ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ホーチミン市東部(khu Đông)エリアで、世界の先進都市モデルに倣った「4層の価値構造」による大規模都市開発が進行している。ベトナムの高級不動産デベロッパーであるMasterise Homes(マスタリーゼ・ホームズ)が主導するこの動きは、同エリアを単なる住宅地から「ブランド居住区(Branded District)」へと変貌させようとするものであり、ベトナム不動産市場の構造的変化を象徴する事例として注目に値する。
世界の模範都市に学ぶ「4層の価値構造」とは
記事が参照するのは、ドイツ・フライブルクのヴォーバン地区(Vauban)やスウェーデン・ストックホルムのハンマルビー・ショースタッド(Hammarby Sjöstad)といった、世界的に知られるサステナブル都市の成功モデルである。これらの都市は以下の4つの「層(レイヤー)」を基盤に設計・運営されている。
- 第1層:都市計画(Planning)——価値の基盤
- 第2層:インフラ(Infrastructure)——成長のレバレッジ
- 第3層:コミュニティ(Community)——活力を生む要素
- 第4層:資産(Asset)——象徴的価値の創出
ホーチミン市東部エリアでは、まさにこの4層構造に沿った都市開発が進んでおり、包括的な生活エコシステムの形成と、不動産の持続的な価値向上サイクルの確立が目指されている。
第1層:都市計画——「15分都市」の実現
世界資源研究所(WRI)の研究が示す「ミクストユース(mixed-use=複合用途)」型都市モデルは、居住・就労・商業機能を短い移動半径内に集約し、自家用車への依存を最小化する考え方である。この概念は「レジデンシャル・コア(Residential Core=居住中核)」とも呼ばれ、都市生活の効率性と持続可能性を同時に追求するものだ。
ホーチミン市東部において、この概念を具現化しているのがMasterise Homesが開発するThe Global City(ザ・グローバル・シティ)である。総面積117.4ヘクタールの同プロジェクトは、商業施設群、8ヘクタールの公園、中央を貫く運河、国際基準の病院・学校を徒歩15分圏内に配置。「ウォーカブル・シティ(歩ける都市)」の原則を徹底し、エリア全体の新たな価値基準を打ち立てようとしている。
第2層:インフラ——メトロ・高速道路・空港が生む成長エンジン
ホーチミン市東部の成長を加速させているのが、急速に整備が進む交通インフラである。ハノイ・ハイウェイ(Xa lộ Hà Nội)沿いを走るメトロ1号線(地下鉄1号線、2024年末に開業)は、Masteri Thảo Điền(マスタリー・タオディエン)、Masteri An Phú(マスタリー・アンフー)、LUMIÈRE Riverside(ルミエール・リバーサイド)といった不動産群と都心部を10〜15分で結ぶ。
さらに、長年にわたるホーチミン市東部の交通ボトルネックであったアンフー・インターチェンジ(nút giao An Phú)の整備が完了し、ホーチミン市〜ロンタイン〜ザウザイ高速道路への接続が大幅に改善された。リエンフォン通り(đường Liên Phường)の延伸により、外国人居住者が多いタオディエン地区と新興住宅エリアの直結も実現している。
加えて、環状3号線(Vành đai 3)の建設進行や、2026年以降の段階的開業が見込まれるロンタイン国際空港(sân bay quốc tế Long Thành)の存在が、ドンナイ省、ビンズオン省、バリア=ブンタウ省への広域連結を可能にする。LUMIÈRE Boulevard(ルミエール・ブルバード)、Masteri Centre Point(マスタリー・センターポイント)、高級邸宅群The Rivus(ザ・リバス)といったプロジェクトは、これら交通結節点の至近に位置し、戦略的なアクセス優位性を享受している。
第3層:コミュニティ——FDIと国際人材が集積する「知の資本」
現代の都市において不動産価値を決定づけるのは、物理的なインフラだけではない。そこに集まる人材——すなわち「知的資本(Intellectual Capital)」の厚みが重要となる。ホーチミン市東部エリアには、Samsung(サムスン)、Intel(インテル)、Schneider Electric(シュナイダーエレクトリック)、Nidec(日本電産)、FPT Software(FPTソフトウェア、ベトナム最大手IT企業の子会社)といったグローバル企業が製造・研究開発拠点を構えており、高度人材の集積が進んでいる。
タオディエン地区やアンフー地区では、Masteri Thảo Điền、Masteri An Phúなどが国際ビジネスパーソンの居住先として定着。The Global Cityは将来的に15万人の居住者・就労者を受け入れる計画であり、国際水準の生活インフラを備えた「スマートシティ」としての完成形が見えつつある。
第4層:資産——「ブランド不動産」が象徴的価値を創出
Masterise Homesが目指すのは、個別の物件販売ではなく、エリア全体を一つの「ブランド」として確立することである。その象徴的存在が、高級邸宅コレクションThe Rivusだ。「双龍戯珠(Song long hí châu)」と呼ばれる風水上の希少な地形に位置し、レバノン出身の世界的ファッションデザイナー、エリー・サーブ(Elie Saab)とのコラボレーションによるデザインが施されている。
こうしたブランド不動産は、単なる居住用資産を超え、富裕層が長期的に価値を保全・継承するための「レガシー・アセット」として位置づけられている。世界的にも「ブランデッド・レジデンス」市場は拡大傾向にあり、ドバイ、ロンドン、バンコクに続く市場としてホーチミン市が名乗りを上げている形だ。
投資家・ビジネス視点の考察
不動産セクターへの影響:ホーチミン市東部エリア(旧2区・9区・トゥドゥック区を統合した「トゥドゥック市」)は、2021年の行政再編以降、ベトナム不動産市場における最重要エリアの一つとなっている。メトロ1号線の開業やロンタイン空港の建設進行は、同エリアの不動産価格を中長期的に押し上げる構造的要因であり、Masterise Homesの親会社であるMasterise Group(マスタリーゼ・グループ)やその関連企業の動向には引き続き注目が必要である。
日本企業との関連:記事中にも登場するNidec(日本電産)をはじめ、多くの日系製造業がホーチミン市東部のハイテクパークや工業団地に拠点を置いている。同エリアの都市機能が向上すれば、駐在員の生活環境改善や現地採用人材の確保にもプラスに働く。日系デベロッパーにとっても、ベトナムのブランド不動産市場は今後参入を検討すべき領域であろう。
FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外からの機関投資家マネーがベトナム市場に大量流入する可能性が高い。不動産セクターはベトナム株式市場における主要セクターの一つであり、ホーチミン市東部のような大型開発エリアは、その恩恵を最も受けやすいポジションにある。とりわけ、外国人の不動産購入規制の緩和議論と相まって、ブランド不動産への国際的需要がさらに高まる展開も想定される。
マクロ的な位置づけ:ベトナム政府が推進する「2045年までに高所得国入り」という国家目標の中で、ホーチミン市は経済の牽引役を担う。同市東部エリアの開発は、単なる不動産プロジェクトではなく、ベトナムの都市化・高度化戦略そのものを体現するものであり、同国の経済成長ストーリーに投資する上で注視すべきテーマである。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント