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ベトナム北部の主要港湾都市ハイフォン市で、排水・下水処理インフラの整備が急速な都市化に大きく遅れている実態が明らかになった。同市人民評議会(HĐND、地方議会に相当)は都市計画の見直しと重点プロジェクトの加速を市人民委員会に要請している。
計画30カ所に対し、基準を満たす稼働施設はわずか1カ所
ハイフォン市(Hải Phòng、ベトナム五大中央直轄市の一つで、ハノイの東約120kmに位置する港湾・工業都市)の計画では、2025年までに市東部エリアだけで30カ所の下水処理工場・処理施設を建設・稼働させる予定であった。しかし現時点で投資が行われたのはわずか6施設にとどまる。
そのうち実際に稼働しているのは、ヴィンニエム(Vĩnh Niệm)下水処理工場(処理能力:日量3万6,000m³)、VSIP下水処理工場(日量9,500m³)、カットバー島(Cát Bà)の3カ所の処理施設(合計日量約9,500m³)の計5施設である。バックソンカム(Bắc sông Cấm)第1下水処理工場は現在も建設段階で未稼働だ。
市西部エリアではさらに深刻である。ゴックチャウ(Ngọc Châu)下水処理工場は機械処理のみで生物処理を経ておらず、処理水の水質が基準を満たしていない。ロークオン(Lộ Cương)下水処理工場は長年にわたり工期が遅延し、今なお稼働に至っていない。
結局、市レベルの下水処理工場で規定に適合した完全稼働を実現しているのは、ヴィンニエム工場のただ1カ所という状況である。
雨水と汚水が分離されず、未処理のまま河川へ
ハイフォン市では多くの地域で雨水と生活排水を分離する管渠システムが整備されておらず、浄化槽を経た生活排水がそのまま合流式の排水路に流入している。一部地域では未処理の汚水が直接河川や用水路に放流され、深刻な環境汚染を引き起こしている。市全体の都市生活排水の収集・処理率はわずか約32.22%にとどまる。
さらに、2009年以前に形成された工業団地の大半には集中排水処理施設が未整備である。ロンスエン(Long Xuyên)やゴークエン(Ngô Quyền)といった工業団地は住宅地に隣接しており、基準未達の排水が共用システムに流入し環境負荷を高めている。
調整池の整備も大幅に遅延——計画3,930haに対し実績74ha
浸水対策も深刻な課題である。トゥオンリー駅周辺やフンヴオン通り、ゴークエン通りなど市内の主要エリアでは、大雨や異常気象のたびに局地的な冠水が頻発している。既存の排水管は大部分が老朽化し、断面が小さく、降水量50mm以下の雨にしか対応できない。
市東部では計画上33カ所・総面積3,930haの調整池(遊水池)が予定されているが、実際に整備されたのはわずか74.25ha余りに過ぎない。市全体でも調整池の面積は約117haにとどまり、計画に対して著しく不足している。都市化に伴うコンクリート面積の拡大が雨水浸透を妨げ、浸水リスクをさらに高めている構図だ。
市西部でも、紅河デルタ水利計画に組み込まれたヌオックタン(Nước Thần)、コンソー(Cống Sổ)、トゥオンチエウ(Thượng Chiều)といった重点ポンプ施設がいまだ未建設のままであり、内水排除能力が著しく制約されている。
ODA頼みの財源構造と縦割り行政が課題
ハイフォン市人民評議会は、こうした遅れの主因として、排水・下水処理分野への投資が計画通りに行われてこなかったことを指摘している。財源はODA(政府開発援助)に大きく依存しており、市独自の予算配分が不十分であった。また、建設局・農業環境局・地方行政機関の間で管轄や連携の仕組みが不明確であり、セクター横断的な調整が欠如していたとしている。
人民評議会は市人民委員会に対し、以下の具体的対応を求めた。
- 排水・下水処理に関する都市計画の見直しと気候変動適応策の強化
- ロークオン下水処理工場の接続インフラを早急に完成させ稼働を開始すること
- 既存工場の処理品質の確保
- ODA活用の大型プロジェクト——旧ハイズオン省の一部都市における下水収集・処理システム整備事業(総投資額1,498億ドン)、ハイフォン市南東部の気候変動適応型持続的開発事業(総投資額9,783億ドン超)——の工期厳守
- 埋め立て禁止の池沼リストの作成と調整池面積の計画に沿った拡大
投資家・ビジネス視点の考察
ハイフォン市はベトナム北部における工業・物流の中核都市であり、日系企業の進出先としても極めて重要な拠点である。同市のディンブー(Đình Vũ)やVSIP、ノムディン(Nam Đình Vũ)といった工業団地には多数の日系製造業が立地している。排水インフラの脆弱性は、進出企業にとって操業リスク(浸水による生産停止、排水規制強化に伴う追加コスト)に直結する問題だ。
一方、総額1兆ドンを超える規模のODAプロジェクトが複数動いていることは、水処理・環境関連の事業機会が拡大していることを意味する。日本の環境インフラ技術や下水処理プラント輸出にとって有望な市場であり、JICA案件との関連も注視すべきである。
株式市場の観点では、ベトナムの上場水処理関連企業や建設大手(たとえばBWE=ビンズオンウォーターなど水事業銘柄)への間接的な追い風となり得る。また、ハイフォン市が工業団地の排水基準を厳格化すれば、工業団地運営企業(KBC、SZC、IDCなど)の設備投資負担が増加する可能性もある。
2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判断に向けて、ベトナムはインフラ整備や制度的透明性の向上が求められている。都市排水という基礎インフラの遅れは、投資環境の質という観点から海外投資家の評価にも影響し得るテーマであり、今後の進捗を注視する必要がある。
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出典: 元記事












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