ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
ハノイ証券取引所(HNX)が、インドシナ工業輸出入投資株式会社(銘柄コード:DDG)に対し、強制上場廃止の検討に入ったことを通知した。2023年から2025年まで3年連続で赤字を計上し、さらに監査法人から3年連続で限定付き意見が付されたことが直接の原因である。ベトナム株式市場において上場廃止リスクが顕在化した事例として、投資家にとって重要な警鐘となる。
HNXが強制上場廃止の検討を通知
HNXはDDGに対し、通知日から5営業日以内に書面で回答するよう求めている。上場廃止の根拠は、親会社の税引後利益(連結監査済み財務諸表ベース)が2023年、2024年、2025年の直近3年連続で損失を計上していること、および監査法人が個別・連結財務諸表の双方に対し3年連続で限定付き意見を表明していることである。
2025年通期:過去最大の3,475億ドンの赤字
DDGの2025年通期連結業績は壊滅的な内容である。売上高は前年の3,580億ドン超からわずか700億ドン超へと急減した。税引後利益は過去最大となる3,475.4億ドンの赤字、親会社帰属の税引後利益も3,340億ドンの赤字を記録した。
2025年第4四半期単体では売上高がゼロ、粗利益はマイナス166.4億ドン、純損失は1,530億ドン、税引後損失は1,570億ドンと、事業がほぼ停止状態にあったことがうかがえる。DDGによれば、主因は貿易部門の急激な縮小と、顧客の生産量削減・メンテナンス実施に伴い蒸気供給システムが一斉に稼働率低下または運転停止に追い込まれたことにある。
2026年第1四半期も赤字継続
直近の2026年第1四半期連結決算でも約870億ドンの赤字、親会社帰属では約860億ドンの赤字を計上しており、業績改善の兆しは見えない。貿易部門の低迷に加え、借入金利の固定的な負担、回収困難な売掛金に対する貸倒引当金の計上が損失を拡大させている。子会社の貸倒引当金の追加計上も重くのしかかる。
監査法人が継続企業の前提に重大な懸念
2025年連結財務諸表において、監査法人は複数の重要な指摘を行っている。
まず限定付き意見の根拠として、DDGが子会社「CL株式会社」の株式譲渡取引から発生したグエン・ヴァン・ホップ氏に対する期日超過の売掛金について貸倒引当金を計上していない点を挙げた。規定通りに引当金を計上すれば、「回収困難な短期売掛金引当金」および「当期未処分税引後利益」の損失額、「管理費」がそれぞれ111.09億ドン増加するとしている。
さらに深刻なのは継続企業の前提に対する懸念である。2025年12月31日時点で、短期負債が短期資産を4,916.5億ドン上回っている(2024年末時点では2,026.7億ドン)。短期借入金・リース債務のうち期日超過未返済額は6,645億ドン(2024年末は5,393.4億ドン)に達する。流動性が著しく悪化しており、事業継続自体が危ぶまれる状況である。
経営陣は継続企業の前提に基づく財務諸表作成を維持しているが、その前提は(1)金融機関・社債権者との債務リストラ交渉、(2)販売済み商品・サービスの代金回収、(3)大株主による必要時の財政支援のコミットメント——に依存しており、いずれも不確実性が高い。
グエン・ヴァン・ホップ氏との取引の不透明性
監査法人が特に注目しているのが、グエン・ヴァン・ホップ氏に対する売掛金である。これは2024年に子会社CL株式会社の株式をホップ氏に譲渡した取引から発生したもので、取引総額は808億ドン、2024年の利益を555.5億ドン押し上げた。しかし2025年12月31日時点でなお222.2億ドン(2024年末は458億ドン)が未回収のまま残り、報告書発行日時点で1年以上2年未満の延滞となっている。ホップ氏はCL株式会社の株式259万株を担保として差し入れているが、回収の確実性には疑問が残る。
なお、2024年の監査における限定付き意見(一部資産の減価償却一時停止に関する問題)については、DDGが2024年に一時停止していた工場・機械設備の追加減価償却171億ドンを遡及修正したことで、本報告書では解消済みとされている。
投資家・ビジネス視点の考察
DDGの事例は、ベトナム株式市場におけるいくつかの構造的リスクを浮き彫りにしている。
第一に、HNX上場の中小型銘柄に潜む経営リスクである。DDGのような産業向けユーティリティ・貿易企業は、顧客の稼働率に業績が直結するため、景気後退局面では急速に業績が悪化する。ベトナムの工業団地向けサービス企業への投資を検討する際には、顧客の分散度や契約の安定性を慎重に見極める必要がある。
第二に、関連当事者取引と監査意見の重要性である。ホップ氏への株式譲渡取引は2024年に555億ドンもの利益を計上させたが、実態としては代金回収が滞っている。ベトナム市場では、こうした関連当事者間の取引が利益操作に利用されるケースが散見され、監査法人の限定付き意見は投資判断における重要なシグナルである。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連である。ベトナム市場全体の信頼性向上が求められる中、DDGのような上場廃止リスク銘柄の存在は、市場の質の改善という観点からはむしろ健全な淘汰プロセスとも言える。HNXが規定に基づき厳格に対応すること自体が、市場のガバナンス向上を国際投資家に示すシグナルとなり得る。
日本企業やベトナム進出企業にとっては、DDGのような取引先が突如経営危機に陥るリスクを常に想定しておく必要がある。特に工業団地内でユーティリティ供給を受けている場合、供給元の財務健全性のモニタリングは欠かせない。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事












コメント