ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ベトナム・ホーチミン市の当局が、SNSやECプラットフォームを通じて偽ブランド品を大量に販売し、数十億ドン規模の不正利益を得ていた2つの販売ネットワークを摘発した。数千点に及ぶ偽造品が押収されており、急成長するベトナムEC市場の「影」の部分が改めて浮き彫りとなった形である。
事件の概要——出所不明の商品をSNS・EC経由で大量販売
ホーチミン市の関係当局によると、今回摘発された2つの組織は、いずれも出所が不明な「流通品(hàng trôi nổi)」を大量に仕入れ、主にSNS(Facebook、Zalo、TikTokなど)や大手EC(電子商取引)プラットフォームを販売チャネルとして活用していた。ベトナムでは「hàng trôi nổi」という表現は、正規の輸入手続きや品質証明を経ていない、いわば「素性の分からない商品」を指す。正規の流通ルートを経由しないため仕入れコストが極めて低く、それをオンラインで消費者に直接販売することで、数十億ドン(hàng tỷ đồng)規模の利益を上げていたとされる。
当局は摘発時に数千点の製品を押収しており、偽ブランド品や品質基準を満たさない商品が多数含まれていたとみられる。ホーチミン市はベトナム最大の商都であり、人口約1,000万人を擁する南部経済の中心地である。同市ではEC取引量が年々急増しており、それに伴い偽造品や模倣品の流通も深刻な社会問題となっている。
急成長するベトナムEC市場と偽造品問題の根深さ
ベトナムのEC市場は東南アジアの中でも屈指の成長率を誇る。インターネット普及率は約80%に達し、スマートフォンを通じたオンラインショッピングは都市部のみならず地方にも急速に浸透している。Shopee(シンガポール系)、Lazada(アリババ系)、TikTok Shopなどの大手プラットフォームが激しいシェア争いを繰り広げており、ベトナム政府も「デジタル経済」の推進を国家戦略の柱に位置づけている。
しかし、その急成長の裏側では偽造品・模倣品の問題が慢性的に存在する。ベトナムでは従来、地方の市場(チョー)や路上での偽ブランド品販売が横行していたが、近年はそれがオンラインに移行しつつある。SNSのライブコマースやショート動画を使った販売手法は、従来の取り締まりの仕組みでは追跡が困難であり、当局にとって大きな課題となっている。出品者が頻繁にアカウントを変えたり、個人間取引を装ったりすることで、摘発を逃れるケースも少なくない。
ベトナム政府は近年、EC取引における消費者保護の強化に乗り出しており、2023年に改正された電子商取引に関する政令(Nghị định)では、プラットフォーム事業者に対して出品者の身元確認義務を厳格化する方針が盛り込まれた。また、市場管理局(Quản lý thị trường)はオンライン上の偽造品取り締まりを専門とするタスクフォースを設置し、定期的な一斉摘発を実施している。今回の事件もその取り組みの一環とみられる。
日本企業・日本ブランドへの影響
ベトナムにおける偽造品問題は、同国に進出している日本企業にとっても他人事ではない。化粧品、日用品、健康食品、衣料品など、日本ブランドの偽造品はベトナム市場で以前から数多く確認されている。特に「Made in Japan」のブランド力はベトナム消費者の間で非常に高く、それがかえって偽造のターゲットになりやすい構図を生んでいる。
日本企業としては、ベトナム市場でのブランド保護戦略——商標登録の徹底、現地代理店の管理強化、オンラインモニタリングの導入——が今後ますます重要になるだろう。ベトナム政府が知的財産権保護の法整備を進めていること自体は好材料だが、実際の執行レベルにはまだ課題が多いのが現状である。
投資家視点:EC関連銘柄とFTSE格上げへの含意
今回の事件は個別のEC関連銘柄に直接的な株価インパクトを与えるものではないが、ベトナムのEC・デジタル経済セクター全体のガバナンスに関わるテーマとして注目に値する。
2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにおいて、市場の透明性や法制度の信頼性は評価対象の一つである。偽造品問題への取り締まり強化は、ベトナム市場の制度的成熟を示すシグナルとして、間接的にはポジティブに働く可能性がある。逆に、偽造品が野放しになっている状態が続けば、海外投資家からの信認を損なうリスクがある。
ベトナムのEC関連では、FPTデジタルリテール(FRT)やモバイルワールド(MWG)といった上場企業が注目されるが、これらの企業は正規流通を基盤としており、偽造品ネットワークの摘発はむしろ正規事業者にとって競争環境の改善につながる面もある。物流・決済インフラの整備と合わせて、EC市場の健全化が進めば、中長期的にはセクター全体の評価向上に寄与するだろう。
ベトナムのデジタル経済はGDP比で年々存在感を増しており、政府は2025年までにデジタル経済がGDPの20%を占めることを目標に掲げていた。その成長を持続可能なものにするためにも、今回のような偽造品取り締まりの実効性向上は不可欠なステップといえる。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント