ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム中部の古都フエ(Huế)市が、世界遺産をはじめとする豊富な文化遺産と海洋経済・物流の潜在力を最大限に活かすため、独自の特別政策メカニズムの構築に本格的に動き出した。中央直轄市への昇格を果たしたフエは、「遺産を持つ都市」から「遺産が成長を生み出す都市」への発想転換を掲げ、新たな発展段階に入ろうとしている。
フエ市が特別政策案を策定—その背景と狙い
フエ市人民委員会はこのほど、市の飛躍的発展に向けた特別メカニズム・政策案(Đề án)の策定状況に関する会議を開催した。フエは2024年に中央直轄市(ベトナムの行政区分で最上位に位置する都市格)へ昇格しており、これを機に従来の地方都市の枠組みを超えた、独自の制度的優位性を確保する必要に迫られている。
会議で報告された内容によると、本政策案はフエ固有の地位・潜在力・特徴を明確に認識したうえで、迅速かつ持続可能な成長の基盤を築くことを目的としている。コンサルティング機関からは、遺産・文化・生態系・観光・専門医療・教育・海洋経済・物流、そしてチャンマイ=ランコー(Chân Mây – Lăng Cô)地区といった、突出した優位性を持つ分野に政策を集中させる方針が示された。
「遺産が成長を生む都市」への発想転換
政策案の核心は、フエの都市モデルを根本から転換する点にある。従来、フエは「遺産を抱える都市」として位置づけられてきたが、今後は「遺産と文化の価値そのものを経済成長のエンジンとする都市」へと移行する。フエはユネスコ世界文化遺産に登録された阮朝(グエン朝、1802〜1945年)の王宮群をはじめ、宮廷音楽(ニャーニャック)などの無形文化遺産、さらに記録遺産まで、国家的・国際的価値を持つ遺産が極めて高密度に集積している。景観・人々の暮らし・生活様式そのものが独自の競争優位であり、これを具体的な発展メカニズムに落とし込むことが急務である。
海洋経済・物流・新経済モデルへの注力
遺産・観光分野に加え、会議では海洋経済と物流の戦略的重要性が強調された。フエ市はベトナム中部の海岸線に面しており、チャンマイ深水港とランコーリゾート地区を擁する。チャンマイ港はダナン港を補完する中部の物流拠点として期待されており、東西経済回廊(ラオス・タイ方面への陸路ルート)との接続も視野に入る。
また、タムザン=カウハイ潟湖(Tam Giang – Cầu Hai)はベトナム最大の潟湖系であり、生態系観光や水産養殖の面でも大きな可能性を秘めている。会議では、グリーン経済・デジタル経済・ケアエコノミー(介護・健康産業)といった新たな経済モデルの導入や、文化産業分野でのPPP(官民パートナーシップ)モデルの試験的導入も提案された。
観光の高度化と企業連携
参加者からは、旅行会社や企業との連携を強化し、フエならではの刻印を持つツアー商品や観光ルートを開発すべきとの意見が多く出された。滞在日数の延長やサービス品質の向上が課題として挙げられており、これは現在のフエ観光が「日帰り・通過型」にとどまりがちであるという長年の課題を反映している。
市トップの方針—「鋭く明確な」政策を
フエ市人民委員会のグエン・カック・トアン(Nguyễn Khắc Toàn)主席は、コンサルティング機関と各局に対し、意見を十分に反映したうえで政策案を重点的かつ実情に即した形で完成させるよう指示した。同主席は「真に鋭く明確な(sắc, rõ)メカニズムを選び、実効性のある政策に集中すべきであり、総花的になることは避けなければならない」と強調。遺産都市・潟湖生態系・海洋経済・物流・専門医療・新経済モデルを重点分野として挙げた。市指導部は、特別政策がフエ固有の優位性を最大限に発揮させ、中央直轄市にふさわしく、ベトナムを代表する遺産都市としての地位を確立する基盤となるべきだとの認識を示している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の動きは、フエが単なる観光・文化都市から、制度的優位性を武器にした投資誘致都市へと転換を図る意思表明である。投資家にとって注目すべきポイントは以下の通りである。
①不動産・インフラ関連:チャンマイ=ランコー地区の開発が加速すれば、港湾・リゾート・物流倉庫関連の不動産需要が高まる。ベトナム株式市場では中部不動産に関連する銘柄への思惑買いが入る可能性がある。
②観光・ホスピタリティ:滞在型観光への転換が進めば、ホテル・リゾート運営企業にとって中長期的な追い風となる。
③日本企業への示唆:フエは歴史的に日本との文化交流が深く、官民連携(PPP)の文化産業分野は日本企業の知見が活きやすい領域である。グリーン経済・ケアエコノミーの分野でも、日本の高齢化社会で培われた技術・サービスの展開余地がある。
④FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げが実現すれば、ベトナム市場全体への海外資金流入が加速する。地方都市の制度改革・投資環境整備は、ベトナムの「投資適格性」を裏付ける材料の一つとなり得る。
⑤リスク要因:特別政策の具体的内容はまだ策定段階であり、中央政府の承認プロセスや予算措置が不透明である点には留意が必要である。フエは他の中央直轄市(ハノイ、ホーチミン、ダナン、ハイフォン、カントー)と比較して経済規模が小さく、政策の実効性が問われる局面が今後訪れるだろう。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント