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ハノイ市人民委員会は、市内に残る公有旧住宅(nhà ở cũ thuộc tài sản công)の賃貸・売却に関する決定権限を、ハノイ市建設局(Sở Xây dựng)へ委譲する方針を打ち出した。現在パブリックコメントを募集中の規定案であり、実現すれば、長年停滞してきた公有旧住宅の処分が大きく加速する可能性がある。
公有旧住宅とは何か——ハノイの歴史的背景
ベトナムでは、1954年の南北分断以降、北部では社会主義体制のもとで多くの住宅が国有化された。ハノイ旧市街を中心に、フランス植民地時代のヴィラや集合住宅が公有財産として管理されてきた経緯がある。ドイモイ(刷新)政策以降、一部は居住者への売却が進んだものの、所有権関係の複雑さ、管轄の分散、書類不備などにより、依然として大量の公有旧住宅が未処理のまま残されている。これらは老朽化が進む一方、ハノイ中心部の一等地に位置するケースも多く、都市開発・不動産市場の観点から大きな潜在価値を持つ。
規定案の主なポイント
今回の規定案は、ハノイ市人民委員会が所有者代表となる公有旧住宅について、以下の事項を包括的に定めるものである。
- 受領・管理・使用・保守、賃貸契約の締結、売却
- 土地使用権・住宅所有権などの証明書(いわゆる「レッドブック」)の発行
- 違反行為への処分、住宅の回収・強制引き渡し
- 関係機関・個人の責任と権限の明確化
最大の注目点は、建設局への大幅な権限委譲である。具体的には、建設局が以下を決定する権限を持つことになる。
- 公有旧住宅の賃貸対象者の承認
- 売却の決定(対象者、物件所在地、住宅売却価格、土地使用権譲渡価格、共有部分の面積を含む)
- 住宅法、政令95/2024/NĐ-CP、通達05/2024/TT-BXDに基づく受領手続き
- 売買契約の締結
一方、ハノイ市財務局(Sở Tài chính)には、公有旧住宅の賃貸価格の承認、および管理・運営に関する収支予算の承認が委ねられる。建設局が「誰に・何を売るか」を決め、財務局が「いくらで貸すか」を決めるという役割分担である。
売却に関する詳細規定
規定案では、各機関・組織が自主管理している公有旧住宅は、すべてハノイ市人民委員会へ引き渡し、同委員会が管理・賃貸・売却を行うと明記されている。
また、コミューン(xã)レベルの人民委員会には、特定の条件を満たす住宅の売却と証明書発行が委ねられる。対象となるのは、2015年10月20日の政令99/2015/NĐ-CPの施行前に解体・改築された第IV級住宅や、過去に清算・価格化(thanh lý hóa giá)されたが住宅代金のみ徴収済みで土地使用料が未徴収の物件などである。財務上の義務は政令95/2024/NĐ-CPの第71条に基づき徴収される。
なお、国防省(Bộ Quốc phòng)が所有者代表となる公有旧住宅については、ハノイ市の価格査定委員会が価格を確定した後、国防省が売却決定を行うという特別な手続きが維持される。
賃貸契約に関する規定
賃貸契約の締結にあたっては、対象物件に紛争・訴訟がないことが条件となる。紛争がある場合は、解決後またはハノイ市人民委員会の指示に基づき契約が行われる。
契約期間満了時にメンバーの増減がある場合、管理運営機関が関連規定に基づき審査する。メンバーの追加には、既存の全契約メンバーの書面による同意が必要である。
元の賃借人が死亡した場合、その家族(配偶者、子)が実際に居住し継続賃借を希望するなら、管理運営機関との間で新たな賃貸契約を締結できる。契約の代表者は家族全員の書面同意を得なければならない。また、契約主が死亡または転居した場合は、契約メンバーが新たな代表者を選出する。
さらに、2013年6月5日以前に一部面積の譲渡を受けた者(集合住宅の一室を除く)で、権限ある機関の確認を得ている場合や、証明書が発行済みの場合、または構造に影響を与えない場合は、賃貸契約の締結が認められる。
投資家・ビジネス視点の考察
本規定案が正式に施行された場合、以下の点でベトナム不動産市場および関連銘柄に影響を及ぼす可能性がある。
第一に、ハノイ中心部の不動産供給増加の可能性である。長年塩漬けとなっていた公有旧住宅の売却が加速すれば、ホアンキエム区やバーディン区といった都心一等地で新たな開発用地が生まれる。これはハノイの不動産デベロッパーにとって中長期的な追い風となり得る。
第二に、行政手続きの効率化である。権限が建設局と財務局に明確に分離されることで、従来の縦割り・たらい回しが軽減され、取引スピードの向上が期待される。ベトナムが2026年9月に見込むFTSE新興市場指数への格上げに向け、不動産分野の制度透明性向上は市場全体の評価にもプラスに寄与する。
第三に、日系企業への示唆である。ハノイで事務所・住居を賃借している日系企業・駐在員にとって、公有旧住宅の法的ステータスが明確になることは、物件選定時のリスク軽減につながる。また、都市再開発関連のビジネス機会も広がる可能性がある。
ベトナム株式市場では、不動産セクター(VHM、NVL、KDHなど)の動向に注目が集まる局面だが、本件は直接的な短期インパクトというよりも、ハノイの都市再開発という長期テーマの基盤整備として捉えるべきである。規定案がパブリックコメントを経てどのような最終形になるか、引き続き注視が必要だ。
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出典: 元記事












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