ベトナム・マサン系MSR、700億ドル超投資のタングステン精錬拡大へ—AI・半導体需要が追い風

Doanh nghiệp Việt tham vọng mở rộng tinh luyện vonfram giữa cuộc đua chip và AI
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ベトナムの資源大手マサン・ハイテック・マテリアルズ(UPCoM: MSR)が、10年超・7億ドルを投じてきたタングステン(ベトナム語でvonfram)精錬事業の大幅拡大に乗り出す。自社鉱山の枠を超え、外部からの鉱石も受け入れる精錬ハブへと転換を図る戦略であり、世界的なAI・半導体向け素材争奪戦のなかで注目を集めている。

目次

株主総会で示された「鉱山から精錬ハブへ」の転換構想

2026年4月16日に開催されたMSRの定時株主総会で、ファン・チエン・タン副社長は、タイグエン省にあるヌイファオ(Núi Pháo)鉱山から直接採掘した原鉱石の塊を壇上に持ち込み、事業の技術的深度を株主に直感的に示した。同氏によれば、原鉱石1塊を得るために数百万トンの土砂を剥ぎ取る必要があり、選鉱後に残る有価部分はわずか約20%。そこから銅、蛍石(フローライト)、ビスマス、タングステンの4種の鉱物を分離・精製する。

なかでもタングステンは、半導体チップ、高出力電子デバイス、AI向けデータセンターのサーバー設備に不可欠な素材である。MSRの2025年アニュアルレポートによると、同社は過去5年間にわたり中国以外のタングステン供給量の約21%を占めてきた。中国が世界のタングステン生産の約8割を握るなかで、「非中国」の供給源としてMSRの戦略的重要性は極めて高い。

10年超の投資が生んだ垂直統合モデル

MSRの最大の強みは、採掘から選鉱、精錬まで一貫して手がける垂直統合型の生産体制にある。7億ドル超を投じて構築したこのシステムにより、原鉱石から純度99%のタングステン製品を生産できる。ヌイファオ鉱山は過去10年間、年間約350万トンの原鉱石を途切れることなく採掘し続け、精錬工場も24時間365日稼働(メンテナンス時を除く)している。現在の精錬能力は年間9,000トン超に達する。

タン副社長は、同社の4種金属連続回収モデルについて次のように語った。「銅、蛍石、ビスマスで先にコストを回収しているため、タングステンの利益率は25%超に改善している。また、鉱山の稼働年数が長くなるほど剥土量が減り、鉱石回収率が上がるため、採掘コストは逓減していく」。

2025年業績と2026年の急成長見通し

2025年通期の業績は、売上高7,443億ドン(2億7,800万ドル)で前年比19%増(比較可能ベース)となった。さらに注目すべきは2026年第1四半期である。タングステンの中間製品であるAPT(パラタングステン酸アンモニウム)の価格が1mtuあたり3,100ドルを突破したことを受け、売上高は約2,993億ドン(1億1,200万ドル)、税引後利益は約537億ドン(2,000万ドル)に達した。この四半期利益だけで2025年通年の利益を上回る水準である。

2026年通期の目標は、売上高1兆6,000億〜2兆300億ドン、税引後利益1,700億〜2,500億ドンと、大幅な増収増益を見込む。加えて、現在取引されているUPCoM市場からホーチミン証券取引所(HOSE)への市場変更も計画している。

鉱山寿命と外部調達による長期成長戦略

株主からはヌイファオ鉱山の採掘許可期限や残存埋蔵量について質問が相次いだ。経営陣は、ヌイファオが政府の広域鉱物資源計画区域内に位置しており、今後数十年にわたり採掘を継続できる余地があると回答した。さらに、持続可能な鉱物資源開発に関する新たな政策や地質・鉱物法の改正が、周辺地域での探査・採掘拡大を後押ししているという。

長期計画として、MSRは2026年〜2036年のタングステン平均生産量を年間約8,000トンとする方針を示した。このうち半分をヌイファオ鉱山から、残り半分を既にオフテイク契約を締結済みの外部鉱石から調達する。これは、ヌイファオを単なる一鉱山から、ベトナムにおけるタングステン精錬の中核拠点へと進化させる戦略に他ならない。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場への影響:MSRのHOSEへの市場変更が実現すれば、流動性の向上と機関投資家の参入が期待される。APT価格の高騰が続く限り、同社の業績モメンタムは強い。タングステンは米中対立の文脈で「脱中国依存」の戦略的素材として位置づけられており、地政学的プレミアムが株価に織り込まれる可能性がある。

FTSE新興市場指数との関連:2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、HOSE上場銘柄への海外資金流入が加速する。MSRがこのタイミングでHOSEへ移行できれば、指数組み入れの恩恵を直接享受する可能性がある。

日本企業への示唆:日本の半導体・電子部品メーカーにとって、中国以外のタングステン調達先の確保は喫緊の課題である。MSRとの直接取引やJV(合弁事業)の検討は、サプライチェーン多元化の有力な選択肢となり得る。また、ベトナム政府が重要鉱物の加工・精錬を国内で行う方向に政策を強化していることは、日本の「経済安全保障」戦略との親和性が高い。

リスク要因:タングステン価格は国際市況に左右されやすく、中国が輸出規制を緩和すれば価格が急落するリスクがある。また、鉱業特有の環境規制強化や許認可リスクも引き続き注視が必要である。


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出典: 元記事

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