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ベトナムの金融機関が、従来の担保資産依存型の融資モデルから、データ・キャッシュフロー・信用スコアリングを軸としたデジタル型融資モデルへと急速に舵を切っている。この構造転換は、透明性の高い中小企業(SMEs)にとっては追い風となる一方、デジタル化に遅れた企業には深刻な資金調達リスクをもたらす。2026年4月29日、ベトナム経済誌VnEconomyが主催した座談会「市場が転換するとき:SMEsの適応の旅路」では、この変革の実態と課題が多角的に議論された。
座談会の概要と登壇者
本座談会は、VnEconomy副事務局長のゴー・スアン・ヴー(Ngô Xuân Vũ)記者が進行を務め、ベトナム中小企業協会(VINASME)副会長兼事務局長のトー・ホアイ・ナム博士(TS. Tô Hoài Nam)、およびベトナム経済科学協会副会長のホアン・ヴァン・クオン教授(GS.TS. Hoàng Văn Cường)が登壇した。スポンサーとして、ベトナム商工銀行ヴィエティンバンク(VietinBank、銘柄コード:CTG)が協賛している。ヴィエティンバンクはベトナム四大国有商業銀行の一角であり、「顧客中心」を掲げてデジタル金融ソリューションやグリーンファイナンスの推進を積極化している大手行である。
ベトナムSMEsの現状と経済における位置づけ
ベトナム経済においてSMEsは極めて重要な存在である。全企業数の約97〜98%を占め、GDPの約40%、雇用の約50%以上を担うとされる。しかし、その資金調達環境は依然として厳しい。多くのSMEsは十分な担保資産を持たず、財務諸表の透明性も低いため、銀行融資の審査で不利な立場に置かれてきた。ベトナム中小企業協会の調査でも、SMEsの銀行融資へのアクセス率は全体の3〜4割程度にとどまるとの報告がある。
担保主義からデータ駆動型融資への転換
座談会で最も注目されたテーマが、信用供与モデルの根本的な転換である。従来、ベトナムの金融機関は不動産などの有形資産を担保として要求する「担保主義」に大きく依存してきた。しかし現在、複数の銀行がキャッシュフロー分析、取引データ、信用スコアリングモデルを活用した融資審査へと移行しつつある。これにデジタルエコシステムの構築や信用保証メカニズムを組み合わせることで、担保資産を持たないSMEsにも資金が流れる仕組みが形作られようとしている。
この動きの背景には、ベトナム政府が推進する国家デジタル変革プログラム(2025年目標)の存在がある。電子インボイスの義務化(2022年全面施行)、税務データのデジタル化、銀行のオープンAPI推進など、データインフラの整備が急速に進んだことで、企業の取引実態をリアルタイムで把握する技術的基盤が整いつつあるのである。
SMEsに求められるデジタル対応力
一方で、座談会ではSMEs側の準備不足も大きな論点となった。データの標準化、会計処理の透明化、デジタルエコシステムへの参加といった要件を満たせる企業は、まだ一部に限られる。特に地方の小規模事業者や家族経営の零細企業では、紙ベースの帳簿管理が依然として主流であり、デジタル融資モデルの恩恵を受けるには相当のハードルがある。
また、信用保証基金の運営実態と有効性についても議論が交わされた。ベトナムには中小企業向けの信用保証制度が存在するものの、手続きの煩雑さ、保証額の不足、銀行・企業・保証基金間の連携不足が指摘されており、制度の実効性には課題が残る。
政策提言の方向性
登壇者からは、以下のような政策提言が示された。第一に、SMEsのデータ標準化を支援するための技術・資金面の公的支援の拡充。第二に、信用保証メカニズムの抜本的な見直しと、銀行・企業・政府系ファンドの三者連携の強化。第三に、デジタル融資に関する法的フレームワークの整備である。ホアン・ヴァン・クオン教授は、データに基づく信用評価の普及が進めば、透明性の高い企業が「見える化」され、資金の好循環が生まれると指摘した。
投資家・ビジネス視点の考察
この信用モデルの転換は、ベトナム株式市場および日本企業にとって複数の示唆を含む。
銀行セクターへの影響:データ駆動型融資への移行は、フィンテック投資やIT基盤強化を先行して進めてきた銀行に競争優位をもたらす。座談会の協賛行であるヴィエティンバンク(CTG)のほか、テクコムバンク(TCB)、MBバンク(MBB)、VPバンク(VPB)など、デジタルバンキングに積極的な民間行の中長期的な収益改善要因として注目に値する。融資対象がSMEs全体に広がれば、貸出残高の拡大と与信先の分散にもつながる。
日本企業への影響:ベトナムに進出する日系中小企業やサプライチェーン上のベトナム系サプライヤーにとって、データに基づく信用力の「見える化」は、取引先の財務健全性を評価しやすくなるという利点がある。また、日本のフィンテック企業や会計SaaS企業にとっては、ベトナムSMEs向けのデジタル化支援サービスという新たな市場機会が生まれている。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場への格上げに向け、ベトナム市場全体のガバナンスと透明性の向上が求められている。SMEsの財務透明化とデータ標準化の推進は、上場・未上場を問わず企業セクター全体の信用インフラを底上げするものであり、格上げ審査においてもプラス材料と評価できる。市場の制度的成熟度を示す間接的な指標として、海外機関投資家も注視しているテーマである。
リスク要因:デジタル化に適応できないSMEsの淘汰が加速する可能性がある。これは短期的には不良債権リスクの顕在化につながりうるため、銀行セクターの資産の質には引き続き注意が必要である。
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