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ベトナムの不動産デベロッパー大手ナムロン・インベストメント(Nam Long Investment Corporation、ホーチミン証券取引所ティッカー:NLG)のグエン・スアン・クアン会長が、2025年度の株主総会において「過去5年間、株価がブレイクスルーを果たせなかった理由」について自ら説明した。同社は事業面で着実な成果を上げてきたにもかかわらず、それが財務数値として株主を説得できる形に十分転化されていなかったことが株価低迷の主因だと率直に認めた。ベトナム不動産セクター全体が転換期を迎えるなか、同社の自己分析と今後の戦略は投資家にとって注目に値する。
クアン会長が語った株価低迷の核心
クアン会長は株主総会の場で、ナムロンがここ数年にわたり土地バンク(開発用地の確保)やプロジェクトの許認可取得、日本企業を含む海外パートナーとの合弁事業など、事業基盤の強化において多くの成果を挙げてきたことを強調した。しかし同時に、「我々はやるべきことを多くやってきたが、それらの成果をまだ十分に財務数値へと転化できていない」と述べ、売上高や利益といった定量的な指標で株主を納得させるだけの実績を示しきれなかったことが、株価が5年間にわたって停滞してきた最大の要因であるとの認識を示した。
ベトナムの不動産業界では、プロジェクトの許認可取得に長い時間がかかることが常態化している。特に2020年以降、土地法や住宅法の改正議論が続くなかで、多くのデベロッパーが許認可の遅延に悩まされてきた。ナムロンも例外ではなく、ホーチミン市南部のロンアン省やドンナイ省に広大な開発用地を保有しているものの、行政手続きの遅れにより、売上計上のタイミングが後ろ倒しになるケースが相次いだ。こうした構造的な問題が、事業の実力と財務パフォーマンスの間にギャップを生んでいたのである。
ナムロンの事業概要と強み
ナムロン・インベストメントは1992年に設立された、ベトナムでも有数の歴史を持つ不動産デベロッパーである。本社はホーチミン市に置かれ、主に中間所得層向けの住宅開発を手がけている。同社の最大の特徴は、日本の大手不動産・建設企業との深い協業関係にある。過去には阪急阪神不動産や大和ハウス工業といった日本企業と合弁プロジェクトを展開しており、日本式の品質管理やタウンシップ開発のノウハウを取り入れた「イズミシティ(Izumi City)」「アカリシティ(Akari City)」「フローラ(Flora)」シリーズなどのブランドを展開してきた。
特にホーチミン市近郊のロンアン省ではイズミシティという大規模タウンシップ開発を進めており、完成すれば同社の売上・利益を大きく押し上げるポテンシャルを秘めている。しかし、まさにこうした大型案件の許認可と引き渡し時期が財務数値に反映されるまでのタイムラグが、株価の重しとなってきたのである。
ベトナム不動産市場の構造的背景
ベトナムの不動産市場は2022年後半から2023年にかけて深刻な調整局面を迎えた。社債市場の混乱、信用引き締め、そして大手デベロッパー経営者の逮捕といった一連の事件が重なり、セクター全体に対する投資家心理が大きく冷え込んだ。2024年に入ってからは新土地法(2024年8月施行)や住宅法の改正により、法的な透明性が徐々に改善しつつあるものの、許認可手続きの正常化にはなお時間がかかっている状況である。
こうした環境下で、ナムロンのように合法的に広大な土地バンクを確保し、信頼できる海外パートナーとの協業体制を構築しているデベロッパーは、市場回復局面において相対的に有利なポジションにあるとされる。クアン会長の発言は、こうした「仕込み期間」がまもなく終わり、今後は財務数値の改善として目に見える形で成果が表れるという自信の表れとも読み取れる。
投資家・ビジネス視点の考察
ナムロンの株価低迷は、同社固有の問題というよりも、ベトナム不動産セクター全体が抱える構造的課題を象徴するケースといえる。許認可の遅延、法制度の不透明さ、そして市場全体の信用収縮が重なり、ファンダメンタルズが改善しても株価に反映されにくい時期が長く続いた。
しかし、2025年から2026年にかけてはいくつかの追い風が期待される。第一に、新土地法の施行に伴い許認可プロセスの正常化が進みつつあること。第二に、ホーチミン市周辺のインフラ整備(地下鉄1号線の開業、環状高速道路の建設進捗など)により、郊外の大型タウンシップ開発の価値が再評価される可能性があること。第三に、ベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが2026年9月に決定される見込みであり、これが実現すれば海外機関投資家の資金流入が大幅に増加し、不動産大手を含むベトナム上場企業全般の株価を押し上げる要因となりうることである。
日本企業との合弁関係を持つナムロンは、日本の投資家にとっても馴染みのある銘柄の一つである。大和ハウス工業や阪急阪神不動産がパートナーとして関与していることは、ガバナンスや品質管理の面で一定の安心材料となる。今後、イズミシティなどの大型案件の引き渡しが本格化し、売上・利益が急改善するシナリオが実現すれば、「5年間のギャップ」が一気に解消される展開も想定しうる。
一方で注意すべきリスクもある。ベトナムの不動産市場は政策リスクや行政リスクが依然として高く、許認可の遅延が再び起これば、業績回復シナリオが後ろ倒しになる可能性がある。また、グローバルな金利環境や米中関係の変化がベトナム経済全体に波及するリスクも念頭に置くべきである。ナムロン会長の率直な自己分析は好印象だが、投資判断にあたっては今後の四半期決算で実際に財務数値の改善が確認できるかどうかを慎重に見極める必要がある。
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