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2025年はベトナム南部解放・南北統一から50周年にあたる節目の年である。ホーチミン市(旧サイゴン)の金融システム——銀行、資本市場、投資機関——はこの半世紀にわたる「ドイモイ(刷新)」の歩みとともに発展を遂げ、今やベトナム経済の心臓部として機能している。VnExpressはこの50年を振り返る特集記事を掲載した。本稿では、その内容をもとにホーチミン市の金融セクターがたどった道筋を詳しく解説し、投資家視点での示唆を探る。
戦後復興からドイモイへ——金融の「ゼロ地点」
1975年4月30日の南部解放後、旧南ベトナムの金融体制は事実上リセットされた。サイゴンには戦前から民間銀行や金融業者が存在していたが、統一後は国家管理の計画経済体制に組み込まれ、中央銀行(ベトナム国家銀行)が唯一の銀行機能を担う「単一銀行制度(モノバンク・システム)」が敷かれた。市場メカニズムは事実上排除され、資金配分はすべて国家計画に基づいて行われた。
この状況が大きく変わったのが1986年のドイモイ政策の採択である。計画経済から市場経済への移行を掲げたこの政策は、金融セクターにも根本的な変革をもたらした。1988年には二層銀行制度(中央銀行と商業銀行の分離)が導入され、国営商業銀行が設立されるとともに、民間銀行の設立も段階的に認められた。ホーチミン市はこの金融自由化の最前線に立ち、同市を本拠とする銀行や金融機関が次々と誕生した。
銀行セクターの成長——ホーチミン市を拠点とする主要行
ホーチミン市は歴史的に商業都市としての性格が強く、ドイモイ以降もその伝統を活かして金融ハブとしての地位を固めてきた。現在、ベトナムの主要商業銀行の多くがホーチミン市に本店または主要拠点を構えている。代表的な存在としては以下が挙げられる。
- ベトコムバンク(Vietcombank/VCB)——国営最大手の一角。ホーチミン証券取引所(HOSE)上場で時価総額トップクラスの銀行株。
- サコムバンク(Sacombank/STB)——ホーチミン市発祥の民間銀行として早期に設立され、南部を中心に広範なネットワークを構築。
- ACB(アジア商業銀行)——ドイモイ初期に設立された民間行の草分け的存在。リテールバンキングに強みを持つ。
- HDバンク(HDBank/HDB)、VPバンク(VPBank/VPB)など——消費者金融やデジタルバンキングの分野で急成長。
こうした銀行群は、ホーチミン市の都市化・工業化・サービス産業の拡大と歩調を合わせて融資残高を伸ばし、中間層の拡大に伴うリテール需要を取り込んできた。ベトナム全体の銀行セクターの総資産は過去20年で飛躍的に拡大しており、その成長を牽引してきたのがホーチミン市を拠点とする金融機関である。
証券市場の誕生と発展——HOSEの20年超
ベトナムの資本市場にとって画期的な出来事は、2000年7月28日のホーチミン証券取引所(HOSE)の開設である。開設当初の上場銘柄はわずか2社、取引はごく限定的なものだった。しかしその後、国営企業の株式会社化(エクイタイゼーション)が進むにつれ上場企業数は増加し、2006〜2007年の第一次株式ブームを経て市場は急拡大した。
現在、HOSEにはベトナムを代表する大型株が集中しており、VN-Index(ホーチミン総合指数)はベトナム株式市場全体のベンチマークとして国際的にも注目されている。時価総額は数千兆ドン規模に達し、外国人投資家の参加も年々増加している。ハノイ証券取引所(HNX)や未上場企業市場(UPCoM)と合わせた三市場体制のなかでも、HOSEが圧倒的な存在感を示している。
証券会社についても、ホーチミン市を本拠とする大手が市場をリードしてきた。SSI証券(SSI)、ホーチミン市証券(HSC/HCM)、VNダイレクト証券(VND)などは、個人投資家の裾野拡大やオンライン取引の普及を推進し、市場の流動性向上に貢献している。
投資ファンド・資産運用の発展
銀行や証券市場の成長に伴い、投資信託や資産運用会社といった「定式投資(機関投資家・ファンド)」も発展を遂げた。ドラゴンキャピタル(Dragon Capital)やビナキャピタル(VinaCapital)といったベトナム特化型の投資運用会社はホーチミン市を拠点とし、国内外の投資家から資金を集めてベトナム株式・不動産・インフラに投資を行ってきた。
こうしたファンドの存在は、ベトナム市場に対する国際的な信認を高める上で重要な役割を果たしている。特に近年は、ESG投資やテクノロジーセクターへの関心の高まりを背景に、新しいタイプのファンドも登場しつつある。
50年の変遷が示すもの——都市と金融の共進化
ホーチミン市の金融セクターの歴史は、そのまま同市の経済成長の歴史と重なる。1975年のゼロ地点から出発し、ドイモイを経て市場経済化が進み、WTO加盟(2007年)、各種FTA(自由貿易協定)の締結、そしてデジタル経済の勃興に至るまで、金融インフラの整備は常に経済発展の「動脈」として機能してきた。
ホーチミン市はベトナムのGDPの約2割を占める最大の経済都市であり、直轄市としての特別な行政的地位も持つ。2024年には「特別都市機構法」(ホーチミン市特別メカニズム法)が施行され、財政・投資面でのさらなる自主権が認められた。こうした制度的基盤の強化は、金融セクターのさらなる発展を後押しすると見られている。
投資家・ビジネス視点の考察
この50年の金融発展史は、単なる歴史の振り返りにとどまらず、今後の投資戦略を考える上でも重要な示唆を含んでいる。
1. 銀行株の長期成長ストーリー
ベトナムの銀行セクターは、信用浸透率(GDP比)がまだ先進国に比べて伸びしろがあり、中間層の拡大に伴うリテール需要は今後も持続的な成長ドライバーとなる。VCB、ACB、TCB(テクコムバンク)、MBB(軍隊商業銀行)など主要行は、引き続き注目に値する。
2. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月にFTSEラッセルによる新興市場(セカンダリー・エマージング)への格上げ判定が見込まれている。格上げが実現すれば、パッシブ資金の大量流入が期待され、HOSEの大型株(銀行・不動産・消費財)が最大の恩恵を受ける。ホーチミン市の金融インフラの成熟度は、こうした格上げ審査においても重要な評価ポイントとなる。KRX(韓国取引所)システムの導入による新取引プラットフォームへの移行も、市場の信頼性向上に寄与する要素である。
3. 日本企業・投資家への影響
日本はベトナムにとって最大級のODA供与国であり、メガバンク(みずほ、三菱UFJ、三井住友)はいずれもベトナムの銀行と資本提携・業務提携を結んでいる。みずほFGとベトコムバンク、三菱UFJとVietinBank(ベトナム工商銀行)の提携はその代表例である。ホーチミン市の金融インフラの深化は、日系企業の現地オペレーション(融資、送金、為替ヘッジ)の利便性向上に直結するため、製造業・サービス業の進出企業にとってもポジティブな要因である。
4. ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ
ベトナム政府は2045年までに「高所得国」入りを目指す長期ビジョンを掲げている。この目標達成には、金融仲介機能の高度化——すなわち資本市場の深化、フィンテックの普及、機関投資家の育成——が不可欠である。ホーチミン市はその「実験場」かつ「エンジン」としての役割を今後も担い続けるだろう。50年の蓄積は、次の50年への確固たる基盤となっている。
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出典: VnExpress – 50 năm TP HCM: Những định chế tài chính phát triển cùng thành phố












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