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ベトナム南部の経済中心地ホーチミン市が運営する「建設宝くじ公社(Xổ số kiến thiết TP HCM)」が、直近の年度決算で税引前利益1,994億ドンを計上したことが明らかになった。単純計算で1日あたり約50億ドンの利益を生み出している計算となり、国営事業としては極めて高い収益力を示している。
ベトナムの「建設宝くじ」とは何か
日本の読者にとって馴染みが薄いかもしれないが、ベトナムの「建設宝くじ(Xổ số kiến thiết)」は同国の歴史と深く結びついた存在である。1962年に南ベトナム政府のもとで始まったこの制度は、インフラ整備や社会福祉事業の資金を調達する目的で設立された。統一後も制度は維持・拡大され、現在では各省・直轄市がそれぞれ独自の建設宝くじ公社を運営している。
特に南部地域では宝くじ文化が根強く、街角のいたるところで宝くじの売り子を見かける。ホーチミン市をはじめとする南部諸省では「伝統式宝くじ(xổ số truyền thống)」が毎日抽選されており、1枚1万ドン(約60円相当)程度の手頃な価格で購入できることから、低所得層から中間層まで幅広い市民が日常的に購入している。宝くじの販売員は高齢者や障がい者が多く、社会的なセーフティネットの一端を担っている点も特徴的である。
年間利益約2,000億ドンの意味
ホーチミン市建設宝くじ公社が記録した税引前利益1,994億ドンという数字は、同公社の安定的かつ強固な収益基盤を改めて裏付けるものである。1日平均約50億ドンという利益水準は、ベトナムの上場企業と比較しても遜色のない規模であり、むしろ多くの中小型上場企業を上回る。
ベトナムの建設宝くじは、売上の一定割合が当選金に、別の一定割合が運営費や販売手数料に、そして残りが公共事業向けの財源として配分される仕組みとなっている。つまり、公社の利益はそのまま地方財政に貢献する「打ち出の小槌」のような存在なのである。ホーチミン市は人口約1,000万人を擁するベトナム最大の都市であり、市場規模の大きさがそのまま宝くじの販売力に直結している。
宝くじ収入とベトナムの地方財政
ベトナムでは建設宝くじの収益が地方の社会インフラ整備に大きく貢献してきた歴史がある。病院、学校、橋梁、道路といった公共施設の建設・改修に宝くじ収益が充当されるケースは非常に多い。特にメコンデルタ地域の各省では、地方財政における宝くじ収入の占める比率が極めて高く、省によっては歳入の20〜30%以上を宝くじ関連収入が占めるとも言われている。
ホーチミン市の場合、市の歳入規模そのものが大きいため宝くじ収入の比率は相対的に低いものの、約2,000億ドンという利益は都市開発やインフラ整備の貴重な補完財源として機能している。近年はメトロ1号線(ベンタイン〜スオイティエン間)の開業に向けた準備が進むなど、ホーチミン市では大規模なインフラ投資が続いており、こうした安定財源の重要性はますます高まっている。
ベトナム宝くじ産業の全体像
ベトナム全体で見ると、建設宝くじ産業の規模は年々拡大傾向にある。南部を中心とした伝統式宝くじに加え、北部ではコンピュータ式宝くじ(Vietlott=ベトロット)が2017年頃から急速に普及した。ベトロットはジャックポット型の宝くじで、当選金が数百億ドン規模に膨れ上がることもあり、若年層を中心に人気を集めている。
ただし、伝統式宝くじとベトロットでは管轄や収益の配分先が異なり、両者は競合というよりも棲み分けの関係にある。ホーチミン市建設宝くじ公社はあくまで伝統式宝くじの運営主体であり、長年にわたって培われた販売ネットワークとブランド力が今回の高収益を支えている。
投資家・ビジネス視点での考察
ホーチミン市建設宝くじ公社は国営事業であり、株式市場に上場していないため、直接的な投資対象にはならない。しかし、このニュースはベトナム経済・投資を考えるうえでいくつかの重要な示唆を含んでいる。
第一に、ベトナム国内消費市場の底堅さである。宝くじの売上は基本的に個人消費の一形態であり、高収益が維持されているということは、庶民レベルでの購買力が引き続き健在であることを示唆している。これはベトナムの小売・消費関連銘柄(例:モバイルワールド〈MWG〉やマサングループ〈MSN〉など)の業績見通しを考えるうえでもポジティブな材料となる。
第二に、ベトナムの地方財政の安定性である。宝くじ収入が安定しているということは、地方自治体のインフラ投資余力が維持されていることを意味する。建設・不動産セクターに関連する上場企業(コテック・コンストラクション〈CTD〉やホアビン建設〈HBC〉など)にとっては、公共事業案件の継続的な発注が期待できる環境と言える。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連である。ベトナム市場全体の透明性や制度整備が進む中、国営企業の財務状況が健全であることは市場全体の信頼性向上にもつながる。格上げが実現すれば、海外からの資金流入が加速し、市場全体の底上げが期待される。建設宝くじ公社のような安定収益を持つ国営事業の存在は、ベトナム財政の健全性を裏付ける一つの材料として間接的にポジティブに作用するだろう。
日本企業への示唆としては、ベトナムの公共事業市場の厚みに注目したい。宝くじ収益を原資とするインフラ投資は今後も継続が見込まれ、ODA案件や官民連携(PPP)方式のプロジェクトに参画する日本の建設・エンジニアリング企業にとっては、安定的な発注元が存在することの意味は大きい。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: 元記事












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