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ベトナムが2026年6月中にカーボンクレジット取引所の試験運用を開始する直前のタイミングで、乳業最大手Vinamilk(ビナミルク、ホーチミン証券取引所上場・ティッカー:VNM)が国家レベルの環境フォーラムに唯一の乳業企業として招かれ、温室効果ガス(GHG)削減の実践例を共有した。10年以上にわたるサステナビリティ投資の蓄積が、カーボン市場時代における同社の競争優位を裏付けている。
国家環境・気候フォーラム2026の概要
2026年6月、農業・環境省とゲアン省人民委員会の共催により「国家環境・気候フォーラム2026」が開催された。テーマは「政策から行動へ」。世界環境デー(6月5日)、世界海洋デー(6月8日)、ベトナム海洋・島しょ週間に合わせた国家級の政策対話の場であり、環境保護と気候変動対応に関する実質的な解決策を議論する目的で設けられた。
気候変動局(農業・環境省)のグエン・トゥアン・クアン副局長は、ベトナムが掲げる2050年ネットゼロ目標が法整備と具体的プロジェクトを通じて着実に実現に向かっていると報告。行政機関だけでなく、多くの企業が自主的にGHGインベントリ(排出量の棚卸し)を実施し、削減計画を策定・実行していると述べた。
Vinamilkの排出削減戦略——SBTi参加とISO 14068-1認証
Vinamilkは2050年ネットゼロ目標を設定し、科学的根拠に基づく目標設定イニシアティブ「SBTi(Science Based Targets initiative)」に参加している。短期目標と長期的なネットゼロへの道筋は、SBTiの方法論および国際基準に沿って策定されており、同社のネットゼロ目標はSBTiの公式ウェブサイト上で公開済みである。
Vinamilkの製造担当エグゼクティブディレクター兼ネットゼロプロジェクトリーダーであるレ・ホアン・ミン氏は、「SBTiへの参加により、科学的根拠に基づいた目標設定と行動の方向性を国際基準に合致する形で構築できている」と語った。
具体的な成果として、Vinamilkはすでに国際規格ISO 14068-1(スコープ1・2)に基づくカーボンニュートラル認証を取得した拠点を有している。注目すべきは、カーボンニュートラルを最初に達成した工場と牧場がいずれも今回のフォーラム開催地であるゲアン省(ベトナム中北部の省)に立地している点である。
データドリブンのアプローチ——「測れないものは管理できない」
ベトナムは2026年6月中にカーボンクレジット取引所の試験運用を開始する予定である。現在、GHG排出報告が義務付けられている施設は2,166カ所に上り、そのうち排出量が最も多い110施設には排出枠(排出上限)が割り当てられている。この110施設だけで国全体の直接排出量の約40%を占める。
Vinamilkは「測れないものは管理できない」という方針のもと、数年前からGHGインベントリを体系的に実施してきた。工場・牧場の排出量を網羅的に把握し、排出の重点箇所を特定したうえで、定性的な宣言にとどまらない実効性のある削減策を設計している。このアプローチは、2020年環境保護法および政令06/2022/NĐ-CPの方向性と合致しており、カーボン市場の形成に向けた基盤を築くものである。
ミン氏は「先手を打って対応することで、排出枠制度やカーボン取引が本格稼働した際のプレッシャーを軽減できるだけでなく、移行プロセスの中でコスト最適化の機会も活用できる」と強調した。
具体的な削減事例——コスト削減との両立
Vinamilkが紹介した具体例は、排出削減がそのままコスト削減に直結することを示している。
- スマート倉庫4棟の自動運用:ディーゼルエンジン駆動の従来型倉庫管理と比較し、エネルギー消費を70%削減。年間約1,900トンのCO₂排出を回避。
- 牧場での太陽熱温水利用:衛生用温水の供給に太陽エネルギーを活用し、年間約278トンCO₂e(CO₂換算)の排出回避と電力コストの低減を同時に実現。
- 包装材の最適化:飲むヨーグルト「Probi」のボトル肉厚の削減、ストローの設計最適化、輸出用飲むヨーグルトのキャップをタブ付きに変更するなどの施策により、約135トンCO₂eの排出削減と48トンのバージンプラスチック使用量削減を達成。
ミン氏は「一つひとつは小さく見えるが、排出削減とコスト削減の両面で非常に大きな効果をもたらす。こうした実績が、企業コミュニティがネットゼロ目標に向けて政府と歩調を合わせる推進力になる」と総括した。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のニュースは、複数の観点からベトナム株式市場および関連銘柄に影響を及ぼし得る。
1. VNM(Vinamilk)への直接的インパクト:カーボン取引所の試験運用が目前に迫る中、先行してGHGインベントリやISO認証を取得しているVinamilkは、排出枠の割当・取引において有利なポジションに立つ。排出枠に余裕があればカーボンクレジットの売却による追加収益も見込め、逆に排出枠が不足する競合他社はコスト増に直面する。ESG投資の文脈でもVNMの評価は高まる方向にある。
2. ベトナムのカーボン市場形成の意義:2,166施設への報告義務化と110施設への排出枠割当は、ベトナムの制度インフラが急速に整備されていることを示す。EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)への対応を迫られるベトナムの輸出企業にとって、国内カーボン市場の存在は将来的にCBAM関連コストを緩和する仕組みとなり得る。
3. 日本企業・ベトナム進出企業への示唆:ベトナムに製造拠点を持つ日本企業も、GHG排出報告義務や排出枠制度の対象となる可能性がある。Vinamilkのようにデータドリブンで先行対応する企業とそうでない企業との間でコスト構造に差が生まれるため、サプライチェーン管理の観点からも注視が必要である。
4. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにおいて、ESG基準の充実は市場全体の評価を底上げする要素となる。Vinamilkのような大型株がESGの先進事例として国際的に認知されることは、ベトナム市場全体のアップグレード審査にプラスに作用すると考えられる。
総じて、カーボン市場の始動はベトナム企業の選別を加速させる。環境対応を「コスト」ではなく「競争優位の源泉」として先行投資してきたVinamilkの戦略は、今後のベトナム産業界における一つのモデルケースとなるだろう。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: 元記事












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