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ベトナム北部の主要港湾都市ハイフォンで、大型都市開発プロジェクトの施工業者が住民の生活道路上にコンクリート製の障壁(通称「コン・ルオン(con lươn)」=ウナギ型コンクリートブロック)を設置し、数十世帯の通行を妨害していた問題が発覚した。ハイフォン市建設局および地元行政当局は、デベロッパーに対し即時撤去を要求している。
事件の経緯——住民の生活道路がコンクリートで封鎖
問題の舞台は、ハイフォン市トゥイグエン区(phường Thuỷ Nguyên)チャンラム住民区(Tổ dân phố Chân Lầm)に隣接する都市開発プロジェクト「ホアンフイ・ニューシティ(Hoàng Huy Newcity)」である。同プロジェクトはドー・ムオイ通り(đường Đỗ Mười)沿い、カム川北岸新都市区域(Khu đô thị mới Bắc sông Cấm)に位置し、デベロッパーはCRV不動産グループ株式会社(Công ty Cổ phần Tập đoàn bất động sản CRV)が務めている。
住民の訴えによると、2026年3月末から4月初旬にかけて、プロジェクトの施工作業員が住民区の幅8メートルの生活道路を横切る形で「コン・ルオン」と呼ばれるコンクリート製の障壁を設置した。この障壁は高さ約40センチメートル、延長数百メートルにわたり、生活道路に沿って敷設されたもので、数十世帯の住民が通行不能に陥った。住民たちはやむを得ず土を盛ったり、木材やレンガを積み上げてコンクリート障壁を乗り越えなければ日常の移動すらできない状態に追い込まれていたという。
行政の対応——区レベルから市レベルへ迅速にエスカレーション
住民からの通報を受け、トゥイグエン区人民委員会は2026年4月8日にCRV不動産グループの代表者と住民代表を招集し、協議の場を設けた。グエン・ヴァン・ヴィエン(Nguyễn Văn Viển)トゥイグエン区人民委員会主席は、関係部署の意見を聴取した上で、CRV不動産グループに対し住民区の通路を塞いでいる「コン・ルオン」の撤去を要請した。
具体的な要求事項は以下の通りである。
- プロジェクト周囲に建設された恒久的な塀の撤去(仮設のトタン板フェンスのみ許可)
- プロジェクトとチャンラム住民区の境界部分にある「コン・ルオン」コンクリート障壁の撤去
- 上記作業を2026年4月15日までに完了すること
- プロジェクトの道路(車道幅、歩道、電気設備、排水溝)に関する技術仕様を書面でチャンラム住民区の各世帯に提供すること
さらに、グエン・ヴァン・ヴィエン主席は経済・インフラ・都市整備課に対し、CRV不動産グループと連携して技術情報の文書を作成し住民に配布するよう指示。デベロッパーの対応状況を継続的に監視し、問題があれば速やかに区人民委員会に報告するよう命じた。
この問題は市レベルにも波及した。2026年4月11日、グエン・ミン・フン(Nguyễn Minh Hùng)ハイフォン市副市長は、建設局に対しトゥイグエン区人民委員会および関連機関と連携して現場を調査・検証するよう指示。2026年4月18日までに市人民委員会へ報告するよう求めた。
この指示を受け、2026年4月15日に建設局の代表とトゥイグエン区人民委員会が合同で現場検査を実施。プロジェクトと住民区の境界部分の現状を確認した上で、CRV不動産グループに対し塀および「コン・ルオン」コンクリート障壁の撤去を正式に要請した。
背景——ハイフォンの急速な都市開発と住民との摩擦
ハイフォンはベトナム北部における5つの中央直轄市の一つであり、ハノイに次ぐ北部経済圏の要衝である。近年、カム川北岸地域を中心に大規模な新都市開発が進行しており、「ホアンフイ・ニューシティ」もその一環に位置づけられる。ホアンフイ(Hoàng Huy)ブランドはハイフォンの不動産市場で広く知られており、同名の上場企業ホアンフイ・インベストメント(ティッカー:TCH、ホーチミン証券取引所上場)とブランドを共有する関連プロジェクトとして市場でも注目されてきた。
ベトナムでは全国的に都市開発プロジェクトと既存住民との間の土地・通行権をめぐるトラブルが頻発している。特にデベロッパーが建設用地の囲い込みを行う際、住民の既存の生活道路やアクセス経路を考慮しないケースが社会問題化している。今回のような「コン・ルオン」による通路封鎖は、その典型的な事例といえる。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の事案は直接的に巨額の財務的インパクトをもたらすものではないが、ベトナム不動産セクターへの投資を検討する際にいくつかの重要な示唆を含んでいる。
第一に、コンプライアンスリスクの観点である。ベトナムの不動産開発においては、建設許可や土地使用権の取得だけでなく、周辺住民との関係管理が事業の円滑な推進に不可欠である。行政機関が迅速に介入し、市副市長レベルまで問題がエスカレーションした今回のケースは、当局が住民の権利保護に対し一定の姿勢を示したものとして注目される。
第二に、不動産デベロッパーのガバナンス品質が銘柄選定において重要であるという点だ。CRV不動産グループの名前はホアンフイ・ニューシティのデベロッパーとして登場しているが、上場企業TCH(ホアンフイ・インベストメント)との正確な資本関係については公開情報を精査する必要がある。いずれにせよ、ブランド毀損リスクは関連銘柄の株価に影響を与え得る。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSEによるベトナムの新興市場指数への格上げとの関連である。格上げ実現のためには、市場の透明性やコーポレートガバナンスの向上が求められる。不動産セクターにおけるこうしたトラブルが繰り返されれば、海外投資家のベトナム市場全体に対する信認にマイナスに作用する可能性もゼロではない。
日本企業のベトナム進出という観点では、ハイフォンは多くの日系製造業が進出する工業都市であり、駐在員の居住環境にも直結する都市開発の質は無視できない要素である。パートナー企業やプロジェクトの選定にあたっては、地域住民との関係構築能力も評価基準に含めるべきであろう。
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