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ベトナムの首都ハノイ市内務局(Sở Nội vụ)が、基層レベルの「非専従活動者」(người hoạt động không chuyên trách)に対する手当支給ルールについて包括的なガイダンスを発出した。2025年7月1日に施行される大規模な行政組織改革に伴い、コミューン(社・坊)やトン(thôn=村落)、居民組(tổ dân phố)で複数の役職を兼任する非専従幹部の手当計算に混乱が生じており、現場からの問い合わせが相次いでいたことが背景にある。
非専従活動者とは何か——ベトナム基層行政の独特な仕組み
ベトナムの末端行政には、正規の公務員(公職者・専従幹部)とは別に、「非専従活動者」と呼ばれる半ボランティア的な役職者が多数存在する。コミューンレベルでは各種団体の副会長(青年団・農民会・婦人会・退役軍人会など)、トンや居民組レベルではトン長や各種委員がこれに該当する。彼らは国家予算から月額の「手当」(phụ cấp)を受け取るが、正規給与とは異なり、金額は限定的である。ベトナム全土で数十万人に上るとされるこの層の整理は、現在進行中の「精簡編制」(tinh giản biên chế=定員削減・組織スリム化)政策の重要な柱の一つである。
政令第154号と2025年7月1日の転換点
今回の混乱の直接的な原因は、政令第154/2025/NĐ-CP号(定員削減に関する政令)の施行と、2025年版地方行政組織法の発効が重なる2025年7月1日にある。同日以降、コミューンレベルの非専従活動者という区分自体が制度上なくなることが、共産党政治局の結論第163号(Kết luận số 163-KL/TW)で方針として示されている。しかし実務上は、政府指導委員会の公文書第12号により、各地方は実情に応じて2026年5月31日まで暫定的に非専従活動者の配置を延長できるとされており、制度と実態の間にギャップが生じている。
ハノイ市内務局が示した主なガイダンスの内容
ハノイ市内務局が各区・県の社・坊に対して示した主要ポイントは以下の通りである。
1. 兼任者の手当計算ルール:コミューンやトン・居民組の非専従活動者が他の非専従職を兼任している場合、退職時の手当(trợ cấp)算定基礎となるのは「本来の役職の月額手当」のみであり、兼任分の手当は算入しない。これが今回のガイダンスの最も核心的な部分である。現場では兼任手当も含めて計算しようとするケースが散見され、内務局が釘を刺した形だ。
2. トン・居民組の役職を継続する者は退職対象外:コミューンレベルの非専従職を離れても、トンや居民組の非専従職を引き続き担う者は、政令第154号に基づく退職・手当支給の対象にはならない。
3. 2025年7月1日以降に新たに指定された団体役職者:同日以降に青年団副書記、農民会副会長、婦人会副会長、退役軍人会副会長、赤十字会長、高齢者会長などに新たに指定された者は、そもそもコミューンレベルの非専従活動者には該当せず、政令第154号の適用対象外となる。
4. 手当受給後に再雇用された場合の返還義務:政令第154号に基づく手当を受け取った後、60か月以内に国家予算から給与を受ける機関・組織に再び採用された場合、またはトン・居民組の非専従活動者に配置された場合は、受領済みの手当全額を返還しなければならない。
5. 退役軍人会副会長の特例:コミューンレベルの退役軍人会副会長で、すでに政令第150/2006号、政令第157/2016号、通達第03/2020号に基づく制度の適用を受けて退任した者は、政令第154号の対象外とする。
6. 社会保険の計算対象期間:手当算定の基礎となる強制社会保険加入期間は、党・国家機関・祖国戦線・政治社会団体(中央からコミューンまで)および軍での勤務期間に限定される。任意加入の社会保険期間や、上記範囲外の組織での強制社会保険加入期間は含めない。
背景にある「精簡編制」——ベトナム史上最大の行政改革
ベトナムでは2024年末から2025年にかけて、共産党トー・ラム書記長の主導のもと、省庁の統合・地方行政単位の合併・定員削減を柱とする大規模な行政改革が進行中である。中央省庁は18から14程度に再編され、全国の社・坊の数も大幅に削減される方向だ。今回のガイダンスは、この改革の「末端」で生じている実務上の混乱に対処するものであり、改革の規模の大きさと、それに伴う制度的な過渡期の複雑さを如実に示している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のニュース自体は基層行政の人事制度に関する技術的な内容であり、ベトナム株式市場や個別銘柄に直接的な影響を与えるものではない。しかし、以下の点で日本の投資家やベトナム進出企業にとっても示唆がある。
第一に、ベトナム政府が進める行政改革の本気度と進捗を測る一つの指標となる。末端レベルまで具体的なガイダンスが出ているということは、改革が「掛け声だけ」ではなく実行フェーズに入っていることを意味する。行政の効率化は中長期的に財政健全性の改善や行政サービスの向上につながり、ベトナムの投資環境改善に寄与する。
第二に、2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判断において、ベトナムのガバナンス改善は間接的にプラス材料となり得る。行政組織のスリム化による財政支出の適正化は、マクロ経済の安定性を高める要素の一つである。
第三に、ベトナムに拠点を持つ日系企業にとっては、地方行政の窓口が変わる可能性がある点に留意が必要である。社・坊の合併や担当者の変更により、許認可手続きの窓口や担当者が変わるケースが想定されるため、現地スタッフを通じた情報収集が重要となるだろう。
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出典: 元記事












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