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ベトナムの不動産市場が明確な転換期を迎えている。2026年上半期、新規プロジェクトの平均吸収率は50〜60%にまで低下し、2025年の80%超から大幅に減少した。しかしこれは資金の市場離れではなく、買い手の選別眼が格段に鋭くなった結果である。「値上がり期待で買う」時代から「実際に価値を活用できる物件を買う」時代への構造転換が進んでいる。
吸収率の大幅低下——しかし需要は消えていない
不動産仲介大手ワンハウジング(OneHousing)のチャン・クアン・チュン事業開発ディレクターによると、2026年前半の一次市場(デベロッパーからの直接販売)における平均吸収率は約50〜60%にとどまった。2025年には80%を超えていたことを考えると、顕著な減速である。
ただしチュン氏は「流動性の低下は、資金が市場から引き揚げられたことを意味しない。購入者の不動産所有ニーズ自体は失われていない。彼らはより慎重に、より選別的に意思決定を行うようになっただけだ」と分析する。
「買って値上がりを待つ」から「買って価値を活用する」へ
かつてベトナムの不動産投資家の多くは、将来の都市計画やインフラ整備への期待だけで購入を決断していた。しかし現在では、都市計画情報や供給状況、インフラ整備の進捗に関する透明性が大幅に向上したことで、買い手はより実態に即した判断を下せるようになっている。この結果、市場全体の思考様式が「買って値上がりを待つ(mua để chờ tăng giá)」から「買って価値を活用する(mua để khai thác giá trị)」へと移行しつつある。
この変化は市場の明確な二極化をもたらしている。好立地でインフラ接続が良好、計画が一体的に整備され、すでに居住コミュニティが形成されている信頼性の高いデベロッパーのプロジェクトは、依然として70〜80%の吸収率を維持している。一方、値上がり期待に依存し、実需形成までに長期間を要する物件は、流動性の面で大きな圧力に直面している。
TOD型開発とハノイ東部・紅河回廊への注目
ワンハウジングの幹部は、TOD(Transit-Oriented Development=公共交通指向型開発)モデルに基づく都市開発が、ハノイをはじめとする大都市の必然的な方向性であると指摘する。ベトナム政府は現在、都市計画の再構築や交通インフラへの投資、新たな成長拠点の開発に多大な資源を投入しており、公共交通システムや広域連結路線の恩恵を受ける地域が、将来の新たな居住中心地になると期待されている。
ただし、新都市の成功は交通インフラだけでは決まらない。住居・雇用・教育・医療・社会的利便施設の一体的な整備が不可欠である。これらの条件が揃えば、衛星都市は都心部の過密圧力を緩和すると同時に、不動産市場に新たな成長のドライバーを提供することになる。
中長期的には、特にハノイ東部エリアおよび紅河(ソンホン)回廊沿いの大型インフラプロジェクトと新都市空間開発が、大規模な人口移動を引き起こす可能性がある。チュン氏はこれを「2026年後半から2027年にかけての住宅需要と不動産取引を押し上げる最も重要な原動力の一つ」と位置づけている。
2026年後半の見通し——金利安定下での選別強化
ワンハウジングは2026年下半期について、市場の二極化がさらに鮮明になると予測している。実需対応型で、好立地・利便性の高い交通接続・既存の居住コミュニティ・適切な金融政策を備えた物件が引き続き市場を牽引する見通しである。
金利水準は2026年後半も大きな変動がないと見込まれ、市場の安定維持に寄与する一方、投資資金はますます選別的になる。資産形成ニーズ自体は健在だが、その本質は変化している。短期的な値上がり期待ではなく、資産価値の維持力・流動性・将来的な活用可能性を重視する方向へとシフトしているのである。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の動向は、ベトナム不動産市場の「成熟化」を示す重要なシグナルである。投資家目線では以下の点に注目すべきである。
上場不動産銘柄への影響:市場の二極化は、銘柄選別の重要性を一段と高める。ハノイ東部や紅河回廊沿いに大規模プロジェクトを持つデベロッパー——例えばビンホームズ(Vinhomes、VHM)やマスターリセ(Masterise)系——は相対的に有利な立場にある。一方、郊外の投機的プロジェクトに依存する中小デベロッパーは収益圧迫が避けられない。
日本企業への示唆:ベトナムに進出している日系不動産・建設企業にとって、TOD型開発やスマートシティ関連の技術・ノウハウは大きなビジネスチャンスとなる。住友林業、大和ハウス、野村不動産など、すでにベトナムで実績を持つ企業が恩恵を受ける可能性がある。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE格上げが実現すれば、海外からの機関投資家マネーがベトナム市場に本格流入する。不動産セクターはホーチミン証券取引所の時価総額で大きな比重を占めるため、優良不動産銘柄への資金流入が加速する一方、ファンダメンタルズの弱い銘柄との格差はさらに拡大するだろう。
ベトナム不動産市場は「量から質へ」の転換点にある。この構造変化を正しく読み取れる投資家にとっては、むしろ好機と言えるだろう。
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出典: 元記事












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