜14%のGRDP成長を目指す
チャウ書記が示した2026〜2030年の主要目標は以下の通りである。
- GRDP年平均成長率:13〜14%
- デジタル経済のGRDP比率:35%超(2030年目標)
- 海洋科学技術の国際的な研修・研究・応用拠点の構築
ハイフォンは港湾、工業、ロジスティクスの中心地であり、国際統合の最前線に位置する。こうした地の利を活かし、スマート港湾、スマートロジスティクス、ハイテク産業と連動したイノベーション・エコシステムの構築、さらには新たなガバナンスモデルやデジタルインフラの試行拠点としての役割が期待されている。
一方で、チャウ書記は課題も率直に指摘した。「制度がイノベーションの道を真に開くにはどうすればよいか」「データを発展の資源にするにはどうすべきか」「企業をイノベーション・エコシステムの中心に据えるにはどうするか」「科学技術を各産業・各分野・各地方に浸透させるにはどうするか」——これらの問いに答えを出すことが、目標達成の鍵となる。
投資家・ビジネス視点の考察
ハイフォンの動向は、ベトナム株式市場および日本企業にとって複数の重要な示唆を含んでいる。
第一に、港湾・物流関連銘柄への追い風である。ハイフォンはラックフェン(Lạch Huyện)深水港を擁し、北部最大の物流ハブとして機能している。貨物取扱量が2桁成長を続ける中、港湾運営会社やロジスティクス企業の業績拡大が見込まれる。スマート港湾・スマートロジスティクス構想が具体化すれば、IT・テクノロジー企業にも恩恵が波及するだろう。
第二に、ハイズオン省との合併による投資環境の変化である。ハイズオン省には日系製造業を含む多数の工業団地が集積している。合併により行政手続きの一本化や広域インフラ整備が加速すれば、既進出の日系企業にとってもオペレーション効率の向上につながる可能性がある。一方で、行政再編に伴う一時的な混乱リスクには注意が必要だ。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連である。ハイフォンのようなDX先進都市が増えることは、ベトナム全体のガバナンス・透明性向上に寄与し、格上げ審査においてもプラス材料となり得る。格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が加速し、インフラ関連やテクノロジー関連銘柄が恩恵を受ける可能性が高い。
第四に、デジタル経済比率35%という目標水準の意味である。ベトナム全体のデジタル経済GDP比率は2025年時点で約18〜20%とされており、ハイフォンが35%超を達成すれば、ASEAN域内でもシンガポールに迫る水準となる。DX関連の政策支出や優遇措置が拡大すれば、IT・フィンテック・データセンター関連への投資機会が広がる。
FDI誘致が前年同期比76.8%増という数字が示す通り、ハイフォンは外資にとってすでに魅力的な投資先である。年平均13〜14%という成長目標は極めて野心的だが、11年連続2桁成長の実績と行政改革トップの評価を考慮すれば、達成の蓋然性は決して低くない。日本の投資家にとって、ハイフォンはベトナム投資のポートフォリオにおいて注視すべき地域の一つであることは間違いないだろう。
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